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第56話 自由の矛編1-11 「異星/異世界」

第56話を公開します。



20150428公開


あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって4日目。

 徐々に落ち着きを取り戻しつつある拉致被害者と使徒たち。

 そんな中、人々は生き残りへの歩みを踏み出そうとしていた。




8-11 『異星/異世界』 西暦2005年10月30日(日)朝


 自衛隊の駐屯地や基地、艦艇では必ず午前8時15分に国旗掲揚が行われる。

 それは異国の地であろうと変わらない。

 ただ、この異星の地では時計が目安程度にしか使えない為に、暫定的に日本と同じ時間に近付ける為に日の出から換算した時間に国旗掲揚を行っていた。

 今日、10月30日であれば日の出から1時間59分後である(10月30日の大阪の日の出時間は6時16分)。


 そして、国旗掲揚から30分後には砦の広場は人であふれていた。

 今後の事を決める為にも拉致被害者全員に現状を説明する必要が有り、自衛隊・機動隊・大阪狭山市市役所・大阪狭山市市議会議員・学者グループ・自主防災組織・アメリカ海兵隊・アメリカ調査団合同の発表が予定されているからだった。

 拉致被害者の服装は、拉致された時の服装を纏っている者が3割ほどで、残りは巨人の普段着を詰めた物を着ていた。


『朝早くからお集まり頂き、有り難う御座います』


 2日前にも同じように説明役をした自衛官が白いメガホンを使って説明を始めた。

 今日は日本から持って来ていた木箱を即席のお立ち台にしていた。


『自分は自衛隊の派遣部隊司令の清水です。最初に巨人がもたらした凶行により命を落とされた犠牲者の冥福を祈りたいと思います。よろしければご起立下さい』


 清水司令は2日前と全く同じ言葉で黙とうを促した。

 今日は全員が起立した。


『犠牲者の冥福を祈り、黙祷』


 10秒間の無言の時間が過ぎた。


『黙祷を終わります。お座り頂いても結構です』


 全員がその場に腰を下ろした事を確認した後、清水司令は説明を開始した。


『残念ながら、日本に帰還する為の特異点は復活していません。引き続き監視は続けますので、何か有ればすぐに発表します。次に、この地の情報を科学者グループから発表させて頂きます。守君、頼む』


 清水司令からメガホンを受け取った守貴志は落ち着いた表情で拉致被害者を見渡した後、おもむろに口を開いた。


『学者グループを代表して発表させて頂きます。まず、この惑星がどこに存在するかは全く不明です。少なくとも、我々の銀河系では無いと推測されています』


 その意味が浸透するにつれて、被害者の表情が強張って行く。


『この惑星が所属する恒星系には確認されただけでも7つの惑星が有り、この地の住人の説明では12個の惑星があるとの事です。この星は第4惑星と考えられています。自転周期は26時間7分12秒、1年は330日と判明しています。現在は日本の秋に相当します。この惑星の衛星は、月の直径の8割相当の自然発生的な物が1つ、人工的に作られた直径8㌔の物が少なくとも4つ確認されています。ただし、更に2つの人工的な衛星が存在しているという示唆がされています』


 母星たる地球とは全く違う惑星だと言う事を叩き付けられて、全員の顔が更に強張って行った。

 貴志は淡々と続けた。


『大気成分はほぼ地球と同じですが、大気中に含まれる化学物質は見つかっていません。ただし、製鉄が可能な文明が存在している事は、皆さまもご存じの通りです。重力もほぼ1Gで地球と変りません。周りを囲むようにして建てられている壁の高さは約109㍍で、1辺が550㌔ほどの五角形を形作っています。材質は不明、小銃程度ならば傷も付かない強度を持っています。地下にどれほど伸びているかは現在不明です。壁の外側は高度2000㍍から確認出来る限りジャングルを形成しています。現在地は高地となっており、北に21㌔ほど進んだ地点に断崖と表現しても良いほどの500㍍を超える崖が存在し、巨人及びラミシィスと呼ばれる異人類種はその崖の下に拡がる平原に国家を形成しています。ラミシィスの情報に依ると、巨人が作っている国家は4から5つ、ラミシィスと同じ人類種は彼らだけです。それぞれは隣接する国家と戦争状態に有る様で、十数世紀に亘って戦乱が続いています。それぞれの国の人口は数十万人と言う事ですが、確認は取れていません』


 貴志は一旦、言葉を切り、説明がどれほど浸透しているかを確認した。


『文明の発展度合いはラミシィスが一番進んでいる様ですが、身体能力の差で優位とは言えない様です。この数世紀はほぼ膠着状態が続いているそうです。ここまでで何か質問が有りますか?』


 何人かが手を挙げた。

 自衛隊員が予備のメガホンを持って、手を挙げた人物の所に走った。


『そのラミシィスとやらの国から援助なりを引き出す事は可能なのかどうかを聞きたい』


 貴志の答えはにべも無かった。


『その辺りの事は、この後の話し合いで決めます。他には?』


 先ほど手を挙げた者たちは今度は挙げなかったが、新たな人物が手を挙げた。

 中年に差し掛かる寸前の太った男性だった。


『そこに居る現地人の事だが、彼らは奴隷なのか? その少女との関係、更にはどうして殺さなかったのかを訊きたい』


 男性の視線の先には、腕を組んで立っている守春香に従うかのように彼女の後方に座っている使徒たちが居た。


『この地は元々彼らの土地でした。2年と225日前に巨人、彼らを今後はグザリガと呼びますが、グザリガが突如として侵略をしたそうです。抵抗も出来ずに征服された後は奴隷として扱われていました。この砦も彼らがグザリガの命令により造らされています。我々がグザリガを駆逐した事で解放された訳ですが、我々は彼らの好意によりこの砦を使用しているに過ぎません』


 貴志は一旦、言葉を止めた。

 聴衆の理解を確認する為だった。


『彼女は私の妹ですが、ある事情で彼らは彼女に従う形になっています。まあ、彼らの言葉を理解出来るのが彼女しか居ないので、そういう理由も有り、この関係は続けざるを得ません。また、もし彼女が死ぬか居なくなるかになれば、彼らはこの砦の主権を主張しだすでしょう。最後の質問ですが、意味も無く民族虐殺を認めると受け取られかねませんので、撤回をお勧めします』

『いや、巨人は皆殺しにしたのだろ? その延長であって、別に虐殺がどうのという訳では・・・』

『巨人に関しては、軍事作戦上の必要性から自衛の為に攻撃したのであって、皆殺しが目的ではありません。最後の質問は撤回したと受け取って構いませんね?』

『あ、あぁ』

『ご理解を頂いて有り難う御座います。ちなみにこの砦に連れて来られる途中で、拉致した人達を殺害した者たちは現在拘束中です。その処遇をどうするかは今後の課題です。他に何かありませんか?』


 

 平和な日本に生まれて、平和に暮らしていた人々にとって、過酷な現実が突き付けられつつあった・・・


 

如何でしたでしょうか?


 実はmrtkはちょっと悩んでいます(^^;)

 どうして、この作品に対する感想が一つだけなんだろう? って・・・

 考えられる理由としては

 ①感想を書くほどの作品じゃない?(T_T)

 ②感想を書きたくならない(;;)

 ③実は作品を読んでいない(・_・;)

 ④素直に感想を書くとmrtkが泣くので(-。-)y-゜゜゜

 ⑤感想? 食べれるのそれ(・。・)? 


 ど、どれなんだろう・・・・・

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