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004

「転職出来ないって、どゆこと?」


「職業訓練所は各種ギルドに所属しないと受けれませんよ。そして村人が入れるギルドなんて冒険者ギルドか村人ギルド……ああ、村人ギルドに所属してましたか」


「まあ、そんな感じで」


 村人どころか村正スタートだからな。濁しとこ。


「むぅ。微妙な返事ですね。あっ、そうです! ごはん食べたら、もう一度ダンジョンですよ!」


 何故に?


「あの……宿賃が苦しいので。お願いします!」


「あー、俺も宿ねえや。宿賃って相場どんな?」


「うー、あー、うー」


 苦悶している美少女フィーリア。初対面でポンコツっぽい動きが多いが、これでも猫被ってるって言われたらどうしよう。


「背に腹はかえれませんね。よし! 相部屋しましょう!」


「女抱く金がありません」


「失礼な! 生娘です! 乙女です!」


 いや、捨てたパーティメンバー達って男だったじゃん。出会って間もない男と相部屋なんてビッチを疑うよね。処女厨じゃないけど、童貞は夢を見るものなんだよ。


「あれは昨日ナンパされただけです。転職を見て考えてと、翌朝に転職神殿に向かった程度の知人以下です。まあ、それだけ私も追い詰められているのですけどね」


 フィーリアは結構下手に出てたからな。通常の三文字職は「村正」よりは柔軟性があるが、そこまで威張れる職じゃないぞ。まあ、二文字職がレベルカンストしてるだろうから、ステータスの差は大きいな。


「あっ、荷物預かったままだった。えっと……」


 フィーリアがアイテムボックスをいじりだしたので、その間に俺もアイテムボックスの仕様を確認しよっと。確かフィーリアは念じただけで開閉してるな。アイテムボックスオープン。お、開いた。1つは空。もう1つに……あー、バグ職「村正」にする予定だったから、極限まで鍛えた木刀があったな。


 今の木剣よりは使えるよな。妖樹の幹の芯から削った逸品だ。極限まで血を吸わせているから強化はストップしているが、そこらの初心者武器より使い勝手はいい。これで三文字職のレベルカンストまでは目指せる序盤を楽にする為だけの武器だ。ちなみにバグ職のスキル説明は公式には無いが、Wikiだとこうなる。


 『妖刀刺し』:刺突攻撃力増加。吸血(作用:耐久値回復の後、武具性能向上(上限有り))。


 血の色に染まった赤の木刀は上限まで鍛えた証。育て上げたキャラで作った品だから苦労はさほど……


「あー! まずい! まず……くっ! 騙された!」


 冒険者証を握って焦ってる。冒険者証って何か書いてあったっけ? 名前と年齢とランクだけだよな。


「そんな慌ててどうした?」


「ドライさん、私の手を握って! 早く!」


「お、おう」


 柔っこい手を握る。それだけで満たされる自分と、更なるモノを求める自分がいるが、拗らせているので行動には移さないぞ。


「復唱して! 「捕まえた!」」


「ああ、捕まえた。……なんの意味があるの?」


「これ、見て」


 差し出されたのは冒険者証の裏。職業が反映されるようだ、が。何故か、二文字職が「村正」だったフィーリアが「窃盗」と表示されている。そして、更に変化があった。


「職業「奴隷(窃盗・仮・ドライ)」? こんな職業ってあったっけ?」


「聞かれたから答えられます。二文字職は犯罪すると職業が変わるの。人を殺めたら「殺人」、物を盗んで1日経ったら「窃盗」、詐欺はバレた時点で「詐欺」、そんな感じで二文字職が剥奪されます」


「聞けば答えられる理由と、奴隷、この2点を聞く」


「奴隷は所有者の意思に反する言動は不可能なの。最悪死にます。そして、犯罪者は捕まったら「奴隷」に落ちますね。あと、借金奴隷も納期に返済できなければ「奴隷」の借金となります。仮と付いているのは、司法で認められていないから、暫定的だということです。名前はそのまま所有者ですね」


「フィーリアに言動の自由を許可する。これでどう?」


「助かったー。ちょっと痛かったの。何て言うか、こう、奥から侵食されるような痛みがあったの」


 人通りの多い道から離脱。聞かれるほど近くには人は居なかったが、結構目立ったからね。



  ○  ○  ○



 定食屋へと移動する。互いに5ルーク定食を頼み、作戦会議とした。


「簡単に言えば、「絶対返せよ」と言った本人はバックレて、預かっていた荷物に1万ルーク硬貨があったと。で、1日経ったから窃盗となったのか。小物だと窃盗の判定が低いから隠すように忍ばせていたと」


「そうですね。気付いて、詰所にでも遺失物として預ければ大丈夫でしたが、気付けなかったです」


「詐欺じゃね?」


「荷物持ちでもパーティに入りたかった私の焦りが原因ですが、立証できれば詐欺ですね。預けた本人が出てこないのですから。意図的です」


 先の真っ黒な男パーティの荷物は俺が預かってる。犯罪者の持ち物の所有権は暫定的に発見者の物だからだ。ゲームで不正だと垢バンで終わりなんだが、こっちは二文字の職業が犯罪者になるんだな。


「フィーリアはどうしたい? 先ずは奴隷の解放か」


「借金奴隷だと借金返済で解放ですが、犯罪奴隷は難しいですね」


「詐欺を立証か?」


「それしかないですが、詐欺の立証によって解放されるかは曖昧です。職業の書き換えは人智を越えた神の所業とも言われていますから。先ずは司法に訴えて正式にドライ様の所有物にしてください」


 生娘の美少女が所有物に!? 不味くね?


「先に言っておくよ。フィーリアは美少女。俺は童貞。俺の自由になったら後悔するんじゃない?」


「私の容姿はさておき、そう正直に言われると困りますが、絶対にあっちの男達よりは安全です。元々バグ持ちの私には先は無かったのかもしれません。ドライさんの判断が私の人生の結果なのでしょう」


 ふむ困った。万年ソロプレイヤーには厳しい判断だ。いや、実際にコミュニケーションってリアルでも怪しかったのに、人生を抱えるってどうなっちゃうの?


「あっ、ご主人様の方がいいですか?」


「止めて。様付けでもキツい。俺を調子に乗せないで」


「命令であれば冷遇します」


「それも困った。そんなの辛すぎる。普通に接して」


「はい♪」


 笑顔で返事するな! 誤解しちゃうだろうが! さて、飯も食ったし、詰所にでも行きますか。案内はフィーリアだけどな。

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