Ⅳ
「月を返して貰いに?
その台詞を言うのは儂の方だ」
黒の竜が口を開いて話すだけで――
熱気が少年の前髪をチリチリと焦がしていく。
それでも少年は退くことなく。
ただただ竜を睨みつけていた。
「“太陽”と手を組んで、儂から月を奪いおって」
そう忌々しげに吐き出された言葉が、少年の耳に止まる。
…………
「……今、なんと言った?」
――月を奪われた?
――“太陽”と手を組んで?
「あの“月の蜜”を口にして以来――
それ以外の物は、とても不味くて食べられたものじゃなくなった」
――黒の竜の虚言ということもある。
だが、人ひとり襲うのに、いちいちそんな嘘をつくだろうか。
“太陽”というのが、空に浮かび続けているそれなのか、
それとも別の何かを意味しているのか。
少年には判断がつかないからこそ――
黒の竜の話をもっと聞こうと、そう思えたのだった。
「もともと、食事を必要としていなかったが……。
どうしても、減るものは減る。空腹になるとイライラしてしまう。
これはもう――」
――呪いと言ってもいいぐらいだ。
~『黒の竜と月の蜜』~




