表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/106

100

「おっさん。薬師男衆を使ったのか?」


「いや、唆したんじゃ。親分のシマが荒らされるぞってな」


「正直に言え。共存共栄って事だろ」


「なんじゃ。言わんでもいいじゃないか」


 このおっさんは。


「最近はの、街が荒れ気味じゃ。特に酒と女のある色街はの。冒険者の若造ですら大きな顔をするんじゃ。だからの、独立自治をしておるんじゃ。元は娼婦ギルドの仕事じゃたが、ありゃ達が悪い。その点、薬師男衆ときたら(うぶ)じゃのう。ちょっと女に誉められただけでデレデレじゃ」


「あいつらを利用するだけなら断るぞ! 別に俺のシマって訳じゃねえ。そりゃ荒れるのは良くねえけど、俺以外の奴が使うのはおかしいだろ? 男衆も対価を断ってる状況だ。案を出せ」


「あの三階に女を呼ぼうかの。いい男が女を知らんのは損じゃ」


「治安維持の対価は女遊びか。溺れなきゃいいが」


「なに、多少なら金があるじゃろうに。自分の責任くらい自分で取らせろ。坊主は過保護でいけんの」


 うーん。確かに成人だ。いい大人だ。働いた労賃は自分の好きにすればいい。そこまで面倒は見れんか。


「治安維持の対価は、その晩に働いた男衆の労働に釣り合う接待だ。場所は三階で、時間は仕事明けから昼まで。……寝る時間がないか」


「ご主人様。話を聞けば夜番は昼に仮眠を取って出勤しているそうです。娼婦も一晩中起きているわけではありません。客と一緒に寝ますよ。そこまで心配しないでいいと思いますよ」


「では、坊主の案を通しておこう。なに、悪い女は回さんよ」


「ああ、頼むぞ」



  ○  ○  ○



 夕食後。


「「「黒よ~♪」」」


 お土産を配る。ランジェリーセット一人五着。染まってないのもあるが、配った半分以上は黒色。ついでにソックスとグローブ……布製の手袋……も配布。靴下と手袋は四組ずつ。薬師男衆には一組ずつ。


「「「素敵♪」」」


 カチューシャとバレッタは奥さん達が譲り、戦闘メイドに一人一つずつ配られた。基本はシルバーアクセサリー。特に変なデザインではないが気分で仲良く交換してほしい。


 戦闘メイドは「戦利品はご主人様の物です」とストックいっぱい。ゴブリンの戦利品だ。なので19日ぶりの新作である。武器に関して問う前に渡したのが不味かった。


「後衛は「杖術」に切り替えました」


 とのこと。あっさりしていたが、俺がスリングショットに作り替えてなかったのが失敗だ。そちらに慣れたようなのでそのままにする。


 計画としてグレムリンが必要だろう。前衛にシールドと小太刀。中衛と後衛に薙刀。これでコボルトでも安心して送れる。色街ダンジョンの三層掃除が必要ではあるが、ファースト領の中級ダンジョンの様子次第では潜りたいな。


 祭りが続くので退散。



  ○  ○  ○



 奥さん達が戦闘メイドを相手にしているので、静かなベッドだ。二階は騒がしいぞ。


「何もない夜。これもいい」


 静かに就寝。zzz。



  ○  ○  ○



 朝は早起きして薬師男衆の元へ。夜の蝶はこの辺で仕事を終えるからな。見回り警護も終えているだろう。


「親方! 女性が宴会の準備をしていまっす!」


「昨日の夕方の話なのにな。説明されたんじゃないのか?」


「はいっす! 親方の許可でお礼っす!」


「なら受け取れ。警護の報酬だから、警護した奴が接待されるぞ」


「む、無理っす! 親方なら楽しめるっす!」


「俺を何だと思ってるんだ。これは無償の警護に対するお礼だ。俺の報酬ではなく、お前らの取り分だ。好意は受け取れ。あと楽しめ。ああ、乱暴はダメだぞ。同意でしろよ」


「「「マジっすか!?」」」


「マジっす。借金しないようにな。油断すると溺れちゃうぞ」


「「「んぐっ!」」」


 挨拶くらいしとくか。



  ○  ○  ○



「うちの男衆は慣れないから優しく頼みます」


「「「はーい♪」」」


「私がここを見るラーニャよ。オリバーに聞いて早速用意したわ。本当に助かるのよ。払わずに剣を抜いて暴れる客を取り押さえてくれてね。惚れた子も多いわ。食べちゃっていいのよね?」


「同意の上でなら。あと、溺れさせないように、去り際はさっぱりでお願いします。ゆっくりと女遊びを教えてあげてください。うちから暴漢は出したくありませんので」


「ホント、過保護ね。子供相手じゃないのよ。でも、そうね、上手になって貰う方が互いに楽しいわね。うふっ。紳士に育てて、あ・げ・る♪」


「「「うふふ♪」」」


 貢ぐ君にならないようにな。頼むよ。



  ○  ○  ○



 二階に戻ればてんやわんや。美味しい役なのに「お前、代わりに行けよ」って譲ってるし。結局は全員が楽しむのにな。


「おい。順番を譲るのは無しだ。金より貴重な彼女達の気持ちだぞ。男なら受けて立て!」


「「「う、うっす」」」


「「「頑張るっす!」」」


 どうもノリが修学旅行で女部屋に招待された思春期男子だ。まあ、誘ってるのは歴戦の猛者だがな。漏れなく卒業するだろうなぁ。薬師ギルドで奴隷のように扱われてたんだ。自分で掴んだ至福の一時、満喫しろ。


「ほら、女を待たせるな!」


「「「う、う、うっす」」」


 俺が該当の男衆を三階へと押しやる。


「「「いらっしゃいませ~♪」」」


「「「ひゃい!」」」


 一人に一人。漏れはないな。手を引かれてそれぞれの席へ。広い三階で良かったよ。足りないソファーとかは持ってきてくれたのかな? まあ、好きにしてくれ。


「(任せます)」


「(いいわ。天国魅せてあげるわ)」


 ラーニャさんに任せて退散。野太くも女々しい声が響く。うん、パニクってるなぁ。



  ○  ○  ○



 二階から応援する子羊達を置いて、宿に戻る。


「どうじゃったか?」


「準備良すぎに、準備早すぎ」


「ええじゃろうが」


「まあ、ラーニャさんには加減するようには言っておいたよ」


「なぬっ!? ラーニャか? んー、まあいいかの」


 えっ、不穏だけど。どうなの?


「いやの、ここの最高級店のオーナーじゃ。動くとは思わなんでな。あれは上手にする。男衆を大切にしたいんじゃろう」


 へー。報酬が大きいな。貰いすぎは良くないが、好意を金に変えるのもおかしいしな。どこかでランク下げるだろう。最初だけだよな。な?


「あら。ラーニャさんが動いたのね。安心していいわよ。ご主人様、お食事です」


「ロザンナの知り合い?」


「一方的に恩を受けただけよ。優しすぎる人なのにトップを維持してるわ。尊敬に値する人よ」


 うん。安心した。飯だ、飯。


 飯食ったら、ギルドに行こっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ