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「バグ職「村正」のもう1つのスキル『正刀弾き』を使ってやる」


 ゴブリンは間合いと見るやこん棒を振り下ろそうとする。それに合わせてスキル『正刀弾き』を繰り出しこん棒にぶつける。不可解な強撃に、こん棒を弾かれゴブリンは尻餅をつく。


「なっ!」


 普通なら両方の武器が耐久値を減らし、ゼロになれば砕けるゲーム仕様。それであれば最下級モンスターのゴブリンのこん棒と同列かそれ以下の木剣が砕けるのだが、『正刀弾き』はひと味違う。


 MPマジックポイントを消費して不可視の膜を張る。それによる効果は耐久値の減少軽減と反動増加。後者の反動増加により自身の攻撃は()()()()()時には通常時の攻撃力以上の反動を与える。


「これが『正刀弾き』。なっ。バグ職も強いだろ?」


「二文字職がこんなに強いなんて、って、起きて、来ます!」


 痺れた手を振るい、こん棒が持てるようになったゴブリン。再び単純な振り下ろしで攻撃してきたので実験。八百万では出来なかった二文字職のみでのスキル複数使用。


「『正刀弾き』」


 ガゴンッ!


「からの『妖刀刺し』」


 ゴスンッ!


 おお、出来た。今回は眉間に突きを打ち気絶を狙った。うまい具合に加減もできて仰向けにゴブリンは倒れ、泡を吹いている。


「とまあ、こんな感じで使えるバグ職だよ。止め、よろしく。ああ、『妖刀刺し』を心臓にめがけて刺すといいよ」


「えっ!? あ、はい!」


 警戒しつつゴブリンに寄り、両手で剥ぎ取りナイフで止めを刺す。ちゃんと口で『妖刀刺し』と呟いていたので良いだろう。実際に傷口からは一滴も血は流れ出ない。


「なに、この、スキル。気味悪い」


「言うなよ。むしろ血を浴びる方が不愉快だって」


「確かにそうですね。あ、吸い終わった。体感で分かるものですね。それじゃ耳を削ぎます」


 実際に今はスキルを各2回ずつ使った。出来てあと2~3回だろう。二文字職の低レベルはMPが少ないし、自然回復も遅い。燃費は悪くないスキルなのだが、最大MPが少ないのだ。MPってあるよね?


「えむぴー? は知りませんが、スキルを使いすぎると倦怠感に襲われますので、それが……あっ、お名前聞いてなかったです」


 困った。さりげなく反らしていたが、気付いたか。この世界は知らないがVRMMORPGの八百万は中世ファンタジー。貴族も王様もいる世界だ。家名持ちは特権階級だろう。ゲームでも家名は無しだが、区切って家名っぽくも名前が付けれた。どーすっか?


「……ドライ……だ」


 本名の三郎から、中二チックにドイツ語で。フィーリアも家名を名乗っていないので、自己紹介はファーストネームのみでいいだろう。この新キャラも3番目だしな。って、自分の容姿ってどうなってんだろ?


「はい。ドライさんですね。さっきのお答えで良かったですか?」


「参考になった。しばらくは一緒の行動でいいのか? スキルの上限回数が未知数だ一度ダンジョンを出よう。それともフィーリアがゴブリンを倒せば1~2匹は討伐が増えるかもな」


「うっ! まだ、前に立てないです。怖いので」


「では、撤収」


「はい」



  ○  ○  ○



「ここが冒険者ギルドになります」


 この街(ファーストで合ってた)には、職業訓練所が多数あると同時に、ダンジョンも多数ある。規模でいうと5段階評価の最低の星1が7つと星2が1つ。街中に存在している。星2攻略は高レベル三文字職のパーティでギリギリ攻略可能だったと思うが、認識は更新し続けよう。


「そういえば、ゴブリンの耳はどこやった?」


 買い取りカウンターに並びつつ聞いてみる。


「アイテムボックスですよ」


 なんと、便利機能が身近な世界かよ!


「二文字職だと中樽2つですよ。片方空いていたので入れてます」


 文字数で中樽(正確には30センチ四方の箱)の数が増えるそうだ。五文字の職業だと5つ。微妙に容量が少ないが仕方がないのだろう。


「運搬系統の職に就くと容量が増えるそうですが、その分だけ戦闘向けの職を削りますから」


 やはり複数の職業を持つ点はゲームと同じか。短期目標は三文字職を狙う、以外に選択肢がないな。俺の知る常識がこの世界で通じるか怪しいからな。ダンジョンに入って稼ぐ。今はこれしか収入源が見えない。くぅ、ファーストキャラでこっち来てたら楽だったよなぁ。


「次の方」


「はい。ゴブリン2匹です」


 耳と一緒にカードを出している? もしかして身分証?


「確かに。血もきれいに拭かれていて、こちらとしては嬉しいですね。褒賞金の30ルークになります」


「ありがとうございました」


 買い取りの列から外れてカードを聞く。俺って身分証ないじゃん。危ない世界だったら人権ないじゃん!


「すぐそこの空いてるカウンターで発行できますよ」


 身分証大事。どこまでの保険かは分からんが、ないよりある方がいい。さっそくたのもー!


「初回発行に10ルーク。再発行は50ルークです」


 日本語OKな書類に名前と年齢を書いて提出。ん? 金いるの? この辺もゲームとは違うよなぁ。


「どうぞ」


「サンキュ。はい」


「確かに。ここに手をかざしてください」


 タブレット端末? いや、素材は金属か? まあ、かざしてみる。特にエフェクトなし。光るかなーって構えてたらカードが渡された。


「何か?」


「いえ、失礼します」


 あっさりした冒険者登録であった。カードには名前と年齢にランクがGとあった。ランク制とはゲームにない仕様だな。


「冒険者登録なしで、なんで転職できたんですか?」


 フィーリアの問いに、まだまだ知らないことが多いと実感した。

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