「瓜二つだな、この双子」
返り血まみれの服では問題があるため、着替えるために双子に着いていくことになったのだが
『この双子、そっくりだな』
どちらも赤い髪に青い瞳、髪はロングでストレート。
服装や装飾、表情などに違いがあればいいのだが、この双子は鏡で写したと言われてもおかしくない程似ているのだ。
名前はリリムがリナとルナと言っていたが、どちらがリナでどちらがルナか全くわからない。
「着きました」「こちらのお部屋になります」
双子は部屋の扉を開け、こちらに視線を向ける。
顔のつくりや身体も、なにもかもがそっくりで何か違いかないかと思い見比べてしまう。
「どうされました?」「私たちの身体が気になりますか?」
「まあ、気になるっちゃ気になるんだけど」
言葉だけでは危ない意味に捉えられてもおかしくない。
結局違いは見つからなかった。本当に鏡のようだ。
部屋に入るとリナとルナが扉を閉めた。
まあ、着替えるのだから扉を閉めるのは当たり前なのだけれど、なにかしらの違和感を感じた。
部屋の中にはたくさんの衣服が視界に入る。
多分大きなクローゼットの中にも服がたくさんなのだろう。
鏡などが置かれているのは理解するが、何故か大きなベッドが置かれていた。
「なんで、ここにベッドがあるんだ」
着替えるための部屋に何故ベッドが?
そのベッドはかなり前から置かれていたような雰囲気はなく、つい最近ここに置かれたような、そんな感じがした。
クローゼットや鏡などの家具に比べると明らかに新しいものなのだ。
「では極夜様」「こちらにお座りください」
リナとルナがベッドに座り、こちらに座るように指示してくる。
…なぜベッドに座る必要あるんだ。
疑問に思いながらも指示に従う。
「なっ…!」
座った途端にリナとルナに押し倒される。
そして、俺は目を見開いた。
リナとルナに黒い角や翼が生えていたのだ。
雰囲気も先程とは全く異なり、艶かしいものだった。
「なるほどな、サキュバスか」
「ええ、そうですよ」「魔王様が認めた人間」
「「どんな味がするのか」」
声を合わせてこちらを見てくる。
が、一向に何もしてこない。
てっきり何かしてくると思ったのだが、何も始まらない。
「な、なんで?」「魔法が効いてない?」
何があったかは分からないが、表情を驚きの色に染めている。
そういえばリリムの時も同じ状態であった。
「もしかして、俺に魔法とか掛けようとしたの?」
「「…っ!」」
リナとルナはどうしていいか分からずあたふたしていたが、俺は起き上がりクローゼットを開け適当に服を選び、着替え始めた。
『多分、リリムもあの時に俺に魔法をかけようとしたんだけど効かなかったんだろうな。このチート能力は魔法も無効化するのか?』
色々考えてはみるが、分からないことがたくさんある。
これからこの城で生活するのだから、少しずつ理解していけば問題ない。
「あ…」
何故かは分からないが、気づくとリリムと結婚することや、ここで生活することを望んでる自分がいる。
「本当に分からないことだらけだな」
俺は着替えを終え、リナとルナに声をかける。
その頃リリムは悩んでいた。
「やはり白いドレス?いや、ここはサキュバスの伝統的なこちらは…でもこんな痴女のような格好…いやいや、私はサキュバスですし、でもでも白いドレスを着てみたいぃ………決まらない」
結局シオンを呼び、どれがいいか決めてもらうことにした。
「どう?似合ってる?」
「ええ、お似合いですよ」
リリムの質問に笑顔でシオンは答える。
だが、シオンはリリムの結婚を認めたくはない。
あの人間の男にどれ程の価値があるのか理解できないのだ。
リリムはそんなシオンの気持ちを察してか、声をかける。
「どうして私が極夜に惚れたか、教えてあげる」