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竜記伝~その竜たちは晦夜(かいや)に吼えて~  作者: Win-CL
黒の竜と月の蜜

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21/63

 月と竜との間に契約が交わされたことによって

 平和がもたされたと世界中の人々は喜んだ。


 しかし、その喜びも永遠には続かなかった。

 月はある時から、この世界に顔を出さなくなってしまう。


 黒の竜が、月の蜜を誰にも奪われないよう隠してしまったと考える者もいる。

 はたまた、月が耐え切れなくなり、人間を見捨てて逃げたとも。


 ――今、この世界では。

 月が出なくなったため、太陽が一日中、空に浮かんでいる。


 当然、地上に夜は訪れなくなった。


 常に照りつける日光の熱さのため、

 動物たちが生きてゆくには、厳しすぎる世界になってしまった。


 更に人々にとって悪いことは続く。

 月が表れなくなった今、黒の竜が再び人を襲い始めたのだ。


 そして暮れることも、明けることのない世界で――

 黒の竜と人は、今も争いあっていた。


                         ~『黒の竜と月の蜜』~

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