034
転職は、ミーディイが「村正」、フィーリアとロザンナが「杖術」、サロワナとエフェロナが「剣姫」、俺が「強癒」となった。みんながレベル1だが2層までの道中で3~4にはなるだろう。
そのままダンジョンへ。本当にここは空いている。冒険者に出会わない日もあるくらいだ。少し奥へ行き、作成タイム。
「作ります」
「俺も作っとこう。ロザンナ、木の棒の方の杖を貸して」
「はいどうぞ」
「骨服師」組が作り、「肉魔飾」組が受け取っている。シンプルなスポーツインナータイプで染めてないので白。セットを5つ。それでも材料には余裕があるようだ。
俺はマジックスタッフ(魔法威力増加・範囲増加)を作る。先端が丸い飾り付きに統一してミーディイと俺が使う。俺のスキルって魔法判定なのだろうか? ゲームじゃ魔法判定だったが、こっちは微妙に変化するしな。まあいいか。範囲増加だけでも十分だな。
ついでにスローイングナイフを作る。ゴブリンソードがたくさん落ちたからな。スローイングと言うだけあって投げやすいのだ。切りよく20本にしたらアイテムボックスの一つがちょうど埋まった。さっきは9本だったので手数が増えて安心できる。
次はいっぱい貯めて太刀作ろうかな♪
○ ○ ○
俺の魔力回復を兼ねて少しだけ1層で狩り。
「『剣姫の舞』~♪」
「これすごーい♪ 華麗に動けますよ♪」
珍しいスキルの『剣姫の舞』。ワンアクションのみのスキルが多い中で、このスキルは一連の動作がスキルだ。ターゲットロックで初動から斬るまでの動作をアシストする。忘れていた欠点だが、西洋剣の装備の縛りがある。なのでスローイングナイフで斬っている。
「はぁ! 『魔力杖』!」
「こっちもすごいですね。杖が伸びますよ!」
コンセプトが如意棒だからな。魔力で擬似的に杖を伸ばす。普通の突きのスキルより燃費が悪いが、リーチがある。下手な魔法よりも初動が早い上に自身の体を動かすので感覚が掴みやすい。
「血抜きのスキル。でも、とっても強い」
お馴染みの血抜きスキル『妖刀刺し』。いや、突きのスキルだよ。威力は他にも強いスキルがあるが、MP燃費と耐久値が回復するのでこのスキルを連携に挟む者は八百万プレイヤーには多かった。武器が壊れるのって辛いんだよ。その時点で詰むことが多い。こっちじゃ命懸けだしな。
余裕のある1層で女性陣が大いに暴れる。こりゃ、満足するまで練習させよう。「剣姫」の『運命の一閃』、「杖術」の『大旋風』、「村正」の『正刀弾き』、これらを教えたら止まらなくなったよ。ちゃっかりと素材は集めているので気にしない。
「『運命の一閃』♪ ひゃ~、楽し~♪」
サロワナが一番暴れているな。近接の攻撃職かぁ。考えておこう。
○ ○ ○
「「「すみませんでした」」」
二度目の昼食タイム。ピークは過ぎた時間なので空いている。そこで謝る美人たち。戦闘が怖いよりはいいよね。
「慣れる必要もあったし、誰かが前に出ることも考えないといけなかった。2層ではゴブリンが一撃でない戦闘だからな。威力のあるスキルも経験して欲しかったのもある。まあ、2層は数が多すぎるから、一匹を相手してたら潰れるけどね」
「確かに。『大旋風』でも回転が止まったら殴られちゃいますね」
「「剣姫」も相手が一体なら強いと思う。でも、あの数は無理だよな」
「「村正」は、ワンチャンあり? 連続で、動けるよね」
「慣れとスキル連携が重要かな。『妖刀刺し』でも少し間がある。今の情報だけで話すなら、俺なら二文字二重職で「村正」と「剣姫」のスキルで繋げていくな」
単純だが『剣姫の舞』と『妖刀刺し』なら交互に使える。欠点は威力が乏しい。『運命の一閃』の大打撃と合わせる手もあるが、やっぱり二文字職のスキルだ。もう少し先に進むと物足りない。ゴブリンなら圧勝だけどな。
「成る程」
「私は魔法の方が性に合ってるわね。楽しかったけど、後ろから援護したいわ」
「支援職って手もあるね。仲間を活かせば効率は格段に上がるし、何と言っても安定感が変わる。装備が整ったら転職する?」
「いいえ。先ずは「肉魔飾」を上げるわ。ご主人様は四文字職業も欲しいのでしょ?」
選択肢は多い方がいい。四文字職ならスキルが4つ。二文字二重職と三文字職を合わせて11のスキルが選べる。柔軟な戦闘が望めるのだ。
「先は長いし、現金収入がない。今はコボルトを目指そう」
「「「はい!」」」
○ ○ ○
「作戦は同じだ。同じ数が居ると思え。行くぞ!」
「「「はい!」」」
初撃のロザンナ。魔力も十分に回復しているので余裕があるだろう。重ねてミーディイの追撃。範囲内の大半は行動不能の状態になる。
俺は出入口を塞ぐ。やはり数は回復していた。さらに死体も消えて通路がクリアになっている。また塞ぎ続けるしかない。
フィーリア達はゴブリンを近づけまいと撃つ。しかし、差があるとすればディレイで近くのゴブリンに止めを刺している。フィーリアは杖で、サロワナとエフェロナは左に持つスローイングナイフで。
止めで数が減った分、ロザンナとミーディイの範囲魔法の威力が増す。俺も接近を許さずにしながらも行動不能のゴブリンに止めを刺す。
結果、ロザンナとミーディイは二発ずつで大半を行動不能へとした。俺はこのまま出入口封鎖を継続して、みんなに回収を急がせる。
三発目の『残虐創設』を設置した頃に回収は終わったようだ。朝よりは余裕がある。
「先に進むか?」
「ご主人様に任せます」
「様子は見よう。無理はしない。ロザンナ、残り何発だ?」
「素材集めで魔力も使いましたが、ミーディイと共に一発ずつあります」
「フィーリア達は?」
「そこまで余裕はないです」
流石に素材集めで魔力を使った「骨服師」組は残りが少ないか。
「ゴブリンの死骸が進路を塞いでるよな。射線が通らない。よし、ロザンナと俺は『残虐創設』の範囲ギリギリで待機。これが消えたら『肉皮剥ぎ魔術』を撃ってくれ」
「はい、分かりました」
暫し『残虐創設』の範囲内に入ったゴブリンの悲鳴を聞きながら待つ。
赤く光っていた床から光が消える。
「行きます! 『肉皮剥ぎ魔術』!」
それに合わせてゴブリンの死骸の山を上る。射線が通った。先にあるのは十字路か。交差点に『残虐創設』を設置。抜けた数は少ないな。俺一人で対応可能だが。
「サロワナ、こっちに来い! 他は素材回収。残っていても2分後に撤収だ」
「「「はい!」」」
「私の剣が舞うぜ!」
といっても数は少ない。いい案配にボロボロのゴブリンが流れてくるだけだ。サロワナで十分だが、サロワナも魔力が乏しい。俺も参戦して時間を稼ぐ。
「ご主人様、魔力が!」
「無理するな! 撤収!」
「「「はい!」」」
ゴブリンの山は半分程度が削られていた。上々じゃね? 戦果確認は今日は帰ってからだな。
ゴブリンなのに、群れは疲れるよ。