あなたを好きでいた僕へ
あなたを好きでいた僕へ
あなたと出会った頃
季節は春で、ゆったりと時間が流れていましたね
あなたは秋から冬へと移り変わる季節が好きで
僕はというと
冬から春へと移り変わる季節が好きでした
だから、秋の季節には
あなたの行きたいところを優先して
そして
春へと向かう季節の中では
僕の行きたいところをあなたは優先してくれましたね
あなたと出会って何ヶ月かして
偶然に
あなたの降りるバス停の3つ先が僕の降りるバス停であったことに
とても驚いたこともあったね
あなたと仲良くなって
同じバスで帰ったときに
僕はあなたと同じバス停で降りては
そのあと少しでも二人だけの会話ができることに
幸せを感じていました
今日、僕はこの街に久しぶりに訪れています
あのバス停も昔と変わらぬ同じ場所にあって
ほっとしました
残念だったのは、周りの景色がずいぶんと変わってしまったこと
僕は車で追い越しながら
ふと思うことがあって・・・
あのとき、もしあなたの家まで車で送りに行くことがあったのなら
もし、あなたの家の近くまで車で迎えにくることがあったのなら
もっとあなたとの会話もできて
僕は多少、大胆になって
あのとき言えなかったことも言えたんだろうなと
そして、
あなたの言えなかったことも言えたのかもしれないね
たしかなことは、今感じているこの風は、今の風であること
だから今となっては、ずいぶん過去のこと
僕が好きでいたあなたへ
あなたは今、何をしていますか
あなたの夢だった小さな庭で、太陽に届くような花の数々を
育てていますか
いつもと変わらぬ素敵な笑顔で周りの人たちを安心させていますか
少し勝気な性格はそのままですか
洗い物が苦手なところを、少しは直すことができましたか
あなたを好きでいた僕へ
あれから、あなたに似た女性をどこか求めていませんか
たとえ、あなたに似ている女性にめぐり逢えたとしても
それは残念ながらあなたに似た女性であって
あなたではないのです
昔、好きでいたあなたの存在をこれからも認めることが
必要でしょうか
あなたを好きでいた僕へ
心配しなくても
昔、好きでいたあなたは
きっと幸せに暮らしているはずです