プロローグ
私は神々によって建立された神界の第一中学校に通う女神である。中学生とはいっても、人間でいうところの80年ほど生きているので、人生経験は豊富だと思う。
そして、周囲の者には申し訳ないが、学校一の美少女であると自負している。人形のように整った顔、艶のある長い黒髪、控えめな胸囲、全てが私のチャームポイントだ。
名前を天彩萌命と言うが、早口言葉のようになるので、彩萌と呼んで構わない。
私の容姿と、明晰な頭脳は両親譲りである。
母親は、かの有名な太陽の神、天照大神の末裔である。あまりにも仕事熱心なので、地球の気温が年々上昇している。趣味はアラサー女子を男"日照り"にして観察することだ。
父親は貧乏神の家系である。ご先祖様と同じように、父はいつも押入れで眠っている。神界でも有能だと評判の父で、私の誇りだ。スマホアプリのガチャで外れを引かせる仕事をしているので、出会ったときにはよろしく頼む。
妙な組み合わせの夫婦だと思われるかもしれないが、母のご先祖様には岩戸に引きこもったという伝承が残っている。きっとどこか、父と通じるものがあったのだろう。
当の私は修行中の身だが、とある職場の業務があまりにも忙しいらしく、社会経験も兼ねて手助けに向かうことになった。学校でも優秀な私に、白羽の矢が立ったのである。
なんでも、人間が創作したアニメや漫画のキャラクターの魂を、天国へと導く仕事のようだ。
創作のキャラクターに魂があるのか、とは野暮な質問だ。モノに魂が宿ることなど、珍しくはないからだ。
髪の毛が伸びる日本人形の話を聞いたことはないだろうか。あれはまさに、思念によってモノに魂が宿った最たる例である。嘘をつくと鼻が伸びる、デク人形の『ピノキオ』もそうだ。人間や動物の形をしたモノには、特に魂が宿りやすい。アニメのキャラにも同じことが言える。
そして、彼らの生命も永遠ではない。肉体的な痛みを感じない彼らでも、人々に忘れ去られ、情熱を注がれなくなったとき、その一生を終えるのである。その魂は人間たちのそれと同じように、天へと昇ってくる。
さて、前置きはこれくらいにしよう。中学校の授業を休む代わりに、レポートを提出する必要があるので、ここに記すことにする。
初投稿です。少しずつ執筆します。