第43話 7-8 「残留せし者たち」
第43話を公開します。
20150312公開
20150413一部修正
春香たちの目的地を修正
あらすじ
巨人に蹂躙され、拉致された大阪狭山市の市民たち。
救助された被害者たちと救助した者たちの運命は?
救出作戦の結果、もたらされる影響とは?
7-8 『残留せし者たち』 西暦2005年10月27日(木) 午前5時00分
守春香は顔馴染の秋山二尉、岸部警部補、小林一士に連れられて砦に向かっていた。その間の会話は両部隊とも負傷者を出す事も無く無事に任務を終えた事や危なかった作戦の事などだった。
東の空は真っ赤に染まっている。
もういつ朝日が昇ってもおかしく無い時間だった。
砦に近付くにつれ、自衛隊と機動隊がしている作業が見えた。
「今は砦の中を住める状態にする為の作業中だ」
秋山二尉の説明はオブラートに包んでいたが、実際は巨人の遺体の搬出作業中だった。
巨人の体格が大き過ぎて1台のリアカーでは運べない為に、前後から2台のアルミ製リアカーを縄で括って連結をしていた。
「新品のリアカーですね?」
「ああ、駐屯地に有る奴は折りたためないので臨時に購入した分だ。まあ、なんだかんだで30台ほどはこっちに持って来ていたから、橋頭堡から物資を運ぶのに活躍してくれた。でなければ運搬作業だけで時間が掛かってしまっただろう」
補足する様に岸部警部補が言葉を継いだ。
「もっとも、かなりの台数分を送り込んだのは警察だったりする」
「えーと、縄張り争い?」
「まあね。警察庁としては最初に発見された拉致被害者の遺体回収を自分たちの手でする気だったんだ。上層部の狙いは分からんでもないが、金に糸目を掛けずにかき集めて機動隊の手で搬出する事で国民にアピールする気だった。ま、結局はその目的では使われなかったが」
「でも、リアカーが30台も有れば、今後の役に立ちますね」
「それは自衛隊が保証する。リアカーは人類最強の人力運搬車だからな」
かれらは外門に続く坂道を昇った。石段の半分くらいにはリアカー用の板が敷いてあった。
砦の外門をくぐって、内門から内部に入ると、広場の一角に大きなテントが張られていた。
「巨人の遺体の搬出が終われば、救出された市民たちに食料の配給が予定されている。もっとも、その後に予定されている説明前に懐柔しておく意味合いも高いがね」
「『 An army marches on its stomach』・・・」
「まあ意味合いは違うが、まずはお腹を満たす効果は有る」
彼女らは内門からそのまま真っ直ぐ進んだ。
目的地は広場の端っこ、木造建物が並ぶ一角の手前だった。
春香の目には90人ほどの原住民がこちらに向かって胡坐をかいた状態で左手を地に附いて頭を下げているのが分かった。
年齢構成は少し歪だった。子供の姿がほとんど無い。
「君の兄さんの話では、あの連中の対応に君の力が必要という事だ」
春香は無言で頷いた。
原住民の集団の手前で途方に暮れた自衛隊の清水司令を始めとした幹部たちに混じって学者集団が居た。
その中から、出迎えに守貴志が出て来た。
「悪いな、せっかく留美ちゃんと再会したばかりなのに」
「仕方ないわ。それより貴ニィ、説明して」
「自衛隊がいくつかの建物に突入した時、全員が今の様に座り込んでいたそうだ。もっともその手前にはそれぞれ数人の原住民が縄で縛られていた。巨人も一人混じっていたがな」
「仲間割れ? とは違うわね。もしかして縛られていた原住民は刺青が無かったりした?」
「さすがに春香は話が早い」
「微かだけど、『ご先祖の脳波』らしきものが全員から感じられるもの。血が混じっている。麦畑の作業に駆り出されていたのは分かっていたけど、監視役には刺青は無かったし、『ご先祖の脳波』も感じなかったから。となると、考えられるのはここに居るのは被征服者と言った所かな?」
「そこまでは俺の見解と一緒だ。そして結論は一つに落ち着くな」
「古文書に書かれていた、ご先祖さん達が地球に逃げ出す時に残留した人たちの末裔・・・ 信徒が15人と奴隷が217人だったから、近親交配を繰り返している内に血が混じったのね」
春香は兄の方を向いて訊いた。
「貴ニィ、彼らの前で『ご先祖の脳波』を出した?」
「いいや、出していない。だからお前を呼んだ」
「これって・・・」
「そう、彼らにすれば、伝説でしか知らないこの地を去ったご先祖様の帰還だ」
「いやよ、教祖になるのは」
「諦めろ。そして、早急に言葉を解析しろ。これからの生活基盤を考えると彼らの協力は不可欠だ」
「仕方ないか・・・」
貴志は笑顔になると春香の肩を叩いた。
「もしかしたら自覚していないかも知れないが、春香、地が出てるぞ」
「え、マジ? ほんと? ハルカワカンナイ」
「もう遅い。さあ、やってやれ」
春香は苦笑いを浮かべた後で、『ご先祖の脳波』を出すべくギアを入れた。
効果は絶大だった。
全員が両手を附いて、更に頭を下げた。
中には涙を流す者もいた・・・・・・
如何でしたでしょうか?
元々、この回で出て来る「残留せし者たち」の末裔はエピ7の『姫来て』にも出て来ていません。
もしかして黒歴史と化すのでしょうか?
というのは嘘で、エピ1の『始まりの日』を書き進めている内に追加した設定です。
ですから、徐々に最初の構想・設定から緩やかにズレて行っています。
それと、毎回冒頭に登場人物紹介と三行あらすじを入れています。
うっとうしいと思う方も多いかと思いますが、これはmrtkの経験上、入れておいた方が良いと考えての事です。
沢山ブックマークをしていると、時々「どんな話だっけ? 誰が主人公だっけ?」となる時が有るからです。
まあ、物覚えの悪いmrtkだけの現象かもしれませんが(^^;)
(呆けが始まっている証拠かもしれませんけどね(;;)
P.S.
あと少しで本エピソード『始まりの日』が終わります。
エピソード7『姫様が来たりて』の時は別小説にしましたが、今回はそのままエピソード2に繋げる予定です。
ちょっと悩んでいるのは、小説の題名をそのままにして書き続けるのか? それとも改題するのか? です。
うーん、どうしよう(・_・;)