おうちに帰ろう
お兄ちゃんはじっと私を見つめていたけれど、何かに気づいたように瞬きひとつして小さく笑った。
「子供相手に何を言ってんだろうね。……………はなちゃん、話を聞いてくれてありがとう」
私は首を横に振る。
お兄ちゃんは私の頭を優しく撫でた後、立ち上がった。
「遅くなったね。はなちゃん、送っていくよ」
お兄ちゃんが手を差し伸ばしてくれる。
私はまた首を横に振って立ち上がり、膝の上のジャケットを返した。
「本当に大丈夫?怒られない?」
ジャケットを受け取りながら、一言も声をしゃべらない私を心配そうに見るお兄ちゃんに笑顔でうなづいた。
「…そう。じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
もう一度うなづいて、私はお兄ちゃんに背を向けて歩き出した。
公園の出口まできて振り返ると、お兄ちゃんがまだ心配そうにこっちを見ている。
「お兄ちゃん…またねっ」
やっと、お兄ちゃんが笑顔になった。
そして
私は真っすぐに帰る。
自分の家へと。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
大好きだよ。
お人形さんみたいなんて、言ってゴメンね。
だけど、本当は違うんだよ。
お兄ちゃんは色んな顔を持ってるの。
それは宝物なの。
うまく言えなくてゴメンね。
窓に映る自分の顔が見えなくなった頃、私は家にたどり着いた
「ただいま」