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第61話 自由の矛編2-02 「吉井真里菜が遭遇した出来事」

第61話を公開します。

 

 一つ手前に登場人物と人口のメモを公開しています。

20150514公開

あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって8日目。

 徐々に砦での生活が“日常”となり始めていた。

 


9-02 『吉井真里菜が遭遇した出来事』 西暦2005年11月3日(木)朝



 吉井真里菜はこの地に来てから初めて日本が出て来ない夢を見た。

 どこかヨーロッパ風の異国が舞台だった。

 夢の中では彼女は魔女として振る舞っていた気がする。

 おぼろげながら覚えているのは、空を飛んでいる時に不安な気持ちと高揚感が同時に湧き起った事だった。

 ちょっとだけ幸せな気分で起きた真里菜だったが、未だ日が昇っていないのだろう。室内は薄暗かった。

 この状態では今が何時なのかを簡単に知る事が出来ない。この世界では時刻を知りたければ太陽を見るしかなかった。まあ、いちいち腕時計の時刻から毎日変る偏差を計算する事は可能だけどはっきりと言って手間だ。

 薄暗い室内を見渡したが、誰も起きていない。

 もう一度寝直そうと思った時に微かなエンジン音が聞こえた。


 真里菜はなんとなく、そのエンジン音がする方に向かう事にした。

 室内で薄暗いという事は外はきっと夜明け前の暁光で歩ける筈だ。


 砦には2台のオートバイが有る事は知っていた。両方とも自衛隊が持って来ていたが、実際に動かしてている所を見たのは初めてだった。

 オートバイの周りには何人もの自衛官が居たが、その中の1人は背が低かった。

 如何にも女性自衛官というくらいに迷彩服を着こなす人物は顔を見なくても誰だかは分かる。

 真里菜の同級生ながら、この砦では知らない人が居ないという有名人の守春香だった。 


「春香、おはよう」

「あれ、真里菜、どうしたの?」

「うん、ちょっと早起きし過ぎちゃった。そしたらエンジンの音が聞こえたから」

「起こしたならゴメンね。ま、いつもこの時間にはエンジンを掛けているから、きっと疲れ切って寝てるから今まで気付かなかったのかな?」

「まあ、それはいいとして、どうしてこんな時間に?」

「定例の偵察だよ。早朝に一度確認しておくの。今日でお役御免だけどね」

「どうして?」

「自衛隊の監視トーチカが出来上がったし、明日からは違うお仕事に専念するからねえ」

「聞いてもいい?」

「あ、それなら、朝食後に“部屋”に行くよ。もうすぐ離陸の時間だから」

「オーケー。見ててもいい?」

「いいよ。じゃあね」


 そう言って、存在感を膨張させながら彼女はバイクの方に歩いて行った。

 バイクの横で、2人の自衛隊員が春香に何か箱状の機械を身体の前に抱え込ませた。その間に春香が二言三言声を掛けていた。固定が済んだ後、もう1人が春香に剣を差し出す。その剣を無線機の前に彼女が持って行くと無造作に手を放した。が、剣は見えない何かで固定されたようにその場所に浮かんでいた。

 そして、春香が周りの自衛隊員達に何かを話しかけると、みんなが一斉にこっちを見た。

 全員が笑顔で手を振って来た。

 何故か嬉しい気持ちになって、笑顔を浮かべた真里菜が手を振りかえすと、全員が意味も無く歓声を上げた。

 いや、春香、あんたが一番喜んでいるのはどうなの? と思ったが、彼女は踏み台を使ってバイクの座席の後部に立ち上がった。

 運転手の肩を2回ほど叩いた後でバイクが走り出した。あっという間に加速するが気が付けば春香の身体が水平になって、そのまま浮き上がって行く。最後はバイクよりも速度を上げながら高度を上げて行った。


 呆気にとられていた真里菜に後ろから声を掛けて来た人物が居た。

 声がした方を振り返ると、マッチョとしか言えない様な自衛隊員の姿が有った。

 

「彼女に良くしてくれているみたいだね」


 あの救出された朝、真里菜たちのグループに声を掛けてくれた自衛隊員だった。

 確か、特殊部隊の隊長さんだった筈だ。

 彼の後ろには巨大なリュックサックを背負っている自衛隊員達が並んでいた。

 そう言えば、あの時も気配を感じなかったが今日も気が付いたらそこに居た。


「お久しぶりです。今では下の名前で呼び合える様になりましたよ」

「俺が言うのも変だが、ありがとうと言っておく」


 そう言って、彼は頭を下げた。


「いえ、お礼を言うのはこっちです。助けてもらった上に気に掛けてくれたのですから。本当にありがとうございました」


 深々と頭を下げた後、顔を上げると、全員が嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

 顔に緑色やら黒やらのペイントを塗りたくっているいかつい集団が爽やかに笑っているという光景につい笑顔を浮かべた真里菜だったが、隊長さんが号令を掛けると表情を引き締めた。


「我らが恩人たる守春香嬢の友人に・・・敬礼! 直れ! では、友人殿、自分達は監視任務に出発します! どうか、ご安心を!」


 彼らは真里菜の横を通り過ぎる時に、1人1人が敬礼をしてくれた。

 その度に真里菜は頭を下げた。


 彼らの後ろ姿が砦の内門をくぐって見えなくなるまで見送った真里菜は“部屋”に戻る事にした。


 今日はいい日になりそうだ・・・・・


 

如何でしたでしょうか?


 登場人物紹介を省く為に一つ手前にまとめた分を公開しています。

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