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宮坂とバイト②

「仕事の説明な」

 

「まず、入ってきた相手の接客。空いている席に入れたら次はオーダーを聞いて、注文表に書いてここに貼り、ご飯を指定の席に配る。」

 

「とりあえずこれくらいだ」

 

「面倒臭いですね」

 

「つべこべ言わず、ほら行ってこい」

 

 丁度来店した客を嫌々接客しに行った宮坂。心配で姿を目で追ったがちゃんと接客が出来ているようなので俺も自分のすべきことを成す。

 


 店内は数人の人が座れるボックス席が十数席設けられており、内装の壁は明るい色である白が採用されている。所々、色彩や自然を配慮して植物が置かれている、一般的なファミレスの内装である。

 


 毎時ホールスタッフは四、五人の配属されていて、シェフも同様な人数の配置である。

 流れは良く、料理も早く回せご飯も美味しいと三点盛りで巷でも人気度が高いようである。

 

 バイトとは言え、知名度が高いのは嬉しい身である。

 

 なんやこんやで一時間が経過して嫌々していた宮坂の姿が心配になり目を向けるが、態度が真剣なものになっていたものの、生憎クレーマー客に当たって困惑している状態である。

 

 ああ、ヘルプ入るしかないな。

 

 一歩を歩を出すと、肩に手を添えられるように置かれる。

 

「いい、私が行くわ」

 

 橘さんが俺の代わりにすぐに宮坂のヘルプに入ってくれる。いつもこんな感じである。

 ルックスも適切な対応もいい為か大体の人は引いてくれる。

 


 社員からは爆弾処理班と呼ばれる異名の持ち主である。

 


 宮坂の背後から割り込んで接客に入るその姿はまるで英雄のようだった。

 役を果たした宮坂は嫌な表情を浮かべながらこちらに歩いてくる。

 

「あんな客いるんですね」

 

「まあ、たまにな」

 

「面倒臭いですね」

 

「そうだな」

 

 今回の面倒臭いのは同感できた。ここは希望シフト制であり、俺のシフトは今日の五時から七時までの二時間。さすがに遅くなり過ぎると親にも心配をかけ補導ということもなりかねん。

 


 毎週、火曜、木曜、土曜の週三のシフトと稀のピーク時のヘルプに入るくらいの仕事量。あまり多くはなくもう習慣化しているので今ではこの状況が普通である。

 


 宮坂のシフトも俺と全く同じであった。社長は優しく自分の希望をしっかりと拾ってくれるので宮坂も俺と同じ時間の方が気兼ねせずに仕事ができるという観点から同時間にシフトを入れたのであろう。

 


 なんか宮坂を見ているとバイトを初めた時の俺を思い出す。

 というか、俺の残像が宮坂と照らし合って無理矢理回顧されるという感じ。

 


 昔は橘さんが俺の監視役でどじをする俺のカバーをいつもしてくれていた。

 いつからか話が合うようになってから上司、部下の関係ではなく歳上の友達と呼べるまで仲が良くなった。

 

 橘さんのシフトは俺より一時間早い時間から七時までのハードスケジュールだが、難なくこなしている。

 

 シェフとホールスタッフに一言挨拶してスタッフルームへと戻る。

 

「あー今日も疲れたわ」

 

 机に俯せになりながら疲弊の声を発する橘さん。

 それに微笑みを返しながら返答する。

 

「今日も爆弾処理お疲れ様です」

 

「ほんとよ」

 

「いつもあんな感じなんですか?」

 

 突如、宮坂に話しかけられたことに驚愕して目を丸くしたが次の瞬間にはいつも通りの顔立ちに変化している。

 

「うーん、前回よりは少なくなったかな」

 

「へぇーそうなんですか」

 

「てか、二人どういう関係?」

 

 急に話題を変え、目を細めて疑心の表情を浮かべている。生半端な嘘じゃ見抜かれてしまうのは明白である。

 

 いや、嘘などないのだが、。

 

「ただの友達ですよ」

 

 その場で出せる真剣な声を腹の奥から発する。その声に圧倒されて諦めたのか詮索はもうしてこなかった。

 

 いや実際ほんとに友達なのだが、

 疑われる俺、可哀想じゃね?いや別に美少女だから勘違いされてもいいのだが

 


 お互い着替えをする為に男性ルームと女性ルームに分かれて着替える。

 どうせ着替えはまた遅いだろうと踏んで少しネット小説を漁る。

 


 最新話チェックを終わるともう五分経過していた。

 荷物をまとめて学校の鞄を肩にかけて部屋から退出する。

 

 丁度いいタイミングで退出直後に宮坂と橘さんも部屋から出てきた。

 何故かもう親しげに会話している。橘さんのニヤついた表情が含まれた視線を向けられる。

 

 一体何の話をしたんだ。


 聞いたところでガールズトークよなどと誤魔化されてしまうだけなので聞くのはよしておこう。

 

 べ、別に気にしてなんかいないんだからねっ。

 

「じゃあ、私はこれで。か弱い女の子家まで送ってあげなよ」

 

 横腹に肘をつんつんと入れられ指摘される。こくりと頷くと橘さんは徒歩で帰宅していった。

 

 ここら辺の近くとは聞いた事あるのだが、家の位置までは知らない。

 

 俺もストーカーのような行為は好んでいないのでしては無いのだが、

 

「家まで送るぞ」

 

「いいですよ、そんな」

 

「なんだ俺じゃご不満か」

 

「じゃあ、お願いします」

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