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「なあ、おっさん。隣の部屋、借りれるか?」


「まあ、空いてるな。借りるのか?」


「物置になってる元客室にベッドってあるか?」


「荷物のけりゃ使えるぞ」


「少ないけど、前払いの分は迷惑料で。これが新たな2部屋15日分」


 おっさんは積んだ金を数えてくれる。何も聞かないんだな。


「こりゃまた思いきったな。4500ルークか」


「ちゃんと払えるからな。先は分からんけど、あるときには払うさ」


「物置のもんは好きに使え。今の部屋と同じ家具があるはずだ」


「いいのか?」


「わしはな、夢があったんだ。この宿に貴族をいれるってな。理想は長期宿泊だが、若い頃には無理だった。寂れて連れ込み宿に落ちたんだよ。でもよ、坊主が領主を連れてきた。あの一時で満足したよ。坊主が好きに使うといいさ。また来るかもしれんからな」


 豪快に笑うな。俺だって予想外だったんだがな。それで貴族が来ても文句一つも言わなかったのか。連れ込み宿としての先はあるのか? 損害の方が多くないか?


「好意に甘えるよ。世話になる」


「おうよ。何かあったら言え。できる範囲で聞いてやる」



  ○  ○  ○



「コボルトですよね。一番活気があるのはやはり本部近くにある中級ダンジョンですね。利用者が多い分、獲物の取り合いは多いですね」


 その流れで他の初級ダンジョンの様子を聞いたが、魔方陣のワープポイントでモンスター溜まりになっている様子は聞かれなかった。やはり、ここには冒険者が来ない。来ても餌食になっているのだろう。魔方陣の発動に少し時間がかかるからな。


 モンスターの奪い合いが無いのは利点でもあるが、コボルトが、褒賞金の目処が遠い。焦らずに削っていくしかないか。ロザンナの回復まで丸2日かかっている。あの女性たちなら3~5日は難しいか。衰弱が激しいからな。


「また来ます」


「はい。暇ですのでいつでもどうぞ」


 寂しい支所、職員一人だもんな。



  ○  ○  ○



「ただいま」


「ほら、大丈夫よ」


「「「雇ってください!」」」


 別に土下座じゃなくても。お、残さず食ったな。この辺で遠慮されると回復が遠退くからな。


「分かった。従者ギルドで登録して、服を買おう。そして転職だ」


「「「ありがとうございます!」」」


 断られたらどうしようかと思ったよ。さて、忙しいな。


 サクッと従者ギルドは「またか」みたいな対応で処理された。まあ、この三人は浮浪者っぽいもんな。そして艶やかになったロザンナは同一人物には見られていない。


「フィーリア、ロザンナ、日が傾く前に終わらしてくれよ。頼むよ。転職しなきゃいけないんだから」


「「はい♪」」


 ワゴンセールのような古着屋で戦争が始まった。あれやこれやと大騒ぎだ。三人も混ざっているので気持ちも上向いているのだろう。善き善き。


 空を見つめる。雲がゆっくり流れているのにどんどん進む。戦争はまだ終わらない。


「416ルークでした」


「お、おう。これ、渡してきてくれ」


 疲れた。



  ○  ○  ○



「以上の手順でバグ職「強癒」に就いてくれ。直ぐに魔力枯渇で辛くなるだろうが、終われば食事して宿で休むだけだ」


「「「はい!」」」


 事前に聞いていたのか抵抗はない。順々に転職を成功させ、初めての魔力枯渇で喜ぶ。座り込んで笑顔で喜んでいる。


「フィーリア。一応、転職してくれ。バグ職「強癒」にだ」


「はい。出来れば嬉しいですね」


 フィーリアも転職神殿に祈る。


「ふぁ? ご主人様! これ!」


 そこには「奴隷」は消えずに「強癒」の職が追加されていた。へー、二文字二重職はこう表記されるのか。


「これでまた育ちます!」


「頼むな。よし、俺だけ持ってないのは格好がつかんな。さっさと二文字二重職を目指すか」


 予定通りに「剣射」へと転職。ステータスダウンは仕方がないが、先を見れば利点しかない。


「さて、いつもの定食屋で食うが……嫌な思い出あるか?」


 否定されたので、色街の美味しい定食屋でがっつり食う。人数分の定食に大皿3つ。大皿は俺の残したものをみんなで処分させる。欠食女性がもりもり食った。やはり「強癒」の回復スキルは食事も重要のようだな。



  ○  ○  ○



「ご主人様? その部屋は……鍵?」


「ああ、借りた。今日はこっちに三人で寝てくれ。ベッドが大きいから三人で寝れるだろう」


 部屋は特に問題なし。大きなベッドにテーブルセット。テーブルを退ければベッドが二つ入るな。


「明日の朝にでも物置からベッドを出そう。許可は貰ってる」


「ご主人様。今からでは駄目ですか? 私は今日はこちらにお邪魔します」


「物置の状況次第だよな。どれ」


 鍵がかかっていない。不用心じゃね? と思ったら、そこまで物はない。埃はたいて動かせば……扉、通るかな?


「斜めにすればいけますよ。重いのでみんなで抱えましょう」


「「「はい!」」」


 魔力枯渇で怠いだろうに。せっせとベッドを運び込む。対面の部屋が物置で良かった。旋回とか無理っぽい。


「ご主人様はここまでです。フィーリアちゃん、後はよろしくね」


「はっ! ありがとう! ご主人様、行きますよ~♪」


「うーん、そんなつもりじゃなかったが、ロザンナ、あと頼む」


「ごゆっくり♪」


 ってな感じで慌ただしく流れた今日であった。禁欲してたつもりはないが、とってもハッスルしてしまった。

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