過去より過去
二話
突如、目の前に「転校生」の擬人化したような美少女が僕の前に現れた。真っ黒な髪は織物の糸のような繊細さがよくわかった。興味はないと言ったが興味しかない。そんな女の子、紙谷雫だ。雫の名にふさわしくない、一本芯が通ってるように思えた。僕の推測だけど。彼女を小説っぽく紹介していると、僕の名前を呼んだ女の子が寄ってくる。もう放課後なのかよしゃ。僕は、まったく記憶にないわけじゃない。でも、いたかなぐらいだった。やっぱ記憶にない。前言撤回しよう。
ふと、目を横にやると近くまで来ていた紙谷はゆっくりと口を開いた「久しぶり。会いたかったよ。ずっーーと前からね。」そう言うと、朝、登校する時にみた満面の桜を思い出した。似て非になるものをこのことかと思う。さて、なんて返そうか。忘れていたら失礼じゃないかと思ったが素直に返そう「ごめん、紙谷さん。どこかて会ったかな。」「しょうがないよ。過去のことだし、色々あったしね・・・。」僕には影を落としているように見えた。一枚だけ散りゆらゆら漂う桜のように。
「色々ってなんだ。」疑問をぶつけた。「私のこと思い出せたら教えてあげる」「思い出せる気がしないが、努力する」「だめ。思い出して。待たせたの君なんだから」さっきからやはり影を落とす、僕はこの子となにかあったのか?疑問が隠せない。「僕と君の関係はなんだ。それだけ教えてくれ。」すると、彼女は髪を揺らしながらいった。「前世の恋人よ。」それだけを言い残し、彼女はすぐさま帰って行った。
ふああ、眠い眠すぎる。一睡もしないで登校など初めてだが、こんなに辛いとは思いもしなかった。昨日の紙谷の言葉を一晩中考えてた。「前世の恋人だ」なんて急に言われても「はい、そうですか」とはいくわけがない。
でも、嘘をついているようには見えたかった。まっすぐな目をしていたから。または、俺が騙されやすく、彼女が実力派女優ってことかな。微妙だなそれは。
「うわあ。すごいアクビ。どうしたの。」柚花がチャームポイントの八重歯を主張してるぐらいの笑顔で聞いてきた。そのまま続けて「もしかして、昨日のことでしょ。」あと、昨日は先帰ってごめんねと話した。「すごい正解。俺のことなんでも分かってそうだな」「やっぱりね!分からないことの方が多いよ。それになんでも分かってたら・・・。」みるみるうちにパプリカになる。いや、苺だった。「なんでそんなに顔が赤いんだ。」問うと「えいくんは、私のこと分からなすぎだよね。」「分かるように、ずっとそばにいるか」パプリカから唐辛子になった。「やっぱ分かってないよ!!ところで、何に悩んでたの?」「いや、大丈夫だ。関係ないけど前世の恋人って言われたらどうする」伏せておいた。
すると、彼女の目が次第に森奥のようになり「前世の恋人・・・。」とつぶやくとと柚花は道いっぱいの桜の花びらに倒れた。