はな③
あれから。
お兄ちゃんとは【お友だち】になった。
もちろん、小学生の私と高校生のお兄ちゃんが一緒に遊ぶことはほとんど出来なかったけれど。
結局いつもと同じように、私がお兄ちゃんの帰りを待っていて、少しの時間だけ一緒に歩いておしゃべりする。
それでも、
『はなちゃん』
と、お兄ちゃんが笑顔で呼んでくれるだけでよかった。
だけど、私があやちゃんと公園で遊んでいた日曜日。
今度は、通り掛かったお兄ちゃんに私が気づいた。
お兄ちゃんはおじさんと二人で歩いていて、最初に会った時のようにお人形さんのような顔をしていた。
おじさんが何か一生懸命話している横で、お兄ちゃんは表情が変わらない。
近づいたけど足が止まった私に気づいて、お兄ちゃんの視線がこちらにむいた。
確かに私と目があったのに、お兄ちゃんは気づかなかったように、視線を戻してしまう。
……お兄ちゃんは、行ってしまった。
「はなー?」
あやちゃんの呼ぶ声がする。
声の方を向くとあやちゃんが駆け寄ってきた
「どしたの?」
あやちゃんには、何故か言いたくなかった。
お兄ちゃんの事は、秘密。
「なんでもないよ。遊ぼう」
あの時。
話しかけちゃいけないと思い、それはきっと正解だった。
明日もあの場所へ行ってみよう。
もしかしたら、お兄ちゃんは人形のままかも知れない。
だけど、会いたい。
会いたいの。