042
昼食前にサクッと希望の職に副業した。
フィーリアも二文字二重職が適応されて一安心。一部、二文字二重職を両方を転職しないといけないので、明日の昼からダンジョンに潜る予定は崩れない。
「ご主人様、あの、明日の朝、えっと」
「一人200ルークを支給する。休日に好きに使え。残すと損するぞ」
「「「ありがとうございます!」」」
「ご主人様、私は奴隷ですので受け取れません。その代わりにポーションを見に行きたいです」
「そうだな。ロザンナ達はどうする?」
「そうですね。今日の昼からは情報がほしいので調べものを。明日の朝は友人を食事に誘います」
「単独行動は控える感じ?」
「危険はないですよ。でも、皆と一緒に動きます。昔の客に捕まると鬱陶しいですから」
歴戦の夜の蝶だったな。男が言い寄ってきても良いくらいに美貌を取り戻してるからな。血色もいい健康的で、それで妖艶な。ランジェリー補正で身体のラインも整って、もしかしたら昔より美人かも?
「じゃ、夕方に宿で」
「はい。分かりました」
○ ○ ○
「へー、本部の二階にこんな売店があったんだ」
本部の二階は憩いの酒場と消耗品の販売が行われている。冒険者の作戦会議の流れで消耗品を補充するようだ。陳列されているのは小さな木製の器に革で蓋をして縛ってあるだけの簡素なポーション。ほとんどが薬効の方の
ポーションらしい。魔法付与ポーションは高価なので陳列されてないようだ。
「ダンジョンでは不要ですが、フィールドだと毒消しポーションがいるようです。もっと上級になれば解毒や解術の聖水も必要なようですね」
ポーションと呼ぶのが薬効、聖水が魔法付与。毒消ポーションも複数あるな。症状で使用を変えるのだろう。ゲームだと万能薬で大体の状態異常は一発だな。
「スキルをキャンセル前提で使えば、作れる項目が分かるんじゃないか?」
「そう思って探しているのですが、ほとんどが素材として不適合です。劣化しているのは使えないようですね」
消費期限切れが平気で陳列されているとは。フィーリアが「剤治」に就いてなかったら見分けつかんぞ。ゲームにようにテキスト表示はないからな。
「ご主人様。今回は治癒ポーションのみでいいですよね?」
「そうだな。選択肢はどんなのがある?」
ここまですべて小声。フィーリアが近くて無駄に緊張する。で、リストはこんな感じ。
→濃縮治癒ポーション 消費:薬効ポーション(治癒)3
濃縮魔力ポーション 消費:薬効ポーション(魔力)3
濃縮万能ポーション 消費:薬効ポーション(毒消)各1
投擲治癒ポーション 消費:薬効ポーション(治癒)5
投擲魔力ポーション 消費:薬効ポーション(魔力)5
投擲万能ポーション 消費:薬効ポーション(毒消)各2
先ず、濃縮と投擲で差があるな。後は治癒と魔力と状態異常回復か。実験であるし、また明日にでも補充すればいい。店売り薬効ポーションにもランクはあるが、スキルの判定では同一の扱いらしい。ランクが高い方がスキルに反応しやすい。これって劣化で値段下げてるだけじゃね?
「えっと上級なら、治癒のポーションで20ルーク。魔力のポーションで40ルーク、毒消のポーションは30ルークか。上級で揃えると、いい値段するな」
「下級だとほぼ半額ですよ! この中にも選べるものがあります。どのくらい買って良いですか?」
「試験に治癒と魔力を8、毒消しは各3。いいやつ選んでくれ。良し悪しで明日も買いに来よう」
「はい!」と真剣に探すフィーリア。こうなると長い。こっち見て返事しなかったからな、商品に釘付けだ。暇そうな店員に話しかけてみる。
「聖水ですか? 200ルークから500ルークです」
「高いな。利点はあるのか?」
「持ちが良いですよ。あと、アンデッドにも有効ですが、低級のアンデッド相手ですね」
アンデッドか。物理無効が多いが、聖水付与の武器ならダメージが期待できるのがゲーム。こちらは属性剣に魔法があるからいけるんじゃね? あー、でもゴースト系なら『骨下拵え術』に『肉皮剥ぎ魔術』は効かないかもな。
「お待たせしました!」
「お会計ですか?」
「ああ、なんぼだ?」
「治癒ポーション8点で80ルーク。魔力ポーション8点で160ルーク、毒消ポーション9点で90ルーク。25点で合計330ルークです。空き容器は3ルークで書いとります」
支払ってアイテムボックスに仕舞う。下級でも痛い出費だな。空き容器は持ってこよう。
○ ○ ○
お姉さん組より早く帰宅。『品質向上』の性能を試すためだ。
「各一種類ずつ作ってみてくれ」
「はい!」
どうも木の器越しには反応せず、革の蓋を剥いでポーション自体にスキルを行使するようだ。濃縮治癒ポーションを選択したようで3つ使う。器からポーションの液体がふにゅふにゅと宙を舞い、大きさはビー玉位に圧縮されて球となってテーブルにふにゅんと落ちた。割れない。
「器要らずか。濃縮ってここまで小さくなるのか」
「柔らかい。食べるのですか?」
「んー、実験するか」
アイテムボックスからスローイングナイフを取り出し……奪われた。
「どのくらいの傷ですか? 刺します?」
「俺がする……って、聞かないな。腕に血が滲む程度の切り傷で」
「はい♪」
フィーリアは稀に奴隷推しがあるな。スーっとスローイングナイフを引く。フィーリアの腕から血がそこそこ滴る。ちょっと深くね?
「このくらいはダンジョンで可能性が十分あります。浅すぎる位です。さて、いただきます」
心配を他所にフィーリアが濃縮治癒ポーションを食べる。本来なら傷口にかけるんだろうな。元が液体だし。
「おぉ!?」「ふぁあ!?」
フワッとフィーリアの傷が光って落ち着いた。ゲームのエフェクトだな。傷を見れば完治してる。効果強くね? まあ、気休めなら今からでも皆に「強癒」つけるな。
「意外に美味しいです!」
「えー、効果が大切なんだよ。もう。綺麗な肌に傷跡が残らなくて良かったよ」
確認する。うん、綺麗な肌にはシミの一つもない。触っても跡は全くない。フィーリアさんには遠慮と配慮を覚えてほしいものだ。
「これなら期待大だ。ん? フィーリア?」
「い、いえ。ちょっとのぼせただけです!」
顔が赤い。丁寧な扱いはまだ慣れないのか? 夜も反応いいしな。肉食なくせに受けには弱い。そこが可愛くもある。感情的なのは14歳だし、おおらかに見ればとても可愛い。うん。運命の出会いと思えるね。
この後に魔力と万能の濃縮と、投擲の三種のポーションを作った。治癒が赤、魔力が青、万能が黄色で、投擲の方は野球ボール位に大きい。投げやすいだろうが、場所とるな。
「明日の朝に濃縮治癒ポーションを作ろう。お金が少ないからな一人三つかな。それに追加で投擲治癒ポーションを五つ作ろう。保険は大事だ」
「はい♪」
乙女に恥じらいからスイッチが入って、肉食な女の目になってる。うーん、夜の予定が決まったかな? それとも今から?
「ただいま戻りました」
「よし! 夕食にしよう!」
「あっ、……はい」
フィーリア的には今からだったらしい。危な。お姉さん達に見られるところだったよ。
「ふふ。出直しましょうか?」
フィーリアが期待の目で見つめてくる、が。
「ロザンナ達も報告があるんだろ? 先に聞くよ」
「遠慮は毒ですよ。まあ、この調子ですと夜に伸びただけですね」
うっ。飯だ、飯!