第46話 自由の矛編1-01 「市議」
通算第46話、自由の矛編第1話を公開します。
それと、これまでに掲載した登場人物+新たな登場人物をまとめて掲載しています。
20150325公開
20150426修正
市議当選回数修正
守 春香 高校2年生 17歳 先祖返り 本編主人公
貴志 大学3回生 21歳 遺伝発現者 春香の兄
真理 社会人 23歳 遺伝発現者 春香の姉
徹朗 会社社長 50歳 遺伝未発現者 春香の父
幸恵 主婦 48歳 遺伝未発現者 春香の母
妙 隠居 75歳 遺伝発現者 春香の祖母
佐々 優梨子 高校3年生 18歳 遺伝発現者 春香の従姉
雅司 高校1年生 16歳 遺伝発現者 春香の従弟
俊彦 教授 48歳 古人類学者 春香の叔父
瑠衣 主婦 44歳 遺伝未発現者 春香の叔母
宮野 留美 高校2年生 17歳 春香の親友
吉井 真里菜 高校2年生 17歳 春香のクラスメート
橋本 翼 高校2年生 17歳 春香のクラスメート
高木 良雄 高校2年生 17歳 春香のクラスメート
河内 唯 高校2年生 17歳 春香のクラスメート
上代 賢太郎 高校2年生 17歳 春香のクラスメート
鈴木 美羽 幼稚園年長組 5歳 拉致事件の被害者
鈴木 珠子 主婦 26歳 美羽の母親
西山 努 学者 62歳 系外惑星研究
大前 聡史 学者 47歳 植物生理生態学
佃中 竜二 市議会議員 42歳 当選1回
金澤 達也 市議会議員 36歳 当選2回
清水 孝義 自衛官 48歳 陸上自衛隊特殊作戦群群長兼派遣部隊司令
関根 昌幸 自衛官 28歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊小隊長 二尉
富澤 秋定 自衛官 31歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 一曹
大野 毅 自衛官 30歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 一曹
山本 文夫 自衛官 28歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 二曹
木村 光男 自衛官 27歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 二曹
桜井 敦 自衛官 29歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 二曹
藤田 勝利 自衛官 27歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 二曹
宮崎 利光 自衛官 23歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊 三曹
玉城 勇 自衛官 25歳 陸上自衛隊特戦群第一中隊第三小隊 三曹
沢野 信弘 自衛官 32歳 陸上自衛隊特戦群第一中隊第一小隊小隊長 二尉
秋山 昭二 自衛官 28歳 陸上自衛隊第37普通科連隊第一中隊第一小銃小隊小隊長
三井 一郎 自衛官 29歳 37普連1-1 二曹
巽 了一 自衛官 24歳 37普連1-1 士長
河野 聡史 自衛官 28歳 37普連1-1 一士
田中 良三 自衛官 21歳 37普連1-1 一士
西田 裕士 自衛官 22歳 37普連1-1 二士
若松 唯夫 自衛官 19歳 37普連1-1 二士
北谷 一也 自衛官 22歳 37普連1-1 士長
加藤 徹 自衛官 21歳 37普連1-1 一士
小林 明 自衛官 22歳 37普連1-1 小隊本部付 一士
川口 信夫 自衛官 34歳 37普連1-1 小隊本部付 一曹
坂口 文也 自衛官 26歳 37普連1-1 小隊本部付 三曹
山口 和男 自衛官 26歳 37普連1-3 小隊長 二尉
川田 明彦 自衛官 30歳 37普連1-3 二曹
岸部 健 警察官 28歳 大阪府警第三機動隊第二中隊第一小隊小隊長
日下部 淳 警察官 24歳 大阪府警第三機動隊第二中隊第一小隊
兵頭 春雄 警察官 25歳 大阪府警第三機動隊第二中隊第一小隊
ロバート・J・ウィルソン 31歳 USMC第31海兵遠征部隊選抜チーム隊長 大尉
ウィリアム・H・ダントン 22歳 USMC第31海兵遠征部隊選抜チーム 三等軍曹
あらすじ
巨人に蹂躙され、拉致された大阪狭山市の市民たち。
そして決行された二つの軍事作戦。
戦死者も出した作戦は成功するが・・・・・
8-01 『市議』 西暦2005年10月28日(金)朝
そのテントの中は沈んだ雰囲気に満ちていた。
そこでは自衛隊と機動隊が共催した拉致被害者代表との初の会合が開かれていた。
参加者は、自衛隊側が派遣部隊司令部から6名と機動隊の小隊長2名、学者グループからは守貴志を含めた6名、救出された拉致被害者の中で公職に就いている4名と、生き残っていた自主防災組織関係者2名、アメリカ海兵隊派遣部隊から1名、米政府が派遣した民間人1名の計22名だった。
場の空気が沈んでいる理由は、拉致された人々がこの世界に来て以降の出来事の説明が終わったからだ。
日本に還る手段、狭山池の底に繋がる特異点が完全に消滅している事を改めて告げられた時には、市役所職員で生き残った2名の女性が泣き出していた。
陸自特殊作戦群の第2科長の説明は続いた。
「次に、運搬済みの食料に関してですが、持って来ていた約13000食の戦闘糧食Ⅱ型は残り9989食となっております。現在、麦の刈り入れをしてくれている現地人を除外した人数、すなわち我々の人数が862名ですから、単純計算で11回強の食事で尽きます」
拉致被害者だった6名の顔色が変わった。
「まさか隠していないだろうな! 自分達でこっそり食べるとかしていないだろうな?」
そう言って声を荒げたのは、総合防災訓練に招待された市議で生き残った2名の市議の内の1人だった。
そして、彼、佃中竜二市議こそが拉致被害者救出作戦『始まりの日』を失敗に陥れそうな行為を行った人物だった。
「その様な事は断じて有りません。保証します」
「そんな口先の言葉なんか信じられるか! 食糧は優先的に市民に・・」
なおも言いつのろうとした市議の言葉を遮ったのは西山努教授だった。
その声は静かながらも力がこもったものだった。
声の成分の半分は怒りが込められていた。
「知らないと思うのでお教えしますが、自衛隊の皆さんはあなた達を救助した後、1回分の食事を抜いていますよ。今もなお、周辺の警戒や、巨人たちの遺体処理に追われているにも関わらず、1食抜く意味がお分かりですか?」
「そんなのは当然だ! 我々は拉致されてから碌な食事を摂れなかったんだ。優先的に回すのが当然だろ?」
「巨人たちがこの砦を取り返す為にやって来た時に、栄養不足で体力が落ちた自衛隊員で果たして勝てるのでしょうかねえ。むしろ、この砦に残っていた食料や収穫中の麦の有効利用と周辺の動植物をどうやって食糧として調達するのかを考えるべきでは無いのでは?」
「そんなのは、そっちがすればいいだろ! 市民に選ばれた市民代表として優先的に戦闘食の配給を断固として要求するぞ!」
西山教授の反応は肩をすくめる事だった。
その表情には、『ダメだ、こいつ』としか捉えようの無い意志が込められていた。
続いて発言したのは大前聡史教授だった。
「自分の職責を取り違えるにも限度が有るでしょう。卑しくも政治家なら、もっと長期的な視野に立った政策を考えるべきでしょう。それとも何か方策をお持ちですか?」
「何故、自衛隊の肩を持つんだ! 丸め込まれたのか? そもそも、どうして学者風情がこの場に居るんだ?」
「佃中先生、この会合の最初に説明された主旨を理解していますか? 現在の状況を共有する為にと説明されたでしょ? 私たちはその説明の為に同席しているのですよ?」
「ふん、どうせ、自衛隊の味方を多く参加させて、自分達の都合の良いようにする為だろ?」
「まあ、あなたの中ではそうなんでしょ。これじゃあ、助ける為に死んで行った機動隊員や自衛官が浮かばれんな」
「仕事をしただけだろ? それで死んだら2階級特進も貰えるんだから、いい仕事じゃないか?」
一気に悪化した空気を変えたのは、第2科長の下にもたらされた報告だった。
メモを渡された第2科長は一読した後、顔を清水孝義司令に向けた。
「司令、新たな人類種との接触の許可をプリンセス3が求めて来ています」
状況は更に混迷を深めつつあった。
如何でしたでしょうか?
まあ、ここまで酷い市議先生は居ないでしょう(^^;)
とは言え、この様な要求が出て来ないとも言い切れません(--;)
早くも内部分裂の予感がする今日この頃・・・・・・・