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第60話 自由の矛編2-01 「ステーキ」

第60話を公開します。



20150512公開

登場人物

 守  春香  高校2年生 17歳 先祖返り   本編主人公

    貴志  大学3回生 21歳 遺伝発現者  春香の兄

佐々  優梨子 高校3年生 18歳 遺伝発現者  春香の従姉

宮野  留美  高校2年生 17歳 春香の親友

吉井  真里菜 高校2年生 17歳 春香のクラスメート

橋本  翼   高校2年生 17歳 春香のクラスメート

高木  良雄  高校2年生 17歳 春香のクラスメート

河内  唯   高校2年生 17歳 春香のクラスメート

上代  賢太郎 高校2年生 17歳 春香のクラスメート

鈴木  美羽  幼稚園年長組 5歳 拉致事件の被害者

鈴木  珠子  主婦    26歳 美羽の母親  

西山  努   学者    62歳 系外惑星研究

大前  聡史  学者    47歳 植物生理生態学

有川  美鈴  市役所職員 22歳 総務部庶務グループ

松山  亜里沙 市役所職員 20歳 総務部庶務グループ

佃中  竜二  市議会議員 42歳 当選1回

金澤  達也  市議会議員 36歳 当選2回

遠見  功         52歳 池之原地区自主防災組織・池之原地区会会長

久川  茂樹        51歳 岩室地区自主防災組織・岩室自治会会長

清水  孝義  自衛官   48歳 陸上自衛隊特殊作戦群群長兼派遣部隊司令


あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって7日目。

 暫定的ながら組織だった活動を始めた拉致被害者と使徒たち。

 そんな中、生き残りに向けた活動が本格的に動き始めた。




9-01 『ステーキ』 西暦2005年11月2日(水)朝


『プリンセス3より金沢1、31頭の群れがそちらに向かいます。大人26、子供5。接触は7分後』

『金沢2、了解。金沢2より金沢1、ご苦労様』

『金沢1より金沢2、せめて1頭は仕留めてくれよ』

『金沢2より金沢1、任せろ。今夜はビーフステーキを喰わせてやる』

『マジ、頼む!』


 砦に残されていた食材を使いだして3日目だが、当然のことながら食事は不評だった。

 なにせ、量はともかく食材の種類が少ない上に味付けが基本的に塩とごく少量のハーブとコショウしか使えなかったからだ。

 そこで、大前聡史教授と守春香が現在取り組もうとしているのがコウジカビの分離であった。

 元々、春香は料理研究が趣味という母親を手伝って味噌や醤油を自作した事も有るので、ノウハウを持っていた。しかも直接、コウジカビを彼女の特技で“見て”いる。

 普通であれば、大きなアドバンテージなのだが、さすがに空中を漂っているコウジカビを掴まえる事は無理なので、今はアオカビも同時に発生してしまうリスクを冒して、古くなったパンもどきにカビを繁殖させている段階だった。

 


『プリンセス3より金沢2、1頭が遅れだしました。どうやら足を痛めたみたい。明らかに速度が落ちている』

『金沢2よりプリンセス3、視認した。こちらから見ても左足を引きずっている』

『プリンセス3より金沢2、リブロース、サーロイン、ヒレ、うちもも、ランプがステーキにお勧めですよ。たくさん取れるといいですね』

『プリンセス3、プレッシャーを掛けないでくれ!』



 ただ、昨日の夕食に出されたシジミを塩で味付けした吸い物は好評だった。

 砦の近くに在る湖の沿岸を調べたところ、かなり大きくて肉厚なシジミが大量に生息している事が分かった。

 美味しいものに飢えて来た“市民”は金澤達也暫定市長の煽動も有り、佃中竜二市議が進めているインフラ再構築班を除く“市民”総出で朝からシジミ漁に繰り出したのだ。

 その結果、手掴みでさえリアカー4台分の大粒のシジミが手に入り、貴重な岩塩を使って砂を吐かせてからお吸い物にしたところ、リクエストが殺到した。

 砂吐きに使った岩塩が勿体無いので再利用する為に余計な手間が掛かるが、それでも満足のいく一品だった。

 人間は現金なもので、美味しいものが食べられると思うと、意外と不便に我慢が出来る。

 ましてや、拉致された被害者は何日間も過酷な労働に比して粗食しか食べられなかったから、ちょっとした“美味しいもの”が食べられるならば、我慢しようとしていた。

 昨夜のシジミの吸い物も具沢山の味噌味ならもっと喜ばれたであろうが、シジミ以外の具がほとんど入っていない、しかも出汁も使っていない塩味の吸い物だけでも満足していた。

 


『金沢2よりプリンセス3、万が一撃ち漏らした時は頼む』

『プリンセス3、了解。でも・・・』


 “市民”の期待を一身に担う形でオーロックスの狩に送り出されたのは、石川県金沢市の金沢駐屯地から派遣された第14普通科連隊第3中隊の小銃小隊2個だった。

 彼らは「対巨人戦」に備えて、他の部隊と違って64式小銃を持って来ていた。

 巨人相手ならば、5.56㍉という小口径の89式小銃よりもマンストッピングパワーに優れた7.62㍉口径の方が有利だという判断だった。

 結果はあまり違わなかった。

 2個小隊で57名居た隊員は『終わりの日』作戦で、巨人の突撃を受けて46名にまで数を減らしていた。

 もちろん、突撃をして来たのが巨人の部隊で一番練度が高い部隊だという事は彼らは知らなかった。

 それ故に、2割もの戦死者を出した彼らの士気は落ち込んでいた。

 だが、64式小銃を持って来た決断は思わぬ形で彼らにスポットライトを当てた。

 そう、オーロックスを狩るには64式小銃の方が向いている、という形で・・・・・


 また、使徒以外の、巨人たちから食堂で奴隷として使役されていた現地人も今回の狩に同行していた。

 


『大丈夫ですよ』


 守春香の声が一気に温かくなった。

 第14普通科連隊第3中隊第2小銃小隊の無線士には、次いで聞えて来た言葉は女神の様な慈愛に満ちたものに聞こえた。


『やれば出来る子だと信じていますから』



 “金沢2”は期待に応えた。

 見事に仕留められたオーロックスは金沢2と元奴隷たちの手によって直ぐに血抜きが行われた。



 その晩に振る舞われたステーキも、シジミの吸い物に劣らずに好評だった。


 

 

如何でしたでしょうか?


 血抜きは生きている状態で行う方が良い筈です。理由はご想像にお任せしますけど・・・

 作中では描写しませんでしたが、仕留めたオーロックスを持って来ていた4本の太い丸太で組んだ簡易吊り下げ台を使って引き上げてから血抜きをしています。

 こうする事で肉を劣化させて行く血液を抜き、少しでも味と保存性を上げます。

 その場で解体し、運搬し易くした上でリアカーに積んで砦に急行します。

 部位の知識が無いと調理しても美味しく出来ないので、食堂で使役されていた奴隷階級が必要となります。 

 残った部位は全て保存用にスモークされます。

 そのスモークする為の施設を作る事に丸1日が費やされたせいでシジミ漁が先行して実施されたと考えて下さいませ(^^)/

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