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 おっさんにアリエッタさん、俺らのイメージアップに貢献してくれてる。お陰で幾分住みやすくなっているのだろう。俺がいいが、バグ体質には世間の風は冷たいからな。


「三層、無謀な冒険者がいますね」


 中級ダンジョンは知らんが、一攫千金を求めてこっちにも来たのだろう。冒険者証が落ちてる。今回は5枚。俺らの留守の期間を考えれば少ない被害だと言えるだろう。


「自己責任だな。明日にでも届けよう」


 さて、無双するか。手応えでは「森羅聖霊師」の土魔法で五千匹討伐は近いと思うんだがな。あと五百もないはず。


 右手に土属性の小太刀、左手に血に染まっていない薙刀を借りて、土属性『妖刀刺し』を主軸に狩っていく。ここの階層はコボルトが減らないなぁ。


「次は何を作るのですか?」


「薬師男衆のオーバーオールかな。護衛するなら全身防具がいいだろう。無茶な威力の攻撃を酔っぱらいがするとは思えないが、「心技体(オールステータス)」も過信できんしな」


 自身の防御力と全てのHPを越えれば反射しないのがゲームの仕様。こっちではどう違うか、無理な検証はしたくない。なら、防御力を上げて安心な方がいいな。


「しかし、主人の攻撃って無敵だよな」


「ん? そうでもないぞ。コボルト相手だから広く弱くしているけど、ホワイトドラゴンには一点集中してただろ。多少強くなっただけで一匹ずつだ。まだ弱いよ」


「それで弱いと、世の中の冒険者は全て弱いですね」


「ご主人様は、技術も、ある。負ける相手、想像できないよ」


 基準の頂点が八百万(ゲーム)の廃プレイヤーだからな。武器の長さすら一ミリ単位で調整するバカ達だ。最高級素材を湯水のごとく使った武器を壊れるのも厭わず調整する狂ったバカだ。


 俺は対人戦なら上の下って程度だっただろう。装備で言えば更にワンランク落ちる。技術でカバーしてたんだ。課金はそこそこのプレイ時間と情報量で補ってた半端者だ。廃人の大人にゃ勝てんよ。


 システムバランスがゲームより崩れているこの異世界では、一から技術を磨き直してるんだけどね。魔力操作がより身近になって未だに微調整が危ういよな。強敵にはまだ挑めない。対人戦も力押しだ。


 まあ、死んだら終わりの世界で無茶はしない。



  ○  ○  ○



 昼飯を集りにいった。


「なあ、何でゴブリンソードなんだ?」


 また怪我をしてスープを飲んでる新人冒険者。


「金を貯めていいやつ買うんだ。鉄の剣でも安いと折れるって聞いた」


「俺らは「術師」だから、武器は拾いもんでいいんだよ」


「そうだぞ。知らないのか?」


 前衛なし? そりゃ無茶な構成だな。うちのが居ないと死んでるんじゃないか? ああ、そうか。無理に物理攻撃だと消耗品で飢えて死ぬのか。それでも盾役はいると思うぞ。


「せめて二人は「強者」くらいになって、ゴブリンこん棒で殴れよ」


「みんな「術師」なら一匹ならいいんだよ。二匹はダメだぞ」


「それに俺らはみんな「魔術師」になって稼ぐんだよ」


 ふむ。未来の夢はあるが、設計がずさんすぎる。後衛のみのパーティなんて潰れるぞ。それとも行く宛があるのか? ゴブリンで一生を終えそうだな。ウルフやコボルトが武器ブーストなしで殺れるだろうか? 否だな。


「強くなったら、クランに貢献するんだ!」


「宛があるのか。なら、そっちに世話になれよ」


「世話になってるだろ? クラン八百万(やおよろず)に入ってるんだ!」


「ん? 誰が許したんだ?」


「もう入ってるよ。世話になってるから、お返しはするんだ」


 周りを見ると、半分ぐらいは目を背けて、半分ぐらいは苦笑い。うちのクランは俺以外は従者だ。しかも俺が幾つかを縛っている。俺以外に許可を出せるものはいないんだがな。


 で、反応を見る限り、新人冒険者の勘違いだな。世話してるのは冒険者ギルドに頼まれてだ。クランの活動方針ではない。まあ、弱ってるなら助けるが、ずっと面倒を見るってのは違うよな。


「なあ、少年達よ。クラン八百万は所属全員でパーティ組んでるの知ってるか?」


「ああ、聞いた。末端は入れないんだろ?」


「いや、末端は存在しないぞ」


「「「えぇー」」」


「パーティ内で役割分担はあるが、パーティの外にクランメンバーはいない。これはトップが皆を雇用しているからだ。冒険者が所属するんじゃない。従者が冒険者をしているんだよ」


「そのトップって奴に頼めばいいのか?」


「そのトップはな、横暴でなぁ。職業を勝手に決めるんだよ。「誰が何したい」って言ってもトップの命令で転職だ。少年よ。急に「鍛治師」やれって言われて納得するか?」


 みんなが苦笑い。


「……いや、冒険者は自由だ。勝手する。俺らは魔力操作を磨いて、クラン八百万の武器で戦いたいんだ!」


 戦闘メイドが目を背けた。うん。属性攻撃を見られちゃったのね。属性剣やらマジックスタッフでも今なら破格か。あー、フライパンが属性付きだな。贅沢な使い方だよな。


「武器って全部がトップの所有物だ。見てわかるだろ? こんなに薬作る奴がいるのに、トップはケチって調理器具を用意してないんだ。それもトップが自分が強くなるためだけに使ってるからな。末端に武器が行くと思うか?」


「トップって奴はケチで横暴だな!」


「そんなもんだって」


「ご主人様。からかうのは止めましょう。坊や、武器はね、ただ足りないだけですよ。あと、このからかってるご主人様がみんなのご主人様です」


「「「えぇー」」」


「なら、超金持ちじゃん!」


「超強いんだろ! 強くし「あ、ゴブリ「ズシャ!」……」……あれ? ゴブリンが簡単に死んだ?」


 ゴブリンソード投剣一撃。ついでに無駄に血抜き済み。


「あーあ、折角、評判下げてたのに。強くなりたきゃ、基礎覚えろ。今のは威力はステータスだが、投げる技術はスキルでもないぞ。「術師」でも攻撃を食らわずに避けろよ」


「逃げてるって!」


「違うだろ。逃げるんじゃなくて避ける。躱す。防ぐ。まあいい。ゴブリンはこうやる。最低限の基礎だ」


 再びやって来たゴブリンの前に立つ。先ほど倒したゴブリンのこん棒を持って。ゴブリンは単純だ。振り回すだけ。当てる気はあるが当てるような段取りを組んだ動きではない。


 上段振り下ろし、半歩左に躱しゴブリンこん棒で頭を小突く。よろめいたゴブリンは体勢を立て直して横薙ぎに振るうが、半歩引いてこん棒が通りすぎたらまた頭を小突く。以下繰り返し。ゴブリンこん棒で小突くだけで倒してしまった。弱い。


「ゴブリンは単調な動きだ。あと頭が重い。要点を掴めば絶対優位で倒せる。それこそ、どんな二文字職のレベル1でもだ」


「「「…………はい」」」


「三人いるなら、これで三匹は余裕だな」


「動きながら撃てないって!」


「殴ればいいじゃん。一匹倒せばこん棒一個だ。壊れても替えがある。まあ、動きながら撃てばいいだけだがな。頑張れよ、少年たち」


 飯も食ったし、一度転職神殿で確認しよう。ん? 戦闘メイドの前衛担当だったな。何かな?


「あの、ご主人様は「剣姫」も躱せるのですか?」


「アシスト頼りなら余裕で。それをフェイントに使うならその人の技量次第だな。どっかの影武者なら躱さず防ぐかもな」


「ありがとうございました」


 ふむ。向上心があってよろしい。『剣姫の舞』は一動作だけ上級レベルの動きをしてくれる。でもあっちじゃ上級レベルは素でいっぱい居たからな。最適解を導く『剣姫の舞』からの連携なら見たことあるが、最適解って読みやすいよね。


 さあ、「森羅聖霊師」に就けるようになったかな?

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