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第48話 自由の矛編1-03 「主神の恩寵」

第48話を公開します。


【登場人物人名間違いを修正しました。

 誤:モリ・ハルナ

 正:モリ・ハルカ 】


20150402公開

登場人物紹介

 アラフィス・ラキビィス・ラミシィス 16歳 討伐部隊隊長 王族

 フラダ・スクビ           38歳 アラフィス側近

 モリ・ハルカ            17歳 矮人の少女


あらすじ

 斥候部隊と思われるグザリガ兵を追って、『断崖』の上まで辿り着いた討伐部隊。

 そこで出会った矮人の少女。

 異常な邂逅はどの様な結果をもたらすのか?



8-03 『主神の恩寵』 王暦1725巡期後穫期初日


 矮人の癖に王族以上の「主神の恩寵」を纏った少女は、手を副えて直立させていた強人族が製造した巨剣を軽々と扱って、両手で構えた。

 その挙動を見た部下たちに思わず動揺が走る。

 動き出そうとしていた前衛担当の長盾装備の部下たちの動きも止まった。

 いや、止められた。

 それほどに隙の無い、そして少女が計り知れない技量を持っている事を伺わせる構えだった。

 アラフィス・ラキビィス・ラミシィス自身も今見ている光景が信じられなかった。


「何者だ?」


 その少女が小首を傾げた。


「そちはどの様な存在であるのかを述べよ」


 アラフィスは再度質問した。今度はいにしえの言葉だ。

 もっとも、王族と言えども古の言葉を使う事はさほどない為に発音はやや崩れていた。


「ラミシィナに連なる者にしては無教ぶさほうな。流れ去った刻の影響か?」


 少女が呟いた言葉は、アラフィスの動揺を更に誘った。

 周囲の部下も「無教ぶさほう」という単語に反応した。


「殿下、再度、ご下知を!」


 アラフィスの表情を読んだフラダ・スクビが命令を変更するなら今だと言う意味を込めて呼び掛けて来た。さすがに長い付き合いが有るから、アラフィスの迷いを敏感に察知した様だ。

 だが、フラダの言葉が終わる間際に、一人の弓兵が先走った。

 先ほど、過失で矢を射た新兵だった。

 彼が射た矢は真っ直ぐに少女に向かった。

 新兵ながらも彼が王族のアラフィスの部隊に配属された理由は、その優秀な弓の技術に有った。

 1鼓刻(約1秒弱)の半分以下で少女に迫った矢の狙いは正確に少女の右すねを捉えていた。致命傷にならずに動きを止めるには最適な狙い所であった。もちろん、足を上げて回避する対処法も可能だろうが、この距離では反射的な反応以外で躱すのは難しい。

 ましてや足元への矢の攻撃の対処を巨剣で行うのは更に難しい。


 だが、少女は造作も無く対処して見せた。

 いや、対処した筈だった。

 何故ならば、金属音がして矢の軌道が変わったのだから。

 余りにも普通に行われた挙動の結果、しばらくして矢が迎撃されたのだと気付いたくらいに自然な挙動だった。


無教ぶさほうな者よ、そち達はもしかして『遅れてきた者』に連なる者か? 『主神の恩寵』の加護を得ながらもこの様な振る舞いは、そうとしか思えぬ」


 決定的な一言だった。

 このままでは、王族である自分が主神ラミの教えに背く存在であるばかりか、グザリガ共と変らない存在と、目の前の少女に断定されてしまう。

 もし、少女が只の矮人であるなら問題は無い。

 そう、只の矮人ならばだ。

 有り得なかった。

 只の矮人である筈が無かった。


「我はアラフィス・ラキビィス・ラミシィスという。無教ぶさほうな振る舞い、詫びる」


 だから、アラフィスは素直に詫びた。

 と同時に部下たちにも命令を下した。


「手を出すな。どうやら、俺の判断が間違っていた様だ」


 再び、少女が首を傾げた。


主神ラミのご加護の下、主神ラミよりお預かりしている者に無教ぶさほうな振る舞いを止める様にした」


 少女は頷いた。


無教ぶさほうと分かりながらも、『真実の問い』を行いたい。供物は我の剣だ」

「供物は要らぬ。余と仲間たちは『遅れてきた者』どもによって、この地に流れ着いた。だが、祖が2000巡期よりも昔にこの地を離れた故に、この地の事を詳しくは知らぬ。そち達の事を知りたい」


 何度、この少女には驚かされるのであろう。

 さらりと言ったが、その言葉には驚くべき事実が含まれていた。

 いや、いにしえの言葉に気を取られて認識し切れなかっただけだ。

 少女は最初に言ったし、その後も言ったではないか?


『ラミシィナに連なる者』と・・・・・・


 アラフィス達の『ラミシィス(主神に導かれて認められし一族による信徒たち)』建国に多大な影響を与えながらも、『遅れてきた者』どもに敗れて消滅した『ラミシィナ(主神に加護された一族による信徒たち)』の国名を。

 その時に、一部のラミシィナの王族(主神の加護を強く受けし一族)が逃れたという『消えたラミシィナの天地』というお伽話が生まれた。

 少女の言葉が正しければ、彼女はその末裔だ。

 ラミシィス王族さえも越える「主神の恩寵」をその身に纏っている事もそれで説明出来る。

 

「承知した」


 事態はグザリガ共の斥候部隊の殲滅という前線の日常から、もっと大きな事態に発展している。

 もし、王族の自分がこの場に居なかった場合に引き起こされたであろう結末を想像すると、アラフィスの口から自然と主神への感謝の言葉が零れた。


「我らを導きたもう主神に、この邂逅に感謝を捧げます」


 その言葉に少女が言葉を返した。


「必然。それが主神の望み故に」



 ラミシィス第5王位継承権王子アラフィス・ラキビィス・ラミシィスの運命を変える出会いだった。


 

如何でしたでしょうか?


 現時点で、全く説明していない設定が有ります。

 鋭い人はきっとツッコミを入れている筈です(^^;)

 

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