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 起きたら珍しくフィーリアが居なかった。俺の衣服も乱れていないので隣かな? と、ノックをしても返事なし。女性の部屋へ無断で入るのは忍びないが、主人特権として安否確認はさせてもらう。


「なに……この……惨状は?」


 ベッドに()()()散乱するランジェリー達。そして寝落ちしただろう女性達はベッドから転げ落ちている。ひー、ふー、みー、よー、いつ。うん、みんな居るな。


 静かに退室。二度寝しよ。



  ○  ○  ○



「「「すみませんでした」」」


 お天道様がしっかり顔を出してる。事情を聞けば簡単だ。デザインで混沌としてしまったらしい。徹夜の会議でようやく()()()は見出だせたがそこで力尽きた、と。


 「骨服師(ボーンパンテナー)」のオプション設定は事細かにあるそうだ。組み合わせは無限大。色がベースの白とゴブリンの緑しかない。だが、清楚な白は突き詰めれば奥が深く、無限の可能性に一晩では足りなかったようだ。


 早々に寝て良かった。


「休みも少ないし、労うのも主人の勤めだ。今日一日休むか」


「「「もっと欲しいです!」」」


 モンスター蔓延るダンジョンがどこかのバーゲンセール会場になってる。女性のファッションへの熱意が恐ろしい。


「妥協点は朝食を食ってからしっかり寝ること。昼からなら許可するよ」


「「「むー」」」


「いやいや、街に買い物に行くんじゃないんだよ! 命のやり取り! そんな状況だったら背中の守りを任せられないよ!」


「「「……はい」」」


「ほら、食事に行くよ!」


 どっちが大人なんだろうか?



  ○  ○  ○



 朝食、二度寝、昼食、と流れて転職神殿だ。みんなは転職で、ロザンナだけが副業に就くのだな。二文字職業欄に空白が追加されていた。


 サクッと転職。俺は「戦士」と「術師」のバグ職「戦術」、フィーリアとエフェロナは「村正」、ミーディイは「剣姫」、サロワナは「杖術」。これがレベル上限で二文字二重職だ。


 ロザンナは「術射」の副業に就いた。先に考えを聞いておけば良かったな。二度手間だった。まあ、焦っても仕方がないし、経験したからこの結論なのだろう。


 道中は緑をどう活かすかとか、コボルトは何色だとか、やはり白を突き詰めるべきだとか、議論が絶えない。ちなみに徹夜のハイテンションで暴走して、デザイン変更を41回の123枚も消費している。冷静になったら後悔していた。



  ○  ○  ○



 ダンジョン1層、ロザンナと俺のスキルチェック。


「ご主人様、これは良いですね」


 あっちの世界で警備の人が犯人を押さえるのに使う刺又(さすまた)にも見えるスリングショット型の杖。魔力で弦を張り、魔力弾を撃ち出すスキル『魔力弓』。弓なのに飛ぶのは弾だ。解せぬ。見事にスリングショットだな。


 標準指定の魔法扱いらしく、狙いが少しブレてた程度なら変化球のように曲がって当たる。威力は二文字職の中では標準的であるが、もう一つのスキル『溜め撃ち』のパッシブスキルにより最大3倍まで威力増幅できるので弱点は少ない。


 ディレイがない珍しいスキルだが、弦を引くモーションが必須なので慣れないと連打が無理。慣れれば絶え間なく撃てる玄人向けでもある。


「あれいいな。でも、真似は良くないよね」


「ミーディイ、今晩にでも希望を聞くから」


「分かった」


 俺は「戦術」のスキル確認。『魔力薙ぎ』と『魔力落とし』。シンプルに横薙ぎで衝撃波を放つのと、撃ち下ろしで衝撃波を放つスキルだ。衝撃波は中心は強く3メートル程度は飛ぶが威力は減衰する。シンプルで使いやすいかも。ゲームとの変化が少ないので勝手が掴みやすい。


 各々も他人では見たが、初めて使うので慣れに時間が多少かかった。


「なあ、主人。杖って短くなんないか? 片手には剣を持っておきたいんだよ」


「どうだったかな? 貸して」


「おう」


 木の棒の方を渡してくる。サロワナは二刀流になりたいのか? 杖は一応は鈍器じゃないんだけどな。デザイン変更。


 んー、短いのか。弱くて折れても嫌だな。実際は下着と一緒で耐久値全損で壊れると思うんだけどね。お、これも杖なのか?


 警棒。


 杖というよりは鈍器だな。スリングショットといい、マジックスタッフは何でもありなのか? 見た目は短い棒だがちゃんと丸い鍔がある。これなら木剣でいいんじゃね? 棒と付けないとアウトなのかな?


「これ、どう?」


「杖なのに木短剣? 嬉しいけど杖なのか?」


「警棒っていう、立派な棒で、棒は杖なんだよ。俺も知らん」


「あら、それいいわね。ご主人様、私も両手で戦いたいですわ」


「エフェロナもか。ほい。どうぞ」


「これで武器の切り替えの手間が減ります。ありがとうございました」


 サロワナとエフェロナは剣に魅了されてきているのか? 作った武器だから使ってほしい。その前に前衛の動きの練習も必要かな。練習する場所が確保できないな。


「ご主人様。杖を二本で持つとどうなりますか?」


「俺の知識だと両方の効果が出るよ。さすがに何本も抱えてってのはダメだと思う。二本持ちたいの?」


「コボルトは強いですよね。威力も欲しいけど、魔力が無くなるのは美味しくないので」


 フィーリアが次の素材を()()()求めている。しかし、両方を警棒にしたら区別がつかないよな。良いのがあるか? うーん、ワンドが一番手頃だな。定番の魔法使いの短い棒だ。音楽で使う指揮棒のサイズだが若干太くて軽く飾り彫りがある。握りもあるしこれだな。


「こっちの頼りない太さの方が威力を高める方だよ」


「きれいな彫りですね。大丈夫です。右手に警棒の方を持てば咄嗟の時は殴れます。ありがとうございます」


「ご主人様、私も、お願い」


「ミーディイも? 両手の装備は有効的だからいいか。はい」


 フィーリアとミーディイが杖二刀流になった。ジーっとロザンナが見ている。どうしろと?


「ご主人様。その短い方をお願いします。それなら握ったままでも撃てますから」


「みんなが二刀流か。ロザンナ、出来たよ」


「はい。うん。撃てますし、威力も上がりました。欲を言えば私もお揃いが良いですね。一人だけ奇抜な杖です」


「大きさを調整できるかな? 貸して」


 下着と同様に柔軟性はある筈だ。ふむふむ。やっぱりサイズ調整も可能か。そのまま縮尺を小さくして、うん、弦のないスリングショットでも見慣れたサイズになった。


「これでどう? みんなと一緒にしたいなら転職になっちゃうよ」


「今日はこの職で頑張ります。手頃なサイズで良いですね。威力も落ちていません」


 ついでにサロワナとエフェロナの威力用の杖をロッドに変更。俺のもロッドに変更。誰もが二刀流になった。


 こんなにのんびりと調整しているのは、今日の2層へのアタックで殲滅したいからだ。手応えとしてはかなり進めると思う。杖二刀流の実現は失念していたな。まあ、最近まで使い回していたからね。


「さて、行こうか」


「「「はい!」」」


 目指せ2層攻略。

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