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 バグ職業には一部意味のあるバグがあること、それらの知識が俺にあること、その実験的な転職の準備がまだ終わっていない、正確には必要な三文字職業の訓練所に行っていないことを話した。


「良ければ、二文字職の別のバグ職を私で試したら? えっと、「村正」以外にも二文字バグ職業があるのでしょう?」


「確かに……「ロザンナよ」ロザンナさんの言うとおりだ。もしかして三文字職の訓練所も回っていますか?」


「全て試したわ。でも無理だったの。一昨日の話よ」


 クールタイムは一日。必要な文字があれば、二文字職と三文字職、両方ともバグ職業に転職できるな。申し訳ないが、実験させてもらうか。


「では、早速転職をしてみよう」


「全て否定されてるから、失敗しても気に病まないでね」


 流石のロザンナお姉さん。僕が一度否定された転職を強要している負い目があるのを見抜かれた。優しさに甘えるか。



  ○  ○  ○



 小さな祠である転職神殿。各所に設置されているので訓練所の数ほどありそうだ。ここでロザンナさんにお願いするのは、バグ職「強癒」だ。このバグ職業、前衛の盾であるタンク系に気に入られている。パッシブスキルが2つと補助にいいのだ。


 「強者」と「治癒」のバグ職「強癒」の手順をお復習しておこう。


 「強者」選択、【転職しますか? Yes/No】、No。

 「治癒」選択、【転職しますか? Yes/No】、No。

 文字列、定義完了。

 「強者」選択、【転職しますか? Yes/No】、No。

 「強」の文字、選択。

 「治癒」選択、【転職しますか? Yes/No】、No。

 「治癒」選択、【転職しまスか? Yes/No】、で「癒」を選択しており文字化けしてるのでYes。


 こんな手順だ。ロザンナさんはいまいち反応が薄い。


「回りくどいわね」


「話した相手はまだ少ないけど、みんな同じ反応だな。早速試してよ」


「わ、分かったわ」


「ご主人様に間違いはありません!」


 無駄に強気なフィーリア。いや、実際には初めての確定バグ転職なんだよ。俺もビクビクしてるし、二文字職だと運の要素も強くて成功しても不安なんだよな。


 祈る時間が長く感じる。まあ、実際はキャンセルを連呼してるから普通の転職よりは長いよな。


「終わったわ。見て!」


「お、「強癒」になってら」


「おめでとうございます!」


「このバグ職業ってなんなの?」


 身分証が冒険者証なのは特定のギルドでは登録できなかったからだろうな。っと、説明。


 バグ職業「強癒」。スキルは『治癒強化』と『異常回復強化』。どっちもじんわりと回復するのだ。治癒強化はHPというかこっちなら外傷を、異常回復強化はバッドステータスというかこっちなら病魔を、それぞれじんわりと回復する。


 発動中はMPが最大値の2割まで減るまでは常時発動。健全になるか魔力枯渇で切れる。魔力が完全回復でまたスイッチが入る。勝手にスイッチが入るので使い勝手は悪いのだが、五文字職までいくとMP自然回復量の方が上回るので気にならないし、それ以下の職であっても保険としてとても有効なのだ。時間を待てば完治するのだからな。


「もしかして、私の体を気にしてこれを選んだの? すごい。体が軽くなっていく実感と、これが魔力を消費する感覚なのね! すごい、すごいわ! 私、スキルを使ってる!」


「ちょ、ロザンナさん。魔力が直ぐに尽きる。座って! 倒れ「きゅう~」……っと、遅かったか。二文字職のレベル1だと直ぐに魔力が尽きるよ」


 はしゃいでいたロザンナさんを倒れる前に抱き締めて受け止めた。おおう。フィーリアとは違う香りに酔いそうだ。


「むー!」


「ちょ、フィーリア! 不可抗力だ!」


 脇腹ツンツンされた。意外にふにゃってなるな。バランスを崩して転けるかと思ったぞ。


「えへへ~♪ 初めて魔力枯渇しちゃった♪」


 俺の胸で笑顔のロザンナさんがまぶし! 大人の女性が子供のように無邪気に笑う。ああ、10年も苦しんでいたんだよな。そりゃ嬉しいか。


「鞭打って済まないが、三文字職の転職もお願いできるか? 「肉屋」と「魔術師」と「服飾師」があれば……あー、クールタイムだった」


「そうですね。転職までは時間が必要……でっす!」


 フィーリアがロザンナさんを奪った。残念。


「その職業なら、訓練所行きましたよ。明日にでもお願いするわね、()()()()♪」


「ご主人様って柄じゃ……えーっと、仲間になってくれるってことか?」


「んー、坊やが就職先でいいのよね? そして、フィーリアちゃんが奴隷だし、フィーリアちゃんと対等って考えると従者ギルドへの登録しかないわね。私は坊やの従者になるのよ。だから、ご主人様」


 従者ギルドは本人が所属するのだが、雇用主と一緒でないと登録ができないギルドだ。立場的には衣食住の保証の有無と給金で従者になるので、給金部分以外は奴隷と似たような契約状況になる事もある。


 しかし、従者ギルドを利用するのはある程度の地位がある商人や貴族であり、奴隷とは一線を引いている。が、下には下があるので、奴隷同様の扱いをしている雇用者もいる。悪質だと従者ギルドが介入するが、介入の基準が低すぎるので、登録者の生活状態が雇用主の評価となる。


「それって今後も同じ流れなら、仲間の待遇の良し悪しが全て俺の評価か。不当に待遇する気はないけど、見られてるってのも嫌だなぁ。なあ、奴隷に給金あり?」


「所有物に物を渡しても所有者の物ですよね。意味ありませんよ」


「だから、登録はフィーリアちゃんと一緒で衣食住のみの保証よ。これ以上だとフィーリアちゃんが下になっちゃうわ」


「横暴な理論だよな。くっ。従者ギルドへ登録しない場合は?」


「難しいわ。坊やが雇用契約をしっかりして、それを個人で扱っても神様の心具合で貸し、借金と扱われるかもしれないわ。そうなれば私は借金の奴隷になりそうね。試してみる?」


 いや、いやいや、貴重な二文字職が「奴隷」で埋まるのは不味いって。公の契約じゃないと曖昧な扱いになるのか。確か「公証人」やら「交渉人」とかの普通の職業があったはずだが。


「それがギルドや商人の保証ですよ。ロザンナさんに手厚い衣食住を提供すれば良いのです」


「手厚いかは別にしてフィーリアちゃんに少し劣る位が理想ね。正妻より良い待遇は求めないわよ」


「正妻って、そんなぁ♪」


 色々とアイデアを出したつもりだが、どうもロザンナさんを従者にしないと金銭以外でも価値あるものなら売買の扱いにした方が借金の奴隷になりにくいそうだ。そして、ロザンナさんには人生10年分の重みのある価値ある情報を与えている。今にも奴隷になってもおかしくないそうだ。


「仕方がない。従者ギルドに行こう」


「お願いしますね、ご主人様」


「ロザンナさんはいい人です! 逃がさないようにがっちり契約です!」


 従者なら主人の物という価値観である程度の譲渡が許される。無期限貸与とか賞与みたいなものかな?


 さて、奴隷落ちしないよう急ぐか。

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