036
「ご主人様ぁ♡ ご主人様ぁ~♡」
別の意味で気持ちいい朝を迎えた。何だと思ったら犯されてた。そりゃ気持ちいいよな。で、いつからこの状態なんだ? もう外は明るくなってきてるよ。
「ふぁあ~♡ ごしゅじんさまぁ♡ ……zzz」
俺の胸で力尽きた。横に寝かせて行水に向かう。
○ ○ ○
「「「おはようございます」」」
お姉さんたちも行水ですか。朝からなんで?
「きれいな下着です。着る前に身体を流したくて」
納得。だが、フィーリアの状況を説明する。出掛ける支度してるからな。フィーリア、寝た。
「主人、ごめんよ。フィーリアちゃんが怒るのが可愛くって煽っちゃったよ。そのまま襲い続けるとは思わなかったな。主人も爆睡だったし」
「ご主人様は寝てても元気なまんまでしたけどね♪」
えー、それなに? みんなの前でフィーリアは始めちゃったの? そしてみんなで鑑賞しちゃったの? 恥ずかし!
「あー、皆は半休にしようと思う。お金渡すから好きに動いていいよ。ああ、無理に残さなくていい」
「いえ、今でも十分に……」
「ロザンナ、先に言うが、これ以上は無理だ。現金収入がなく、貯蓄はあるが近い内にコボルトを狙わないと不味い。だから、これで勘弁してくれ。俺に、いや、俺たちに力があればもっと手を広げられるだろうから、これからもよろしく」
一人200ルーク。ちょっと痛いが甲斐性!
「はい。ありがとうございます。少し知人の様子を見てきます」
「それって、私達みたいに……」
「エフェロナ、今は言わないの」
「はい。でも、ありがとうございます」
「いい男だな! フィーリアちゃんが許せばなんだってするぜ!」
「もう、騙されていても、溺れていい」
お姉さんにいいとこ見せれたが、先も同じように出来なければ格好つかんな。うーん、進捗だけでも残念貴族令嬢に聞けないかな?
領主邸に乗り込めないから、兵士の詰め所でも行ってみるか。
○ ○ ○
おっさんに、一人寝てるから起きたら留守番するように言付ける。おっさんも「何かよ、領主が来てから客の品がよくてな」って、いい方向に宿は繁盛しているようだ。良かった。
一人で歩くと迷うな。戻って、いつもの冒険者ギルド支所の暇なお姉さんから情報収集。
「そういえば、領主様は王都に行かれて留守と聞いてますよ。今は跡継ぎの息子様が切り盛りしてますね。いい男って噂だけど、お近づきになるにはハードルが高過ぎよねー。でね、この前……」
30分くらい「なんで私はモテないの?」と言う愚痴を聞かされた。まあ最近ご無沙汰だったし、暇になったし、話に付き合う。で、冒険者がここに来ない理由も分かった。
ダンジョンを出て疲れてるときに、夜の蝶の誘惑を振り切れないらしい。若い男、戦闘後の興奮、夜の蝶の色香。結果、ダンジョンに来たときよりも財布が軽くなる。満足するのは一時で、明日の生活がヤバい。誘惑に勝てないなら、来ないって選択になるようだ。
女性冒険者? もうこの付近は嫌悪の対象だ。見向き見されていない。
男女混合パーティ? 崩壊したければどうぞ。
そんな感じらしい。
「ねえ、コボルトはどう?」
やっと仕事の話に戻ってきた。落ち着いたかな?
「2層で苦戦してますね。ゴブリンとはいえ数が多いですから」
「どのくらい?」
「一時間もしない内に100以上は倒さないと押し潰されますね。あ、不味い状況なのですか?」
本当は独占したいが3層にも行きたい。人が増えたら旨味が減る。けど、2層のゴブリンはいつ潰えるか怪しい。なので探りをいれておく。最悪、冒険者で溢れたら質素に稼ぐか、フィールドに出るかだな。
「うーん。領主様の息子様は有能だけど、仕事に慣れていないから申請が溜まってるって聞いてるのよね。本当なら介入の判断を本部に進言するのだけど、まだゴブリンが溢れてないのよね。聞いてくれるかしら?」
「介入したらゴブリンが減るの?」
「ここの2層って狭いのよ。十字路の先は直ぐ行き止まり。行き止まりの先は全て3層への転移魔方陣よ。でね、狭いけど湧きは他と変わらないから溜まっていく一方なのよ。1層が他と比べたら多いけど、許容範囲だったから甘く見てたわ」
「2層が狭いのか。駆逐したらどうなります?」
「それは減るわよ。湧くのにも時間が必要よ」
ここでモンスターリポップのお話。一匹減ったら次の同じ種族が一匹が増えるまで数日か数十日かかるそうだ。差が激しいのは階層を重ねればその分湧きが強くなるからだそうだ。
仮にだが、1層で10日かかるなら2層は7日で3層は4日とかいう計算がある。この辺はダンジョンの個性で差が激しい。でも、ゴブリンばかり湧くのではない、階層を進めば強い個体として湧くが、強い分コストが高いのか数は減る。
ゴブリンが経験値1、ゴブリンソードマンは経験値2だった。コボルトになると経験値が6。ゲーム情報だけどな。純粋に言えばゴブリン6匹を産む力でコボルトが1匹しか産めないのだろう。ゲームではそんな都合は無視だが、こっちじゃそんな理屈が存在するようだ。
で、今のダンジョンの状態だが、階層の奥から飽和する。現状が3層と2層が飽和で、1層が進行中という状況だったみたいだ。飽和状態を解消すれば湧きが落ち着くらしい。
「介入は外で問題になってからよね。ドライさんが頑張っちゃったから、申請しても保留よ。でも、2層の飽和は最初は負担が大きいけど、呆気なく一気に引くわ。こちらも「お金だして駆逐して」って領主様に言うのは冒険者ギルドの立場的に悪いのよね。采配が悪いだけだし。だから頑張って!」
相談したら投げられた。まあ、頑張るけどね。話に区切りが付いたので礼を言って去る。また、愚痴になったらアクビしそう。
○ ○ ○
「店の食材、食い尽くした!」
帰ったら、みんな帰ってた。何でも朝帰りの夜の蝶を捕まえて飯を奢ったようだ。同じ境遇の女達は、薄給であるため日々厳しい生活らしい。一食浮くだけで雲泥の差だ。後は生活消耗品を配って使い尽くしたらしい。
「結構な数の女性がいるんだな」
「好きでこの世界に入る子は少ないわよ。それこそ、いい職業を持った子が更に男に貢がせて十分貯めたら消えるか、玉の輿で嫁ぐかする世界ね。余ってる子は行き場のない見目のいいバグ職だけよ」
見た目だけじゃダメなのね。職業とそのレベルが人生の価値を決める世界だ。スキルなしはどうしても劣る。見える形で「手に職」があるのだ。支え合うパートナーは優秀な方がいいよな。
「フィーリア、体調はどう?」
「腰を振り過ぎました。けど、もう大丈夫です!」
みんな、ニヤニヤするな。
「昼食ったらダンジョンだ。準備よろしく」
「「「はい!」」」
お金が尽きるのが先か、ゴブリンが尽きるのが先か。勝負だな。まあ、お金が尽きるのが先なら、別のダンジョンに潜るけどね。