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異世界転移、トラックの運転手視点。

作者: 青

『ヤァ、異世界帰りのお兄さんだ。お兄さんが似合わないと思えば男でも何でもよろしい。


 まあ、チートとかいうものは一切持ってないがな。


 今は戸籍がなくても行為で借りられるアパートで暮らしている。ボロい、というのは借りている身としては無礼極まることだが、まあ、ボロいと形容して良いだろう。


 それにしてもご近所の付き合いがないというのは良いものだ。


 仕事?あぁ、トラックの運転手をしている。


 なにぶん戸籍がないもので、大した仕事には就けないし、ケータイ?というのも持っていない。


 異世界帰りの勇者様が現実世界でチートを使って何とやら、とかいうのを想像したか?残念だったな?そんなに世の中は甘くは無い。本屋でそんな感じのライトノベル?とかいうのはチラッと拝見したが、現実にあるなら見てみたいものだ。むしろ拝ませて欲しいくらいだ。帰ってきてまでご苦労。とな。


 ん?宅配業者も立派な仕事だ?そもそも戸籍がないのになぜトラックがあるのか、だと?


 ハハ、笑わせる。

 



 俺は宅配をしている。



 ただし届けるのは人で、宛先は異世界だ。



 本の中では異世界に行く方法は沢山有るらしいな?


 刺される。落ちる。気がついたら。


 話は変わっていない。

 俺が担当するのはトラックに撥ねられて、というやつだ。


 考えてもみろ、転移する人間を撥ね飛ばした運転手について誰も言及しないのは何故だ?そもそも誰だ、そいつは?



 俺だ。


 天の声というのか?そんなのがフッと来て、「今日@@の夜中に交差点に現れる青年」というふうな情報が頭にインプットされる、


 トラックで向かえば何となく標的がどれか分かる。


 車でこう、パッ。 とな。やる。


 そうすると撥ねた奴はもうこの世には跡形も、だ。


 帰ってくれば家のドアの内側に札束が、

 

 という塩梅だ。

 


 金の出元?質量保存?


 ハハ、笑わせる。



 神とかになってみれば分かるんじゃないか?


 この仕事をやるにあたって、足がついては困るからな。戸籍が無くて良かった。


 まあ、他の不審点が何故明るみに出ないのかは俺の知る所では無い。





 それにしてもアレだな、世の中の異世界転移とかいう奴はそんなに広く、よく知られている物なのか?


 いや、書店で読んだのは2、3冊だからな。どうなのか、と。


 

 どいつもこいつも「自分はこれで救われる、新しい世界万歳!」みたいな顔で撥ねられるのだ。


 実際は裸一つで一興に飛ばされて終わりだがな?


 チート?イベント?親切な人間?



 ハハ、笑わせる。


 

 現実に起こらないことが何故異世界では当然の様に起こると思えるのだろうな?


 理解に苦しむ。


 相対しているのは自分とたいした違いも無い生き物なのにな?

 

 いや、そういう親切だったり何だりする環境で育ってきたのか?



 ハハハ、それこそ笑わせる。


 

 俺は2回目など死んでも御免だがな。


 死んだら転移では無く転生だから1回目になるのだったか?


 本ではな。




 もしくは異常な人間が増える世の中にでもなったか?


 0からスタートする、ということがどれだけ大変か想像できない奴ほど親の恩恵とか何とかを有難いとも何とも思わずに異世界などに憧れるのだからな?


 

 尤も、今更どの面下げて親に顔など見せに行くのか?という話だーーー』






 男は最近買ったメモ帳とペンを床に置く。

 仕事の時間であるらしい。



『あぁ、別に異世界転移の悪い点を挙げたかった訳では無い。

 

 大事な大事な商売道具様がいなくなってしまったりしたら大変だからな。


 まぁ、こんな話を読まされた処で異世界への夢とか希望とか何とかが消える筈も無い。




 ーーーー強いて云うなら。


 コンクリって固いな。疲れる。』



 異世界転移の良かった点と云えば、そんなものだ。




 

終わり。

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