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第41話 7-6 「殲滅戦」

第41話を公開します。


20150305公開


7-6 『殲滅戦』 西暦2005年10月27日(木) 午前3時26分


 緑色が基調の視野に数条のまぶしい物体が空に駆け上がって行くのが見えた。

 砦の方向に視線を向けると、同じ様な光景が目に入った。

 拉致被害者救出作戦が第二段階に移ったのだ。

 と同時に、敵増援部隊の殲滅戦も開始される。

 だが、攻撃の開始は小銃の発砲音では無かった。

 砦の方向から重砲並みの発砲音が鳴り響いたからだ。

 

『戦力を二つに分けるのですか?』

『砦から撤退したと思われていた部隊が、敵の増援部隊と思われる中隊規模の歩兵部隊と接触した。場所はこの辺りだ』


 そう言って、特殊作戦群本部の第2科長がA2サイズの写真の一角を指し示した。

 守春香が撮影した、この高原を高度7000フィートで撮影した写真はA4サイズで印刷されて、各部隊に配布されていた。

 第2科長が位置の説明に使っているのは、A4サイズの印刷紙を4枚重ねて大きく拡大したモノだった。

 

『わざわざ砦から出迎えの部隊を出す意味はほとんど無い。となれば考えられるのは合流後に遠回りをしてこちらの背後に回り込む積りだろう』

『包囲されている事に気付いているとお考えですか?』


 ロバート・J・ウィルソン大尉の質問に答えたのは自衛隊派遣部隊司令の清水一佐だった。


『可能性の一つだ。気付いていないとしても、合計300人に膨れ上がった巨人部隊は脅威だ。砦に戻るにしろ、こちらの背後に回り込むにしろ、叩けるうちに叩いておきたい。それも・・・』


 清水一佐は少し言いよどんでから決意を込めて言い切った。


『こちらの情報が漏れない程のレベルでだ』


 こうして、拉致被害者救出作戦と同時進行で実施される迎撃作戦が立案された。

 両作戦を区別する為にそれぞれに作戦名が付けられた。

 救出作戦に投入される戦力は、


 特殊作戦群隊員:  72名   3個小隊

 各連隊普通科隊員:116名   4個小隊

   小計    :188名   7個小隊

 機動隊員    : 49名   2個小隊

   総計    :237名   9個小隊


 迎撃作戦に投入される戦力は、


 各連隊普通科隊員:231名   8個小隊

 アメリカ海兵隊 :62名  増強1個小隊

   総計    :293名   9個小隊


 とされた。

 司令部や支援部隊を除いた全兵力を投入する計画だった。



 10秒間に及ぶ重砲の様な発砲音が途絶えた後で聞えて来たのは、頼りなく聞えてしまう小銃の発砲音だった。

 巨人たちが通った経路から100ヤードくらい離れていて、微妙な高台になっているこの辺りは、確かに待ち伏せに最適だった。

 高台と言う事と、1ヤードほどの岩があちらこちらに散らばっている事が麦畑にされなかった理由だろう。

 ウィルソン大尉が率いるアメリカ海兵隊増強1個小隊と自衛隊第37普通科連隊1個小隊の役割は撤退する巨人部隊の殲滅だった。

 ある意味、巨人たちに勝ち目は無い。

 その行動は全てこちら側に筒抜けで(2人の少女の存在は奇跡的な幸運としか言えなかった)、地理の把握さえもこちら側が圧倒的に有利と来ている。

 更に、兵器や装備の質も全くレベルが違う。

 


 主力部隊と巨人部隊の交戦は思ったよりも長く続いた。

 ひっきりなしに照明弾が打ち上げられていた。

 暗視装置が配備されていない為に自衛隊の夜間戦闘力が低い弱点を補う為とはいえ、この調子で行くと今回の戦闘が終わった後には備蓄はほとんど残らないだろう。

 巨人たちの撤退が始まったのは30分ほど経ってからだった。

 数人から10人くらいでグループを組んで撤退している様子が暗視装置越しに見え始めた。

 計画では引き付けてから発砲する予定だったが、思ったよりも撤退に移れた巨人の数が多い。


「中隊長、どうしますか? 思ったよりも奴らタフですぜ」


 10フィート弱離れた位置から、ウィルソン大尉直衛の分隊を率いるダントン3等軍曹が小声で尋ねて来た。


「どうするもこうするも、計画通り、自衛隊部隊の攻撃のサポートに徹するさ」

「サーイエッサー」


 ダントン3等軍曹の心配はもっともだった。

 自衛隊主力の攻撃が緩かった訳では無い。それは銃声の密度で分かる。

 だが、巨人のタフネスさは事前の予想を超えていた。

 カウンターパートナーの第37普通科連隊の小隊が発砲を始めたのはそれから1分後だった。

 



「ビョ槍兵! 矮人の攻撃が止まったら、左半隊を率いて右側の敵に向かえ! 出来るだけ頭を低くして動け! 残りは真正面の敵に向かう!」


 ラ・ス・グ・ジェ槍士は部下をなんとか掌握していた。

 彼らは、矮人の奇襲に完璧に嵌まっていた。

 最初の一撃で第7332槍兵木隊の3分の1は行動不能に陥っていた。残りは身を伏せて矮人の攻撃をかろうじて躱していた。奇襲を受けてから15小時長(約15分)も経たない内に戦力は半分を切っていた。

 先ほどまで止血を試みていたグ槍兵、ミョ槍兵、バ槍兵も今では身動き一つしていない。

 ジェ槍士も最初の攻撃で数発の鏃を受けている。

 それは、以前に受けた鏃とは比較にならない威力だった。

 現に、左上腕に受けた傷のせいか、左手の感覚は無くなっていた。

 腹部に受けた鏃の影響で左腹部からの出血も止まらない。

 それほど時間が掛からずに行動不能となるだろう。


「リュ! そっちも半分回せるか?」

「ああ! だが半分くらいやられたんで、動ける奴全員で貴様の後に続くぞ!」

「分かった! ヂュ槍士は無事か?」

「はい! 2発喰らいましたが、動けます!」

「どれくらい動ける?」

「3分の1くらいはなんとか!」

「分かった! ヂュ槍士は右側の矮人の攻撃を手伝ってくれ!」

「了解です!」


 このまま、ここで釘付けにされたら確実に全滅するだろう。

 それほどに矮人の攻撃は容赦が無かった。

 先鋒の自分達の全滅と引き換えに増援に来た部隊を逃がすくらいはしないと、この厄介な敵の情報が本国に伝わらない。

 彼は自分達の離脱を諦めていた。

 


「ジェ槍士!  第7335弓兵木隊の支援はどっちを優先させる?」

「右側の敵に集中させて下さい! ただし、身を起こさずに伏せたままで結構です!」

「分かった! 聞こえたな?」

「はい!」


 第7335弓兵木隊の弓士は最初の攻撃で死んでいた。今はギュ剣士が直接指揮を執っていた。


「ジェ槍士、合図は任せる!」

「有り難う御座います! ロ! レ! ル! リ! 行け! 行け!」


 そう叫びつつ、ジェ槍士も身を起こして、正面の矮人部隊に突撃を掛けた。

 


 グザリガ第733剣士鉄隊の全滅という犠牲により、増援部隊は被害を出しながらも辛うじて撤退を開始した。




 だが、彼らもごく少数を除いて、本国に戻る事は無かった。







如何でしたでしょうか?

 色々と悩みましたが、最初の原案通りに主要キャラのお一人は退場となりました・・・

 いや、もしかしたら、また登場するかも(^^;)

 その時は、『お前はデスラ●総統か!!』と突っ込んで下さいませ(^^;)

 (うん、ほとんど伏字の意味が無い (^o^;))

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