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第58話 自由の矛編1-13 「ラスコー洞窟の壁画に描かれたものと・・・」

第58話を公開します。



20150505公開


あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって4日目。

 徐々に落ち着きを取り戻しつつある拉致被害者と使徒たち。

 そんな中、行われた現状説明会は彼らにある種の衝撃をもたらす。




8-13 『ラスコー洞窟の壁画に描かれたものと・・・』 西暦2005年10月30日(日)朝



 守貴志の説明は続いた。


『現在分かっている限りでは、この砦の南側を流れる川より更に南では野生の動物がかなりの数で生息しています。大型のものとしてはオーロックス、これはクロマニョン人が1万5000年前にラスコー洞窟に残した壁画にも描かれている牛の原種です。まあ、巨大な牛を想像して下さい。こちらで確認された最大の個体は体長3㍍以上で体高2㍍近い大きさを誇ります。元々地球で食料として乱獲されて絶滅したくらいなので、確実に食材として利用出来ます。また鹿も多数確認されています。その他、イノシシ、ウサギも確認済みです。今後、これらの動物を狩る事で、動物性蛋白質の摂取が可能となるでしょう。また、赤色野鶏も確認しています。こちらは飼育すれば鶏よりも効率が悪いでしょうが卵の供給源として有効でしょう』


 ここで貴志は一旦、間を開けた。

 彼の表情に珍しく笑みがこぼれた。


『それと、7頭だけですが、マンモスも確認されています』


 反応は驚きの声だった。


『この地の気候では絶滅していてもおかしく無いのですが、間違いなくマンモスが生き残っています。我々としては保護したいのですが、個体数が少ない為に自然と絶滅するかも知れません』


「昔から食べたかったお肉にマンモスのお肉が有るんだよね」


 高木良雄が橋本翼に語りかけた。


「旨いのか?」

「分かんないけど、ネットで見た『はじめ人間ギャー○ルズ』のお肉が美味しそうだったんだよね。こう、骨の周りにお肉が付いていて、見るからに美味しそうだったよ」

「ふーん」


 拉致被害者たちが思い思いに喋るのに任せた後で、貴志は説明を再開した。


『先ほどカレーライスの食材は手に入らないと言いましたが、言い換えると日本原産の食材は手に入る訳です。有力な食用植物としてはドングリが挙げられます。縄文人も食用にしていたくらいなので、今後はアク抜きの方法を試行錯誤しますが将来的には食用に利用出来るでしょう。その他にもオニグルミや栗も確認されているので有力な食材候補です。それと収穫が終わったばかりの大麦は本来は初夏に収穫する筈なのに秋に収穫をしています。突然変異と思われますが、グザリガが持ち込んだとの事なので詳しくは分かりません。ですが、栽培する手法が確立しているので今後も主食として見込めます。先ほど手に入らないと言った小麦に関しては「使徒」の方達が征服される前に小規模ながら栽培をしていたそうなので、探せば少しは見付かるかもしれませんが、現状では発見されていません』


 貴志は一旦、説明を中断した。

 カレーライスが二度と食べられないと聞いた時に絶望した表情を浮かべた拉致被害者たちの表情は、マンモス生息の情報と食料の心配が減った事でどこか安心したものになっていた。

 

『これで説明を終わりますが、何か質問が有りますか? 無ければ、これで終わります。ご清聴ありがとうございます』

『次に、大阪市役所からの発表です』

 

 清水司令の進行で次の発表者が台の上に乗った。

 

『大阪狭山市市役所の有川美鈴です。よろしくお願いします』


 そう言って切り出した若い女性は頭を下げた後で、ちらっと横を見た。

 そこには同僚で2つ年下の松山亜里沙が心配そうな表情を浮かべていた。


『解放された日に部屋割りの為に簡単な名簿を作りましたが、今後の為に住民票を作る事にしました。皆様のご協力をお願いします・・・』


 そう言った彼女は逃げるようにしてお立ち台から亜里沙の下に駆け寄った。

 そんな彼女をよくやったとでも言いたげに抱き締めている亜里沙の姿を見ながら、思わず上代賢太郎が突っ込んだ。


「大丈夫か、市役所?」

「いや、ほのぼのとしているからいいんじゃない? 『癒し系市役所』って貴重だよ」


 高木良雄の言葉に毒気を抜かれた賢太郎は憮然とした表情で返した。


「市役所がメイド喫茶並みでどうする?」

「賢太郎の口からメイド喫茶って言葉が出ると新鮮だね。そんなに心配なら手伝ってやったらどうだい?」


 良雄の言葉に意表を突かれたのか、ちょっとビックリした賢太郎はぼそりと呟いた。


「それもいいかもしれんな」


 その呟きは清水司令の声に隠された。


『えー、皆様、どうか市役所へのご協力をお願い致します。次に市議会代表として金澤達也先生の発表です』

『金澤達也です。佃中先生がやりたくないもんですから、私が説明する破目になりました。昔から我儘と言うか人使いが荒いと言うか、困ったものです』


 そう言って、いきなり場の空気を変えたのは明らかに佃中竜二市議よりは年下の男性だった。

 竜二は苦笑いをしていた。


『まあ、付き合いは長いんですが、これだけは言えます。意外といい人ですよ。とまあ、そこはどうでもいいんですが・・・』

「どうでもいいなら、話すな!」


 さすがに突っ込まざるを得なくなったのか、竜二が大きな声を上げた。

 意外と受けたのか、拉致被害者の間から初めて笑いが起こった。

  

『さすが関西人。ツッコミが的確です。さて、本題に移りますね。現在、市長の席が空白です。そこで、市長選挙と市議会選挙を同時に行いたいと思ったのですが、佃中先生とも話したのですが、どうやらこっちの世界では我々には分からないルールが有るので、普通に選んだ場合、対外的によろしくないと判断しました。なので、市長は選挙で選び、市議会は自治会のお二人が兼務し、外交は特別ポストが担う事としたいと思います。それと佃中先生から提案が有りましたが、砦内に井戸を掘りたいと思います。また現在、仮設のトイレを使っていますが、こちらも早急に手を打たないと衛生上の問題が有りますので、佃中先生に改善を任せたいと思います』


 そう言うと、達也はあっさりとお立ち台を降りた。


『金澤先生、有り難う御座いました。最後に自衛隊からの説明を行いたいと思います』


 陸自特殊作戦群の第2科長が清水司令から拡声器を受け取り、お立ち台の上に立った。


『陸上自衛隊を代表して説明致します。先ほど朝食と昼食としてお配りした戦闘糧食Ⅱ型の残りは5679個です。現在のペースで消費すると、3日後にほぼ尽きます。この後の話し合いで決めますが、早急な食料確保の手立てが必要です』


 拉致被害者の表情から笑みが消えた。


『次に巨人に対する警戒監視体制の構築は完了致しました。今後は3個小隊が常に警戒監視の任に就く事になります』


 

 この惑星に来た最後の人類グループは、サバイバルに向けて徐々に舵を取り始めた。 

如何でしたでしょうか?


 本当を言えばマンモスを出す予定では有りませんでした。

 だって、彼の地では絶滅間違いないのですから。

 ですが、万能の言葉『突然変異』という事でご登場願いました。

 心変わりの理由ですか?

 今日が「こどもの日」だからです(^^)

 どうでもいいですが、あのマンモスの肉って、本当に美味しそうでしたよねえ・・・

 え、猿酒ですか? もちろん、NO THANK YOUです(^^;)

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