序盤
「初メマシテ、捺様。 夕貴様。 私ハー……ソウデスネ、自称神トデモ言ッテオキマスネ。」
機械音声が神を名乗った。
考えられるだろうか。
始めて世界の外で何かの声を聞いたのだ。
これまで数十、数百と言う世界と繰り返される中で始めての出来事だったのだ。
呆けていると自称神がまた話始める。
「キット驚カレテイルト思イマス。 デスガ、コノ声ハ実際ニオ二人ニ届イテイルノデス。」
「お姉ちゃん!! 神様だって!!! 私達に何か用なのかな!!! もしかしてチートスキルとか貰えたりするんじゃ!!!?」
自称神を無視して興奮した捺が私に話しかけてくる。
自称神の話を詳しく聞きたいのだがな……。
「ああ、そうだね。 で? 自称神様は私達に何か様なのかな?」
信用が出来ない相手が世界の外側にも居る事実が私の内側を塗り上げる。
まず姿が見えない。
これは話し合いなのか?
一方的な命令なのではないか?
そんな言葉が心を埋め尽くす。
夕貴からすれば自分をこの状況に追い込んだ張本人の可能性がある。
いや、ほぼ間違いないと思って問いかけた。
「イイエ、用ハ得ニアリマセン。 タダヤット立チ向カッタ事ガ嬉シク話シカケテシマッタノデス。」
タチムカウ?
立ち向かう?
意味が分からない。
夕貴は混乱した。
自分は何時も通りに捺の安全を優先して捺が望む事を優先しただけだ。
それだけで喜ばれる?
自分の当たり前を喜ばれる事が本当に意味が分からない夕貴。
「正直に言います。 現状の貴方は気味が悪いです。 神様なら何故違う世界へと私達を転移し続けるのですか?」
答え等は帰って来ないだろうと夕貴は思っていた。
だが
「ソノ行為ガ貴方達ヘノ試練であり旅ダカラデス。」
驚いた事に返答があったのだ。
旅?
これが?
この拷問に等しい行為が?
呪いと言い換えても良い行為が試練であり旅?
夕貴は怒っていた。
そして怒る事しか出来ない自分が分かり恥ずかしいとも思った。
だけどその後の言葉で怒りが収まる。
「ソシテ貴方達ガ希望ナノデス。」
3度目だ。
本当に意味が分からない。
希望?
絶望でしかないこれが?
「アア、今回は時間ガ来テシマイマシタ。 ドウカ、コレカラノ旅で折レル事ノナイ様ニ。」
最後の言葉は祈る様な。
まるで二人の無事を願う様な言葉で自称神の声は聞こえなくなったのだ。