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 白けたのでお開き。


「なんて、させない。私だけ、お預けは、断る」


 ミーディイが本気出した。白けた気分をあれやこれやでその気にさせる。更にみんなも混ざって、俺が真っ白になるまで搾り尽くされた。パネェ。



  ○  ○  ○



 ギクシャクするかと思った翌日。特に問題なく旧ファースト領の首都へと進む。ネタがバレたので小太刀を護衛兵士さんに貸し出したりしてウルフやボアを爆散させている。


「これは凄いですね」


「ミスリル武器に付与はないのですか?」


「そんな代物があったら国が抱えますよ」


 ゲームでの一般的なエンチャントすらないのか? 一時的でも属性が付与できるだろうに。まあ、ミスリル自体が希少だ。エンチャントに耐えうるのはミスリル武器からだからな。失伝したか。


 あと思ったことは魔力操作が甘い。俺の小太刀がみるみる耐久値を減らす。色褪せるから分かるけど、魔力を込めすぎだ。時々、吸血しないと不安になる荒さだ。


 スキルによる魔力消費は武器を伝って放出されるので自覚が薄いだろうが、属性を纏わせた場合は一時的にでも魔力を武器に内包し負荷となる。スキルで属性ごと放出しても同じだ。スキルで放出しない通常攻撃だと痛みがひどい。うん。貸し出すの止めようかな。


「(あれ、いいのです?)」


「(知らんよ。あっちの裏の人の心情が全くわからん。無理強いしては無さそうだけど、ユーリナお嬢様を餌にはしてるよね。俺は救われてるバグ体質にまでかける温情はないよ)」


 締め切っていた馬車の窓が開き、熱い視線が飛んできてる。


「(熱い視線です。浮気ですか?)」


「(いや、あの空気読めない娘は勘弁です)」


 説得するにしても、自分が抱かれるという交渉条件を、奥さんを抱いてるときに言うか? 奥さんの目の前で「浮気しなさい! 既成事実も!」なんておかしいじゃん。それに飛び付いたらフィーリアに刺されるよ。


「(興味がありそうですねぇ)」


「(薙刀は不味いって!)」


 進行形で俺が危ないのでユーリナお嬢様には窓を閉めてほしい。



  ○  ○  ○



 旧ファースト領首都の手前の宿場町。明日には解放されるな。だが、諦めの悪いお嬢様が今日も来てる。


「私に魅力は無いですか?」


「魅力以前に奥さん達との営みに乱入しないでください」


 何故、混ざれると思ってるのだろうか? する前なら身嗜みも整えてテーブルで会話できるが、行為中ですよ。今日は鍵も閉めたのにな。


「質素な体ですが、どうぞ」


「部屋の外をその姿で歩くのは不味いでしょう。これから就く立場と女性としての尊厳は守りましょうね」


 自室からシーツ一枚で歩いてきたようだ。それを広げて俺に穢れない身体を見せてくる。うん、発情してる。あ、フィーリア、今はお話し中。


「ご主人様ぁ。寒いでしょうから抱きついておきますね♪」


 だいしゅきホールドされた。それでも引かないお嬢様。


「つ、次は、私に!」


「いや、順番も何も、抱かないって!」


 もう、どんどんと混沌を増して、お嬢様を観客に魅せ付ける奥さん達。お嬢様は合いの手のように「次こそ私です!」と、一歩迫ってくる。でも、間を遮るように奥さん達に包まれるので、一歩後退する。繰り返し。


 終わりは必然、俺が枯れた。


「うぅ。逞しいお姿が、可愛らしいお姿に」


「顔見て喋ろうか。ってか、本気で抱かれる気ないよね」


「その通りでございます」


 初老の執事、セバスさん登場。まあ、こうゆう手もあるだろうな。礼儀だろうか、女体を見ないように扉越しだ。


「ユーリナお嬢様は間接的には汚されましたな。これは、責任を取って貰いたいところでございます」


「その行動は俺を敵に回すぞ。強要するな」


「ならば、汚された事実のみを持ち帰りましょう。ユーリナお嬢様の思い人はドライ様であると」


「俺には貴族社会は知らんが、結婚相手が居なくなるんじゃないか?」


「それで十分なのです。未定の婚約候補。その程度の牽制があればユーリナお嬢様の治世が浸透する時間は稼げるでしょう」


 俺の立ち位置が不明だが、貴族社会には牽制できる程の一般人。一般人だよな? 旧ファースト領をユーリナお嬢様の色に染めるまで婿入りの話を断る口実なのね。飛び火しない?


「ドライ様の存在は、フォンベルズ新王が認め、オークションにて多大な資産を提供された王国の恩人であると浸透しております。特別役職枠がない新国であるため通じる手段であります」


 仕事は貴族してても肩書きは一般人。職業が証明するこの世界ならではの権力の使い方か。いま新生ルーク王国に特別役職枠が存在するのは「新国王」のみ。発言力が強いのだろう。


 ふむ。ハーベス王国となんちゃら王国にお高い鎧と盾を売ってあげたもんな。軍事力や防衛力とは簡単には売り買いできるものではないのに、虎の子の属性付きを手放したんだ。「攻めないでね。攻められたら協力して」って事なんだろう。


 俺のポジションは新生ルーク王国の一国民。間接的に国の物とも言える。国外流出を認めたんだから、表向きは友好関係になっただろう。安定した大国の庇護を二つも手に入れた。新国としては破格の庇護で、それをもたらした俺は特別待遇と。


「あー、もう。名だけ貸すからな。これでいいんだろ?」


「はい、今回の件で得たかった言質です。ありがとうございます」


「ほら。お嬢様も帰れ。未定の婚約候補で満足しとけ」


「ふぐぅ。ぐすん。ドライ様、いつでも股を開きますので、いつ如何なる時もご所望ください。理想は世継ぎが三人です。ぐすん。失礼しました」


 サッと執事は去った。ここがメイドさんなら付き添えるだろうに。一人で重たそうに扉を開いて出ていく。シーツで包んだだけの姿でな。


「あ゛ー。結局、微妙に巻き込まれた」


「良いのではないですか? 裏でファースト領を操れますよ」


「よくない! あのビッチは狙ってきます! 次々に要求するはずです! 許し難いですよ!」


「いや、こっちから攻める」


「ご主人様ぁ。まだ足りないのですかぁ?」


「フィーリアさんは薙刀がお気に入りね。って違うよ。あのユーリナお嬢様を仕事で忙殺させるんだよ。ちょいと、この世界の装備に不満があってね。バグ職の転職方法と違って小出しできる。借金と返済の地獄のサイクルを作ってやるのさ」


「小出しですか?」


「俺って失伝してる一般職の情報も知ってるぞ。そっちなら小出しできる」


「主人は凄いな!」


「ご主人様が存在したら、この世界はどう変わるのでしょうね」


「人間が、覇者になる。それほどは、想像できる」


 言い過ぎだね。でも、モンスターの中堅すら天災だと怯えなくても良くはなるだろうな。

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