第40話 7-5 「或る少女の笑顔」
第40話を公開します(^^)
今話は、全然話が進みません m(_ _)m
登場人物紹介
守 春香 高校2年生 17歳 先祖返り 本編主人公
貴志 大学3回生 21歳 遺伝発現者 春香の兄
真理 社会人 23歳 遺伝発現者 春香の姉
佐々 優梨子 高校3年生 18歳 遺伝発現者 春香の従姉
清水 孝義 自衛官 48歳 陸上自衛隊特殊作戦群群長兼派遣部隊司令
秋山 昭二 自衛官 28歳 陸上自衛隊第37普通科連隊第一中隊第一小銃小隊小隊長
関根 昌幸 自衛官 28歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊小隊長
ロバート・J・ウィルソン 31歳 USMC第31海兵遠征部隊選抜チーム隊長 大尉
ウィリアム・H・ダントン 22歳 USMC第31海兵遠征部隊選抜チーム 三等軍曹
7-5 『或る少女の笑顔』 西暦2005年10月27日(木) 午前3時12分
ロバート・J・ウィルソン大尉は彼らUSMC第31海兵遠征部隊選抜チームの横に布陣している自衛隊の部隊の様子を窺った。
何度か陸上自衛隊の部隊と合同演習をした事が有る彼の意見として、自衛隊の普通科(日本だけの変な呼称だが他国では歩兵に当たる。日本に詳しい彼は日本人と話す時にはちゃんと普通科と発言していた)部隊で最も高い技能は野戦築城能力だと思っている。
なんせ、日本人特有の生真面目さか、全員がとにかくきちんと掩体を規格通りに作るのだ。
50㌢ほどの円形と四角形を組み合わせた様な穴を、深さ4フィート(120㌢)から5フィート強(160㌢くらい)までシャベルで段を付けて掘り続ける姿はDevil Dogsには真似の出来ない事だった。
偶然な事に、グアムで去年の10月に市街地戦のノウハウを教えた事もある、現在はカウンターパートナーとなっている自衛隊の第37普通科連隊の小銃小隊は、彼の目から見ても完全に姿を隠ぺいしていた。
もし、そこに居る、と知らなければ、気が付かないだろう。
更に彼らはヘルメットや戦闘服のあちらこちらに草や小枝を固定して、自然に溶け込む事までしていた。
彼は腕時計で時間を確かめた。
事前の打ち合わせでは、あとしばらくすると自衛隊が砦を奇襲する筈だ。
周囲の警戒を続けながらも、彼は前日の合同作戦会議前の事を思い出していた。
今回の遠征は驚きの連続だったが、最大の驚きは自衛隊の司令が紹介してくれた2人の少女だった。
どう見てもハイスクールに通うくらいにしか見えない。
片や見ようによっては特殊部隊が着る市街地戦用の戦闘服に見えなくもない黒い服装で、片や完全に自衛隊が装備している迷彩服姿だった。
「ウィルソン大尉、紹介します。訳有って協力して貰っている佐々優梨子君と守春香君です」
「そう言えば、先ほど、春香さんの名前が出た記憶が有ります。本人ですか?」
「ええ、あの巨人の砦の空撮映像を撮影してくれたのは彼女です」
「いいのですか? 自衛隊の秘密兵器でしょ?」
わざと冗談めかして言うと、清水一佐(大佐)は首を振りながら答えた。
「まさか・・・ 純粋に民間人ですよ。佐々君、守君、こちらは応援として来てくれたアメリカ海兵隊の隊長のウィルソン大尉だ」
2人の少女はそれぞれ異なる質の笑顔を浮かべて、自己紹介をした。
「佐々優梨子です。お会い出来て光栄です」
「守春香です。お手柔らかに」
2人の笑顔の質が対照的過ぎて、不思議に思いながらウィルソン大尉も自己紹介をした。
「初めまして、お嬢様がた。私の名前はロバート・J・ウィルソンと言います。以後、お見知りおきを」
とっておきの笑顔を浮かべて挨拶した効果は、大人しそうな少女にはてきめんに現れた。
顔を真っ赤にしたのだ。
対するやや鋭い印象を抱かせる少女の方は全く変化が無かったばかりでなく、軽く頷くと質問をして来た。
「本気を出して闘って貰えると考えてもいいですか?」
「もちろんです。戦場で本気を出さない愚か者の末路は決まっています」
とっさに答えたが、答えた後で少女の雰囲気が一変した。
周囲の空気を凍らせる程の圧迫感が少女から放たれた。
一切の会話が途絶えた中、彼女が真剣な表情を浮かべて言葉を発した。
「その言葉を信じましょう」
途端に圧迫感は霧散した。
「疲れているので、失礼します。清水司令、非礼をお詫びします」
そう言うと、彼女はテントを足早に出て行った。
大人しそうな少女はウィルソン大尉と清水司令にペコリと頭を下げると、出て行った少女を追い駆ける様にテントを出て行った。
その際もみんなにペコペコと頭を下げていたのが印象的だった。
「すまない、みんな! 彼女は友達を巨人にさらわれて気が立っているんだ。許してやってほしい」
清水司令が全員に聞こえる様に今の一幕の説明した。
ウィルソン大尉の方に向き直ると、笑顔を浮かべながら改めて謝罪の言葉を述べた。
だが、その目は笑っていない。
「ウィルソン大尉、どうか彼女の非礼を許してやって欲しい。彼女は真剣に友達を助けたいと願っている。今から協議する作戦も彼女の志願が有って成り立っている部分が含まれている」
「まさか、戦闘に参加するのですか?」
「そうだ。それに信じられないだろうが、彼女はもうコンバットプルーブンを済ませている」
「まさか・・・・・」
ウィルソン大尉は絶句してしまった。
「もちろん、我々が命令した訳でも、依頼した訳でも無い。自分の意思で戦ったという事だ」
「信じられない・・・ 平和ボケ・・ 失礼、平和な国の日本人が、しかもハイスクールに通う様な女の子が巨人を相手に自ら進んで戦うなんて、理解出来ません」
「報告を聞いた限り、もう10人くらいは殺しているよ」
再びウィルソン大尉は絶句してしまった。
作戦会議の途中で気付いたが、少女のファミリーネームは例のカレッジの学生と同じだった。
後で確認したが、兄妹という事だった。
作戦が終わって落ち着いた後で、ウィルソン大尉は守春香に直接尋ねた事が有った。
どうして、あの時、脅す様な事をしたのか? という質問に、彼女は懐かしそうな表情で答えた。
『そんな事もありましたね・・・・ まあ、私の「若気の至り」って奴です』
そう言って、彼女は一見、屈託の無い笑顔を浮かべた。
だが、特徴的なその目は笑っていなかった・・・・・・・
ウィルソン大尉は生涯、その笑顔を忘れる事は無かった・・・・・・
如何でしたでしょうか?
いや、春香さん、貴女に「自重」という言葉をお教えしたい(^^;)
なんだか、その内、「狂犬」というあだ名が付きそうな気がするのは気のせいでしょうか(^^;)
と言う訳で、恒例の簡単な補足をします。
【グアムで去年の10月に市街地戦のノウハウを教えた事もある】
当時はイラクのサマワに陸自が人道復興支援で派遣されていました。
近代的な市街地戦のノウハウが無い陸自は合同演習と言う形でノウハウを学んでいました。
【最も高い技能は野戦築城能力だと思っている】
らしいですよ(^^)
【Devil Dogs】
その他、Marinesとか、Leatherneckとか、Jarheadとかが有ります。




