はな②
それは5月が半分過ぎた頃。
いつも通り学校が終わり、一度お家に帰ってお兄ちゃんに会う為にあの場所へ行こうと、走って帰っている途中。
「そんなに慌て走ると、危ないよ」
帰り道の途中にある幼なじみのあやちゃんと良く遊ぶ公園から突然声が聞こえて、びっくりした。
私は思わず立ち止まって、そちらの方を向いてしまう。
なぜか、お母さんの怒った顔を思い出したけど、そんなことすぐに忘れてしまった。
だって……
「お兄ちゃんっ」
またまた私はびっくりして、それからとってもうれしくなった。
いつも見ているお兄ちゃんが、話し掛けてくれていたから。
お兄ちゃんは、公園の木陰そばのベンチでいつもの制服姿で難しい本を読んでいたようだった。
私は、迷わずお兄ちゃんの近くまで駆け寄る。
お兄ちゃんは私の大声にびっくりした顔をしたけど、私が笑っているのをみていつもの優しい目になった。
「キミは、いつも会う女の子だよね?」
私はうっとりしながら、頷く。
初めて聞くお兄ちゃんの声は、なんて素敵なんだろう。
カッコイイお兄ちゃんは、やっぱり声もカッコイイ。
そしていつかお話できたらといつも思っていたけれど、こうして話す事になったら、それはそれで当たり前のだったに感じる。
お兄ちゃんはベンチの上、自分の隣を軽く叩いた。
「少し、お話しても大丈夫?」
嫌なはずがないよ!
返事の代わりに、お兄ちゃんの隣に座る。
自分でもニコニコしちゃうのがわかる。
お兄ちゃんもつられるように、少し笑顔になった。
「どうしてそんなに、ニコニコしてるの?」
「だって、お兄ちゃんとお話したかったから」
「ボクの事、知ってるの?」
「たかやなぎりょうと言うお名前なんでしょう?お母さんに聞いた!」
「…どうして、ボクと話したかったの?」
お兄ちゃんは聞いてばかりいる。
私だって、いっぱい聞きたいのに。
「よくわかんない。…カッコイイから?」
話してみたかった理由なんて、どうでもいい。
ただ、もっとお兄ちゃんに近づきたい。
「…………ぷっ。なんだそれ」
初めて、お兄ちゃんが笑うところをみた。
「あー…。それは、どうもありがとう」
お兄ちゃんは笑顔のまま、そのキレイな顔を近づけて聞く。
「で、ボクはキミの名前を聞いても良いのかな?」
「…まえだはな、です」
きっと私の顔は今、真っ赤だ。
…ええ。私も真っ赤です。
恥ずかしいけと、恋愛ものですからっ!