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第31話 6-11 「第31海兵遠征部隊」

20150131公開

登場人物紹介

 守   春香  高校2年生 17歳 先祖返り   本編主人公

     貴志  大学3回生 21歳 遺伝発現者  春香の兄

     真理  社会人   23歳 遺伝発現者  春香の姉

     徹朗  会社社長  50歳 遺伝未発現者 春香の父

     幸恵  主婦    48歳 遺伝未発現者 春香の母

     妙   隠居    75歳 遺伝発現者  春香の祖母

佐々   優梨子 高校3年生 18歳 遺伝発現者  春香の従姉

     雅司  高校1年生 16歳 遺伝発現者  春香の従弟

     俊彦  教授    48歳 古人類学者  春香の叔父

     瑠衣  主婦    44歳 遺伝未発現者 春香の叔母


清水   孝義  自衛官   48歳 陸上自衛隊特殊作戦群群長兼派遣部隊司令

秋山   昭二  自衛官   28歳 陸上自衛隊第37普通科連隊第一中隊第一小銃小隊小隊長

関根   昌幸  自衛官   28歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊小隊長


ロバート・J・ウィルソン   31歳 USMC第31海兵遠征部隊選抜チーム隊長 大尉

ウィリアム・H・ダントン   22歳 USMC第31海兵遠征部隊選抜チーム   三等軍曹 



6-11.『第31海兵遠征部隊』 西暦2005年10月25日(火) 午後6時51分


 アメリカ海兵隊第31海兵遠征部隊選抜チームが、自衛隊派遣部隊の本部に辿り着いた時に感じた事は、自衛隊部隊に漂う“怒り”だった。


 イラクで実戦の洗礼を受けている隊員も居る海兵隊員にとって、自衛隊は士気も練度も高く規律正しいという美点が有りながらも、実戦経験が無い事と装備の貧弱さも有って、所詮は“地獄を見た事の無い軍隊もどき”という認識だった。

 だが、自衛隊の本部の周辺に居る自衛隊員はその様な認識から外れていた。

 纏っている空気が、これまでの自衛隊からは想像出来ない程に荒んでいたのだ。

 悪い方向に、では無い。

 命のやり取りをする為には必須の『敵を殲滅する』という明確な意思が漂っていた。

 その理由はすぐに判明した。


「今、お渡ししたのが最新の情報です。また、出所は明かせませんが、こちらが虐殺現場と“敵”の拠点を写した写真です」


 夜間に上空から撮影された写真はそれなりの情報を有していた。

 それ故に、2枚のA4サイズの写真を見たロバート・J・ウィルソン大尉は僅かに顔をしかめた。

 1枚目の写真に写っていた状況が、予想を超えていたからだ。

 そこには、草原の中にある踏み固められた小道の横に投げ捨てられているかのような死体が多数写っていた。

 死体の数は少なく見ても200を超えていた。

 その全てが全裸であった。

 虐殺と略奪が同時に行われたと判断するしかなかった。

 もう一枚の写真に写っていた巨人の拠点はそれなりの大きさが有った。微かに判別できる人影から判断すると、1辺が1300フィートほどの正方形で、露光時間の影響か、詳しくは分からないが防壁にはキャットウォークらしき物が映っていた。

 ウィルソン大尉は両親がアメリカ海軍に在籍していた事から、少年時代を横須賀で過ごした。

 そのせいも有り、青年時代に日本に興味を抱き、独学で日本語を習得した経歴を持っていた。

 彼は流暢な日本語で尋ねた。


「GSDF(陸上自衛隊)に、夜間に上空から偵察が出来る装備が有りましたか?」

「ですから、出所は明かせないと断りましたが? 少なくとも、この2枚の写真は、“友軍”に対しての配慮です」

 

 ウィルソン大尉はチラッと自衛隊側の発言者を見た。

 どちらかと言えば、第一印象は控えめな印象を持っていた情報担当の将校だった。 


「分かりました。出所は探りません。それに、敢えて我々にこの様な情報を開示してくれたあなたがたの配慮に感謝を表明します」

「有り難う御座います。さて、現在、我々は虐殺現場に3個小隊を向かわせる準備を進めています。もし、希望するならば同行は可能ですが、どう致しますか?」


 ウィルソン大尉はしばし悩んだ後で返事をした。


「いや、よしておきましょう。我々もこちらに来たばかりですし、学者グループと打ち合わせをしたいですからね」

「分かりました。得られた情報はそちらにも流す事を約束します」

「ありがとうございます。では、一旦、席を外すとします。有益な情報をありがとうございます」


 第31海兵遠征部隊選抜チームは政治的な妥協から派遣規模が決められていた。

 元々アメリカ政府が要求していた規模は100人を超えていた。

 3個小隊と中隊本部の6人を加えた135人だった。

 だが、日本政府は50人以下を主張し、話し合いは平行線を辿った。

 最終的に1個小隊43人と、中隊本部の6人とその護衛の為の1個分隊を加えた62人に落ち着いていた。


「いかがでしたか、自衛隊とのミーティングは?」


 自衛隊のテントから出て来たウィルソン大尉に声を掛けて来たのは直営の護衛部隊として付けられた分隊の指揮を執るウィリアム・H・ダントン三等軍曹だった。   


「何かを隠している事は確実なんだが、それ以上に情報の公開が思っていたよりも多い」


 ウィルソン大尉は少し考えた後で付け加える。


「それと、彼らから初めて明確に“敵”という言葉を聞いた。これまでの演習では“赤軍部隊”とかぼかして言っていたのだがな・・・ 奴らは本気だ。 本気で闘う気でいる」

「そうは言っても、所詮は原始的な兵器しか持っていない相手です。さほど強敵とは思えませんが?」

「その通りなのだが、その割には自衛隊の犠牲が多いのが気になるな」



 彼らは未だ知らなかった。

 世界トップクラスの装備を持ち、実戦経験も豊富なアメリカ合衆国海兵隊でさえも大きな犠牲を出してしまう“戦争”に巻き込まれようとしている事に・・・・・



 

  

 

お読み頂き、誠に有難う御座います m(_ _)m



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