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エピソード1「始まりの日」編 エピローグ

『始まりの日』編エピローグを公開します。


20150318公開

20150516修正

登場人物紹介

 守   春香  高校2年生 17歳 先祖返り   本編主人公

     貴志  大学3回生 21歳 遺伝発現者  春香の兄

     真理  社会人   23歳 遺伝発現者  春香の姉

     徹朗  会社社長  50歳 遺伝未発現者 春香の父

     幸恵  主婦    48歳 遺伝未発現者 春香の母

     妙   隠居    75歳 遺伝発現者  春香の祖母

佐々   優梨子 高校3年生 18歳 遺伝発現者  春香の従姉

     雅司  高校1年生 16歳 遺伝発現者  春香の従弟

     俊彦  教授    48歳 古人類学者  春香の叔父

     瑠衣  主婦    44歳 遺伝未発現者 春香の叔母





 守徹郎・幸恵夫婦と、佐々俊彦・瑠衣夫婦は沈痛としか表現できない表情で式典に参加していた。

 会場となった大阪狭山市文化会館(SAYAKAホール)の、最大で1,208名が収容可能な大ホールは厳粛な雰囲気に包まれていた。


 その会場では、去年の10月23日に勃発した『大阪狭山市の惨劇(通称「狭山事変」)』で死亡した市民と行方不明になった市民の慰霊式典が営まれていた。


 市民等民間人の死亡者数117名。

 行方不明499名。

 大阪狭山市市長及び市議会議員の死亡者5名

 行方不明2名 

 大阪狭山市市役所職員の死亡者数28名。

 行方不明5名。

 殉職した消防官17名。

 殉職した機動隊員・警察官1078名。

 行方不明49名。

 殉職した自衛隊員397名。

 行方不明491名。

 行方不明のアメリカ海兵隊員62名。

 行方不明のアメリカ民間人12名。


 自然災害を除くと、戦後最大の犠牲者を生んだ惨事の慰霊式典が、厳粛としか言いようの無い雰囲気で営まれない理由は無い。


 参加者も天皇皇后両陛下を始め、絞り込んだ政治家と、犠牲もしくは行方不明となった651名に及ぶ市民などの遺族が大ホールは勿論、その様子を伝える小ホール、コンベンションホールに詰めかけていた。

 そして、それらのホールは、あの日、犠牲になった被害者の一時的な遺体安置所となっていた場所でもあった。


 式典が終わり、会場から出て来た守、佐々両夫婦を、守一族に連なる全員が迎えた。

 彼らは無言で守本家の邸宅まで歩いた。

 リビングは、この日の為にテーブルが増設されていて、全員が正月に集まる時のそれぞれの定位置に腰を落ち着けた。

 だが、3人分の空間が埋まる事は無かった。

 守真理が配膳するお茶が目の前に置かれた時に発する感謝の言葉以外には無言の時間が続いた。

 全員分にお茶が配膳された後で、守家当主の徹郎が口を開いた。


「みんなも確信していると思うが、優梨子君、貴志、春香の3人は必ず生きている」


 その声音は希望的観測を含まずに断定する力に満ちていた。

 この場に居ない3人は、公的な調査に向かった貴志を除いて2人の女子高生は巨人による拉致の被害者扱いとされていた。


「とはいえ、悲しみが減るものでは無い事も事実だ」


 愛娘の優梨子を送り出す時に涙に暮れた佐々瑠衣が、思わずハンカチで両目を拭った。

 彼女は複雑な気持ちに苛まれていた。

 貴志があちらの世界に向かったのは夫の俊彦による依頼であり、その責任は取らなければならない。

 だが、優梨子があちらの世界に向かったのは、その貴志の要望だったのだから。


「残された我々に出来る事は、3人を悼むのではなく、彼らの幸せを祈る事だと思う。みんなも私と同じく、彼らの幸せを祈って欲しい」

 

 

 その夜の献立は、『車海老の天ぷら』『ふろふき大根』『出汁巻き卵』『焼肉』の4品だった。

 それは、守本家と佐々家の全員が参加した両家族の最後の晩餐に出た食事でもあった。

 

如何でしたでしょうか?

 これでエピソード1『始まりの日』編は終了となります。

 次回からは新たなエピソードに突入予定です。

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