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 ダンジョンを出て、昼に舞う夜の蝶の誘いを断り、ギルドへ。ダンジョン付近には出張所があるので、直ぐに換金可能だ。


「ゴブリン40匹ですか? 昨日も換金してたから、今日の分?」


「はい、何か?」


「いえ、溢れ出す兆候かと思いまして。特別な変化はありましたか?」


「人が少ないので索敵が楽ですね。あと、ゴブリンソードマンが2匹いました」


「40匹で2匹なら許容範囲ですね。過疎化が問題のようです。情報ありがとうございました。褒賞金の600ルークです」


 礼をして受け取り、ギルドを後に。その足で食堂で5ルーク定食に食らいつく。



  ○  ○  ○



「お金は十分ですね。ご主人様の服です!」


「いや、まあ、フィーリアも買っていいから……あー、どうスッかな」


「何か問題が? 奴隷は奴隷服にしろ、ですか?」


「いやな、三文字職業を視野にいれてるんだ。生産系。服が作れるかも? でも不確定だし、やっぱりちゃんと服を買うべきだろうな」


「説明をお願いします」


 バグ職「骨服師(ボーンパンテナー)」。「拳骨家」と「服飾師」と「術師」のバグ職業だ。VRMMORPG八百万のドロップにはモンスターの骨があるのだが、これが安くしか売れないので、先人が有効利用を考えて編み出したバグ職業。


 簡単に言えば、骨を布にしてしまうのだ。


 そのために原料となる「骨」の文字を持つ「拳骨家」を採用。「服飾師」の「服」によって加工前の布と加工後の服を定義する。「術師」の「師」は他にも同様の文字を持つ職業は存在するが、魔法で作るというコンセプトで採用された。


「変なバグ職を知ってますね。バグ体質の人は大概は職業の恩恵を諦めて、就けた職業があれば二文字で満足します。三文字までバグるリスクと明日の糧を天秤にかけると、レベル上げを諦めます」


「フィーリアで成功したらバグ体質の人と仲間組んでもいいかもね」


「難しいですよ。バグ体質はほぼ成功しません。ああ、人生にです。なので近くにいるなら、奴隷か、死体ですね」


 酷っ! フィーリアは万が一の可能性で人生過ごしてたのか。これは何としても三文字バグ職を成功させないとな。


 昼食後にショッピング。結果として互いに2着買うことにした。フィーリアの服は家を離れたときのもので、それ以前から使っていたので痛みが酷いそうだ。


「ここです。狙ってたのです」


 うーん。ワゴンセール? 山積みの服が所狭しと置いてある。どう探せと?


「フィーリア、自分のを先に探しな。これ、遭難できるぞ」


「いえ、ご主人様のも探します!」


 着せ替え人形にされた。下着は紐で結ぶトランクスタイプで、新品を。やはり古着でも下着は嫌煙されるらしい。ちゃんとあった。先に下着は着替えて、フィーリアのお薦めを延々と着替えた。


「んー、微妙ですが、妥協しましょう」


 許しが出たが、次はフィーリアの服だ。最初は、そう、最初は俺らしい感想が言えてた。服のバリエーションも豊富で言いやすかった。が、細かい差となると、どんどん、どんどん、と言葉に詰まる。


「ご主人様ぁ。生きてますかぁ?」


「……ごめんね。センスなくて」


「少しいじめ過ぎましたか。もう終わりです。会計しましょ」


 死にかけてるのに止めの値切り合戦。言い値が270ルークが193ルークで決着した。ああ、俺の新品の下着がな、少し高かったんだ。服は相場程度で落ち着いたんだがな。もう買い物、嫌。



  ○  ○  ○



 夕食を済ませ、定宿に帰ってきた。


「裏、お借りします。桶も借りますね」


「おう。好きにしな」


 井戸水で行水。フィーリアは一緒に洗濯もしている。濡れるためか、裸で洗濯するのはどうなの?


「無防備ですよ♪」


「くっ! 誰かが来たらと思うと、逃げるに逃げれない。とっても眼福で童貞に毒だ!」


 わざと裸で洗濯したな。くそう。


 物干しが無いので、宿の親父にロープを借りて室内干し。乾くかなぁ? しかし外干しする場所もないから仕方がないな。


「久し振りにしっかりと洗えました」


「乾くまで時間がいるな」


「仕方がないですね。ハンガーが借りれただけありがたいです」


 ゲームじゃ汚れなんて要素が無いから対応が分からん。まあ、服の数が増えれば対応は可能だろう。今日買った古着が2人とも1着残るのみ。それを着て寝る……よね?


「隠した方が色気があるそうですよ」


 何と? 直視すれば、その薄地のワンピース、透けてね? インナーがいる服じゃん。隠れているようで隠せてない! ラインからしてインナーは着ていない? 裸より目が離せない……だ……と!?


「さあ、ご主人様、寝ましょ♪」


 その笑顔からの記憶がない。いや、理性がヤバいと強制シャットダウンした。


「ご、ご主人様ぁ!」


 遠くでフィーリアの声が響いてる気がする。



  ○  ○  ○



 朝になってた。この世界、光源が乏しいのか夜の灯りが部屋に1つしかない。フィーリアが何気に使っているランプだが、炎ではないな。それも貴重なのか夜の終わりは早く、朝も日が昇ってからだ。


 こっちに来てから早寝早起き。健康的な生活? 娯楽もないのに夜更かしする理由もないしな。娯楽かぁ。やっぱ、酒か、女か、って感じだろうか? その娯楽候補は。


「ご主人様のへたれぇ」


 と、俺が起きたのを察して寝言風に耳元で呟く。昨日も童貞を守ったらしい。そんなフィーリアを無視して、横になったまま考える。


 俺とフィーリアのレベルは互いに6。この辺からレベル10までが一気に遠く感じる。ゴブリンのみだとソロで250程度だったか。ペアだから倍の500ちょいだな。


 ダンジョンの奥に行けば経験値も上がるからもっと早い筈だが、聞くに褒賞金は一律で15ルーク。儲けが変わらないのだ。危険度を上げてレベルを早く上げるか、ゆっくりと堅実にレベル上げか。


「どう思う?」


「うー、動揺が減ってきてますぅ。ここは元気なのになぁ」


「乙女が触るな! 気持ちいいから止めて! で、危険度上げる?」


「これ、ビクンってする♪ あ、怒らないで! そうですね、ゴブリンで十分というか、防具もなしにゴブリンと戦ってる時点で十分に危険ですよ」


 触る手を止めて真面目に答えてくれた。防具か。ゲームでは動きを制限するような不都合は無いが、こっちだと普通に着れば着るほど動き辛い。防具を買う金もない。慣れない鎧より、堅実に数こなすか。


「三文字バグ職までゴブリンだな」


「ご主人様がバグ職業で固定する理由が分かりませんが、ゴブリンは賛成です。今のご主人様なら安定収入です」


「安定ね。よし、今日もゴブリン行くか」


「ここ、苦しそうですよ。あ、また♪」


「やーめーてー! 無駄撃ちで下着が汚れるから!」


 朝の攻防から敗走して、ベッドから逃げ出す。アブね。暴発するところだった。さて、今日も頑張るか。

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