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第49話 自由の矛編1-04 「天才」

第49話を公開します。


 あ、それと、第46話、47話、48話の一部を修正しています。


20150406公開

登場人物紹介

 守   春香  高校2年生 17歳 先祖返り   本編主人公

 関根  昌幸  自衛官   28歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊小隊長 二尉

 アラフィス・ラキビィス・ラミシィス 16歳 討伐部隊隊長 王族

 フラダ・スクビ           38歳 アラフィス側近


あらすじ

 巨人ホモ・サヤマエンシスに引き続き、新たな人類種と接触した守春香たち。

 彼女と異人類種のコンタクトの行方は?



8-04 『天才』 西暦2005年10月28日(金)朝


 関根昌幸陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊小隊長は、守春香が行っている異人類種との接触を自らの姿を森に紛れ込ませながら見詰めていた。

 森の中にぽっかりと開いた空間を取り囲むようにして待機している部下たちも成り行きを見守っている筈だ。

 春香と相対している異人類種は、見た感じは黄色系に近い肌色のヨーロッパ系白人に見える。

 身長はざっと190㌢くらいだろうか? ほぼ全員が同じくらいの身長だ。

 武装は1㍍くらいの鉄剣を構えている者が30人くらいで、その半数が薄い鉄の板を被せた身長ほどの長方形の木製盾を片手で構えていた。剣を持つ残り半数はやや後方の位置で50㌢ほどの同じ構造の丸い盾を右手に持っていた。

 20人ほどが1㍍50㌢くらいの弓を構えている。

 そして、彼ら全員が左利きだった。


「手を出さないで!」


 バックアップに回っている特戦群の全員には届く程度の声量で春香が声を上げた。 

 その声に緊張は欠片も含まれていない。

 更に全く意味の分からない言葉を発した。その言葉は強いて言うならばドイツ語に近いイントネーションだった。


 しかし、この少女には何度も驚かされる。

 いや、空を飛ぶ段階でおかしいのだが、今もまた新たな能力を披露していた。

 昨日1日で、この地の言語を習得してしまったなんて、どう考えても異常だった。

 巨人たちの掃討と崖周辺の偵察を目的とした今回の任務に朝早くに出発する前の会話が脳裏を過ぎる。


『春香君、昨日は昼前から姿を見なかったが?』

『ああ、大変だったんですよ。ほら、100人近い現地人というか、原住民と言うか、投降した人達が居たでしょ? その人達の言葉をひたすら覚えていたんですよ』

『なんで君が?』

『まだ内緒にしといて欲しいんですけど、私たち兄妹のご先祖様って、こっち出身なんですよ。で、そのご先祖様が書いた本が我が家には残されていて、丸暗記している上に解読も出来る私に貴ニィが押し付けたんですよ。ほんと、人使いが荒いったら』


 一瞬、絶句した関根二尉が言葉を返す前に更に春香は言葉を続けた。


『ま、ラッキーな事に、あの人たち、あ、彼らは自分達をッギュルゥットィヴァグと呼ぶんですが、宗教で言う所の使徒って意味ですが・・・』

『ちょっと、待ってくれ。なんかドイツ語っぽい言葉が混じっていたが、それが使徒という意味でいいんだな?』

『あ、ごめんなさい、思わず使っていました。そうですよ』

『で、彼らの言葉をもう使えると?』

『うーん、さすがに全てじゃないですよ。彼らが残して来た日本語で言う聖書に出て来る言葉だけしか分からないですから。で、何故ラッキーだったかと言うと、彼らはその聖書を世代ごとに伝える役職を作るくらいに大事に伝えて来たんですよ。で、その聖書をひたすら暗唱してもらって、こっちは読み辿って発音をチェックしながら片っ端から覚えて行ったんです。おかげで肩が凝るわ、舌は攣るわ、大変だったんですから』

『いや、1日で言語を覚えた代償がそれなら、君は天才どころじゃないぞ?』

『ははは・・・ それを言うなら、いい言葉が有りますよ』

『大天才?』

『チートって言葉です』


 少女はそう言って、乾いた笑顔を浮かべた・・・・・



 緊迫した空気を破ったのは、弓を構えていた少年が放った1本の矢だった。

 緊張のあまり指が滑ったのか、矢はあらぬ方向に飛んだ。


「みんな、そのまま!」


 春香がそう声を上げると、彼女の雰囲気が一変した。

 どうやら、戦闘態勢に入った様だった。剣を構えている。

 もっとも、これだけ離れていると彼女の圧迫感に影響されないから、あくまでも『空気を読んだ』だけだが、それなりに付き合いの有るコードネームS13の特戦群の小隊全員が理解した。

 接触が次の段階に突入したと言う事を。

 その証拠に、相手部隊の全員に驚愕の表情が浮かぶ。

 隊長らしき少年が何かを命令したが、それに合わせて春香も声を上げた。

 その中に、『貴ニィ』という言葉が混じっていた様だが、どういう意味だろう?

 だが、なんにしろ本気になった彼女をどうにか出来る筈も無く、矢を射かけられたりしたが、最後の方は言葉だけで彼女が主導権を握って行った。

 しばらくすると交渉が成立した様だった。

 

「関根二尉、姿を現して欲しいんですけど、構いませんか? 安全は保障しますから両手を上げておいて下さい」


 春香の言葉に合わせて、固定していた姿勢から両手を上げながら立ち上がった。


 端に陣取っていた弓を装備した異人類種からほんの5㍍の距離に突然現れた関根二尉の姿に、彼ら全員が驚いた表情を見せた。

 春香の言葉通りに、弓や剣を構える者は居ない。

 

「関根二尉、砦に彼らを案内する許可を取って貰っていいですか? あ、そうそう、どうせだから、先ほど排除した巨人たちを埋葬してから案内しましょう。彼らの任務がその巨人たちの掃討だったみたいですし。それに、こっち側の戦力を印象付ける方が良いでしょうからね。なんせ彼ら基準では普通の人間は奴隷階級らしい様ですから」

「分かった」


 更に次々と姿を現した特戦群の姿の意味に気付いたのか、異人類種の兵たちは無言だった。

如何でしたでしょうか?


 どうでもいいですが、王子側から見た特戦群は見た目だけなら強そうに見えません。

 ですが、元々心身ともに鍛え上げられていた彼らが、実戦を経験した事で兵士として纏う空気が変わった事もあり、「かなりヤバい兵たち」という事は理解しています。

 更には、気配を消して潜んでいた事を気付かなかった時点で、王子たちは罠に掛かっていた事も理解しています。

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