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COMBINATION  作者: haruka
新しい仲間
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episode19-5 再会

 渋滞を抜け、やっとのことで遊園地前の駐車場に着くと、多くの捜査員が既に待機していた。遊園地サイドには連絡済みで、新たな来場者は入場できないようになっていた。中にいる客も少しずつ避難している。

 今のところ、遊園地内で谷原と彩花らしき人物は見つかっていない。といっても、週末の遊園地には、家族連れが押しかけているので本人かどうか見極めるのは不可能に近い。

「遊園地内の場所の指定はなかったんだな?」

 篠原が、俺たちに確認してきた。俺たちが頷くと篠原は「じゃあどこに行けばいいんだ」と舌打ちした。外の遊園地の異変に、隣接されている大型ショッピングモールの客も少しずつ集まってきている。遊園地から避難させても、客がここに流れていれば意味がないではないか。

「流れ弾に当たる可能性もあるから、隣の客もすべて避難させるんだ」

 篠原が何人かの捜査員に指示を出した。指示を受けた捜査員たちが、走り出そうとした時、女の子の声がした。

「パパー!」

 その声に捜査員たちが一斉に振り向くと、遊園地の入口に子どもを抱きかかえた谷原が立っていた。

「彩花!」

 前に飛び出そうとする住谷を制止し、庇うように住谷の前に立った。

「やっぱり警察を引き連れて来たな、卑怯者のお前らしいな」

 谷原が顔を歪めて笑った。数人の捜査員が、谷原の周りを取り囲む。訳が分からない買い物客たちは、その様子を固唾を飲んで見ていた。

「谷原、子どもを放すんだ」

 篠原が叫ぶが、谷原は住谷を睨んだまま動かない。

「みんな、動いたらこの子殺しちゃうよ。展望台から見てたんだ。警察がたくさん来たから、俺から出迎えに来てやったよ。何でか分かるか?」

 谷原は、おかしそうに嗤い、買い物客の方を見た。

「だってさ、たくさんの観客の前で住谷がどんな奴なのか披露したくて遊園地選んだのに、客がどんどん避難しちまったからさ、こっちに来たわけ」

 目を細め住谷を見つめる谷原に、住谷は震えながら子どもの名前を呼ぶだけだった。

「お前、ヒドい奴だったよなー、俺の前にも何人もイジメてたよな。忘れてるだろ?イジメた奴らのことなんて」

 谷原は、大声で周りの人間に聞こえるように話し出した。

「ムカついたんだろ?イジメを俺に注意されて。だから俺をイジメの標的にしたんだよな。イジメてた人間を仲間に引き込んでさ」

 抱きかかえていた彩花に谷原は笑顔で「ヒドい奴だよねー」と言った。彩花も、笑顔に答えるように笑った。

 拳銃はどこだ?

 子どもの体で右手が見えない。今も、拳銃を握っているのか?谷原をじっと見据えながら、動くことができないこの状態に苛立ちを覚える。後ろにいる住谷は「彩花には手を出さないでくれ」と泣きながら谷原に訴えた。彼が前に飛び出さないように、こっちにも神経を集中させないといけない。

「やめてくれ!って叫んでもお前は嗤ってたよな」

 谷原は、話しながら顔を悔しそうに歪ませた。

「お前もろくな人間になってないと思ってたのに・・・・何だよ、あの写真。―――こんなの、おかしいじゃねーか!」

 谷原は吐き捨てた。

 やっぱり・・・・谷原はあの家族写真を見たんだ。死を宣告された絶望の中で、見てしまったんだ。

「お前がどんなに住谷の非道をここにいる人間に訴えたところで、今、お前がしていることは許されることではないんだぞ!子供に罪はない!その子を放すんだ!」

 篠原が諭すように谷原に訴えるが、その言葉は彼には届いていない。

「いいんだよ、どうせみんな見てるだけなんだから」

 谷原は憎悪を込めた目で、遠巻きにこちらを見ている買い物客たちを睨んだ。

 在りし日のクラスメイトたちのように、ただ見ているだけの観客たち。谷原にとっては、見ているだけの彼らも憎しみの対象なのかもしれない。この騒ぎで、どんどん買い物客が集まってきている。今ここで拳銃を撃ったら・・・・パニックになるのは間違いない。

 谷原はそれを狙っているのか? 谷原が抱きかかえている彩花は、今の状況がわかってないのだろう、笑いながら住谷に手を振っていた。

 くそ、どうする?

 横目で田村を見ると、田村の横にいる間宮がこっちを見ていた。俺ではなく、泣きながら娘を放すように懇願している住谷を哀れむように見ている。

「もう、終わりにしよう住谷。隠れてないで、前に出て来いよ」

 子どもを抱え直し、拳銃を持った右手を住谷の前に立っている俺に向けて構えた。

見物していた買い物客からいくつもの悲鳴が上がり、辺りは騒然とする。

「やめるんだ。そんなことしたって何の解決にもならないだろう!」

 前に出て行こうとする住谷を押さえながら、谷原に向かって叫んだ。

「望月!」

 田村が叫ぶが、それよりも先に拳銃が火を噴いた。


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