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村長は魔王様!  作者: マカロニ男爵
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魔王様と半魔の子供

「で?、何しに来たのよリヨン…」

「ん?、ああ、そうだった!」


 リヨンがあまりに魔王に似つかわしくないので混乱してしまった少年に、

 リヨンは如何に自分が真の魔王であるか説いていたのだが…


 曰く、真の魔王たる者は福祉厚生の為に負傷者を助けるのは当然だと。

 曰く、真の魔王たる者が当然の行為をわざわざ喧伝するなど恥であると。

 曰く、真の魔王だから身長だってまだ伸びるさ、もう300歳超えてるけど150cm超えは狙える筈だと。

 曰く、真の魔王なのに時々聖女扱いされるのはおかしい、これは組織の陰謀なのだと。


 ツッコミどころ満載な上に、どんどん話がおかしな方向に行くのに見かねたサシャが本題を切り出してくれた。


 因みにどんな組織なのかはリヨンすら分かっていない架空の存在であるし、

 半魔は不老ではあるが、成長期は人間と同じ長さなので身長が伸びることも絶望的だ。


「え?『開墾が上手くいかないから農業ができる人材が欲しい』って…リヨンが!?、むしろそれは得意分野だった筈じゃない…」

「ですよね、リヨンさんってサシャさんと同じあの美食街道(グルメロード)のリーダーだったリヨンさんですよね?、このグラムヘルムの食糧危機を解決した『レオンハルト式即席開墾法』の発案者の…」


 美食街道(グルメロード)とはリヨンが人界で組んでいた冒険者パーティーの名前である。


 冒険者パーティーとしては変な…むしろ飲食街に付きそうな名前なのは何故か上げた功績が食に関わる物ばかりで、彼等の足跡にそって新しい食文化が生まれていった事からそう呼ばれ、本人達は特にパーティー名を名乗ってなかったのでそのまま定着してしまったからだ。


『レオンハルト式即席開墾法』もそんな功績の内の一つで、兎に角、安く早く農業に必要な最低限の開拓を可能とした開墾法であり、開拓後しばらくの間は段階的に水路などの補強工事をする必要があるなど欠点はあるものの、当時、大量の難民を抱えていたこの国を食糧危機から救う手立てとなったのだ。


 農業においては第一人者。

 そんな冒険者としてはどうかと思う実績を残してるリヨンが開墾をしくじるのは信じられないことだった。


「私は農民を使うことには長けていたが、畑を耕すと言う基本的な作業は出来ない…そして、魔界には人界基準で農民と呼べるレベルに達してる者など一人も居ないのだ…」

「そう言えばリヨン自身がクワを持って開墾してた訳じゃなかったわね」

「自分でクワを持って畑を耕してたら、それはもう冒険者じゃなくてただの農家ですしね」


 そもそも美食街道(グルメロード)の功績自体が既に冒険者らしくはないと思うかも知れないが

 実の所、学者などが自身の研究の為にこの世界に身を投じる事は結構多い。


 理由として二つある、学者の誰しもが研究の為に冒険者を雇い続けられるほど予算を貰える訳ではないし、冒険者を介してではなく、現地に赴き自身の目で、耳で直接調べたほうが成果が上がる事が一つ。


 もう一つは、大学などの教育機関は教会の影響力が非常に強いので、研究内容や学説が教義に反してる場合、その研究は潰されてしまう、大学の中での研究では神の教えに背けないからだ。


 今はこの場にはいない美食街道(グルメロード)のメンバーの一人であるレム・スーミアも、教会に研究を潰され学士資格まで剥奪されたため冒険者となって研究を続けた学者の一人である。


 因みに潰された学説が『地動説』だったため、メンバーの最後の一人にして異世界転生者であるトール・レオンハルトに『ガリレオちゃん』というあだ名を付けられたが、この世界の人間がガリレオ・ガリレイを知っている筈がないので定着することはなかった。


「と言う訳で、こっちに来てくれそうな農業経験者を探しているんだが心当たりはないか?」

「農家継ぐのが嫌で冒険者になった子とかは居るけど、そんな子が魔界に農業しに行くわけないわよねぇ」

「ではコボルトならどうでしょう?、農業が出来そうなコボルトが出没した情報とか、あ、この際ですからコボルトの情報だったらなんでも良いです、全部ください」

「ペイロンさんは相変わらずブレないわね、でも農業が出来そうなコボルトって只の有望な労働力じゃない、そんなの討伐する理由もないし冒険者ギルドに報告されないわよ」

「それもそうだな、40年も冒険者やってたがそんな情報見たことないし、冒険者としてどうすれば良いかも分からん」


 いくら色々な情報を扱う冒険者ギルドとは言っても、流石にそんな分野の情報は中々ない。

 どちらかと言えば職業斡旋所向けの情報であるが、この世界に残念ながらハローワークはなかった。


「あ、あの…心当たり、あります。」

「ええっ!?」

 そんな話の中、エリック少年がおずおずと手を挙げてそう言う。


「ふむ。少年はコボルトの情報に心当たりがあると」

「あ、いえ、コボルトではないんですが…」

「出直してこい!」

「ええっ!?、ご、ごめんなさい!?」

「いやいや、出直さなくて良いから、ちょっと黙ってろこの駄龍(コボキチ)!」

「あ!、農業が出来る保証はないですけどコボルトの情報もありました!、僕が受けてる依頼のターゲットのゴブリン達に虐められてたコボルトが居ました!」

「姫様、私は少々ゴブリンどもを焼き尽くしに出かけてきます」

「いや、少年も無理にコボルト情報出さなくて良いからね!?、あと其処の駄古龍(エルダードラゴン)、ゴブリン如きにお前が出向いたら色々大惨事だから辞めろ!」

「う~ん、依頼書の報告にはその情報なかったわね、初心者向けの依頼とは言えもう少しちゃんと調査するようにギルドに行っておかなきゃ…で、心当たりってあの子の事かしら?」

「は、はい…」


 エリック少年の心当たりとは、彼が無理をしてでも早くお金を貯めようとしていた理由でもある半魔の少女の事だった。


 半魔はリヨンの様に人間と最上級の魔族である魔人との間に生まれる子供であるが、

 それ以外にも人間同士の子供が偶発的に半魔として生まれてくる事がある。

 所謂、取り替え子(チェンジリング)と呼ばれるこの現象は人界では不吉の象徴として扱われる。

 理由も分からず寿命が全然違う子供が生まれてくるのだから不気味に思われるのは仕方がなく、

 人界では半魔は疎んじられ、迫害されることも少なくはない。


 少年の故郷では不作が続き、神父はその原因は半魔の子にあると説きその少女は迫害にあっていた。


 無論、そんな話に根拠はない。

 半魔の存在が呪いの様に不作を招くのなら少女が生まれた時からずっと不作になる筈だがそんな事実はなく、むしろ生まれた年は豊作だった。


 ただ、近年続く不作に対する不安と恐怖をぶつけられる生贄(スケープゴート)として、半魔であり身寄りもない農奴、社会的弱者である少女の存在が都合が良かっただけなのだ。


 少年はそんな少女を哀れに思い、せめて故郷から外へ連れ出そうとしたが農奴は領主の保有物であり、移転の自由はない。


 それならばと領主に頼み込んだ結果、「不作の元凶ならば追放する事も考えないわけではないが、我が財産であるには変わりはない相応の代価を払ってもらおう」との返答を得た。


 早く少女を連れ出さなければ、彼女は村の者に殺されてしまうかもしれない…そう考えてしまったから、少年は資金集めに焦っていたのだ。


「同じ半魔のリヨンさんならあの子を迫害する事もないでしょうし、あの子は昔から周囲に仕事を押し付けられ、その全ての仕事を覚えて来た子なので、農業に関してはほぼ全ての作業をこなす事が出来ます…どうでしょうか?」


 それは確かに「人界に居場所がない農業が出来る者」と言う条件に当てはまる理想的な人材であった。

前半部分の「曰く、~」は2話で書こうとしたら想像以上にグダってカットした内容だったりします。

話の流れがすぐどっかに行ってしまうのは悩みものです。

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