#3
episode2にepisode5~7の内容をまとめることにしたので、掲載していたものを一旦削除させていただきました。
新しい話ができると思うので、お楽しみください。
しばらくすると、県警本部のすべての出入口を閉鎖したとの館内放送が耳に届いた。今現在、この建物の中にいるのは警察職員だけとなった。一般市民の避難に対応していた職員もぞくぞくと集まり、本部内にいるすべての職員が〈第二の手紙〉の捜索に集中する。
手紙の捜索を始めてから一時間。爆弾爆発まであと二時間。極度の緊張からか、疲労の色が周りの職員から出始めていた。
「くそっ!探してる手紙がラブレターとかなら探し甲斐あるのに」
俺がぼやくと、近くにいた職員たちがくすくす笑い出した。
「宝の地図とかな」
「宝くじの当り券とか?」
「そうそう」
「私なら彼氏からの婚姻届かな」
「市役所に取りに行けばいいだろ」
「署名入りのがいいの!」
「いっそのこと、署名捺印したのを渡したら?」
「俺が書いちゃる、俺が」
誰ひとり捜索の手を休めはしないが、現実逃避をするように職員たちは下らないことを言い始めた。
「逆に、捨てそびれた自筆のラブレターってのはどうですか?」
ひとりの放った言葉に、全員が固まった。
「うっわ、それキツイ!見られたら俺生きてられない!」
「私も!」
「あれって、翌朝読み返すと居た堪れなくなるよな」
「俺なんて何度破り捨てたことか」
「私は燃やして灰にした」
「無に返したくなるよね」
「書いた記憶も消し去りたい」
そこかしこから言葉が飛び交う。少しずつ職員たちの声に張りが戻ってきた。
「実は俺、母親に読まれました。あーっ!忘れてたのに思い出しちまったぁ」
別の職員のとんでもないカミングアウトに、誰もが同情の眼差しをその職員に向けた。
「お前の勇気は忘れないからな」
望月はその職員の肩を力強く掴んだ。
「よーし、今晩、その時の話をもっと詳しく聞いてやろーぜ!」
「おーっ!」
場の緊張が解れ、再び手紙探しに集中する。望月はホッと息をつき、うな垂れる職員の肩をポンポンと叩いた。
「サンキュ。悪かったな」
「いえ、また記憶の彼方に仕舞い込みますから」
仕舞い込めるかなぁ、と望月は苦笑し、手紙探しを再開する。
この集中力も長くは続かない。一刻も早く、〈第二の手紙〉を見つけなければ。
それにしても、これだけ探して見つからないのもおかしくないか。今までの四件はもう少し分かりやすい場所に隠されていた気がするが。
――まさか。
俺は早足で田村の許へと急いだ。
「なぁ、俺、思ったんだけどさ。アレ、ほんとの悪戯電話じゃなかったのかな?考えただけで俺気絶しそうなんだけど」
そう、あの電話がただの悪戯電話だったとしたら。この騒ぎは、俺のせいじゃないか?!
「違うな。アレは本物だ。いくら模倣犯でも、公開していない電話の内容と声色がまったく同じっていうのはあり得ない」
田村が掲示板に貼られていた麻薬撲滅ポスターを剥がしながら答えた。
「そ、うだよな」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
「手伝え」
ホッとする俺に向かって田村が睨んだ。
「えっらそうに。コレ剥がせばいいんだろ。っつーか、こんなポスターの裏に手紙仕込んでたら職員だって気づくだろ、普通」
「黙れ、トウヘンボク。ポスターの隙間から差し込むくらいわけないだろ」
「トウヘンボクって。初めて言われたぞ、俺」
俺は肩をすくめ、飲酒運転撲滅ポスターを剥がした。
「見つかったぞ!」
背後から声がした。驚いて振り返ると、若林が片手に携帯を掴んだまま走り寄ってきた。
「手紙がですか?!痛ってぇ」
興奮のあまり、ポスターで指を切ってしまった。見ると指からうっすらと血が滲み出ている。
「大丈夫か?手紙は三階の生活安全部で見つかった。設置してある公衆電話と一緒に置いてあった電話帳に挟んであったらしい」
隠してあった場所なんてどうでもいい。それよりも――
「なんて書いてあったんですか?」
俺が急かすように尋ねると、若林は携帯画面を俺たちに見せた。俺と田村は小さな画面を覗き込む。
「……なんだ、コレ」
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
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