表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雨の日に……

雨の日のドアの閉まる音

作者: 宵楢萎茶菓

 雨はまだ降っている。相当な豪雨だ。あの馬鹿はさすがに家に帰っただろうか。雷が鳴り出した。

 まあ、追ってくる音は十秒以上後だから、大丈夫だろう。






 でも、私は。









 自他共に完璧を誇る私は、











 全然、大丈夫なんかじゃない。






 雨の打ち付ける窓よりも歪むこの視界は一体何だというのか。






 何故こうなった?
























 手の中で妹は笑っている。

 硬直して体を上手く動かせないようなのに、非常に表情豊かに、私が最初に望んだように人間らしい表情に富んでいる。けれど、私の全く望んでいない言葉を投げ掛けてくる。




 天才たる私が、本来受けるはずもないであろう、








 満面の嘲笑が、そこにある。
















 愛しい人形(いもうと)の首を絞め上げる手が震えるのは、力が入っているからじゃない。




 酷く、恐ろしいのだ。







 そんなので、死ぬと思っているの?









 そう言う人形(いもうと)の表情は皮肉にもこの上なく人間らしく、




 残酷にも、この上なく人形らしかった。
















 人形は嘲笑(わら)うのをやめようとしない。

 今まで、(わたし)に従順で、純真無垢だった人形(いもうと)の姿ではない。






 こんな(にんぎょう)、知らない。
















 凍りついた刹那(とき)の中で、雨音だけが不躾に窓を、屋根を、ドアを、無遠慮にノックし続ける。









 地獄のような沈黙。

 地獄のような騒音。






 ぴかり、とまた雷光が瞬く。ホラー映画で出てきてもおかしくないような、貼りついた人形の嘲笑(えがお)が、鮮明な陰影を得る。


 目に、私が[妹]に求めていた[光]など、一切宿っていない。




 人形は語る。






 ねぇ? お姉ちゃんが願ったんでしょ? わたしが[永遠に]あなたの[妹]であることを。

 だから、わたしは不老で──不死なんでしょ?


 お姉ちゃん、[人形(わたし)]の首をへし折って、[人間(ふかんぜんないもうと)]が死んだら、矛盾するよね? お姉ちゃんは[人形(わたし)]に[永遠の妹(ふろうふし)]であることを思っていたのに、その(わたし)を殺そうとしている。死んでほしいと願っている。

 [永久不変の妹(ふろうふしのこ)]を求めたのに、[死ね]って、お姉ちゃんはわたしを殺すんだね。

 とんだ矛盾だよ。ちゃんちゃらおかしいっていうの?















 さあ、








 人形の無機質な嘲笑が唱える。

 雨音が掻き消せないほど、高らかに。

















 こんなお伽噺(ものがたり)、終わらせればいいじゃない。人形のわたし(いもうと)が必要ないなら。






 ほら、玄関のドアみたいに簡単に終われる(しめられる)でしょう?









 直後、ぱたりとした音は、




 果たして何の音だったのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これ、晴れバージョンでもけっこう怖いなあと思いました。
2016/10/12 12:49 退会済み
管理
[一言] 怖いですね! 雨が効果的に使われてると思います。 姉妹もそうですけど、親子でもありますよね。子供を人形扱いする親はいやですねっ。
2016/10/12 12:48 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ