表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/151

第21話 6-1 「新世界へ」

かなり間が開きましたが、第21話をお送りします。

 第六章からは今までと違う構成になります。

 これまでは登場人物グループを個別で追い掛けて来ましたが、本章からは時系列に沿った形になります。

 それと、前回の投稿から間が開いたので簡単なあらすじを書いておきます。

【大阪狭山市を襲った未曽有の惨劇(異世界からの巨大な人類の侵略)は舞台を異世界に移しつつあった。その中で動き出した主人公の守春香も親友の宮野留美を助けるべく異世界へ行く事を決意した・・・】

 うーん、胡散臭い(^^;) 

 

20141218公開

登場人物紹介

 守   春香  高校2年生 17歳 先祖返り   本編主人公

     貴志  大学3回生 21歳 遺伝発現者  春香の兄

     真理  社会人   23歳 遺伝発現者  春香の姉

     徹朗  会社社長  50歳 遺伝未発現者 春香の父

     幸恵  主婦    48歳 遺伝未発現者 春香の母

     妙   隠居    75歳 遺伝発現者  春香の祖母

佐々   優梨子 高校3年生 18歳 遺伝発現者  春香の従姉

     雅司  高校1年生 16歳 遺伝発現者  春香の従弟

     俊彦  教授    48歳 古人類学者  春香の叔父

     瑠衣  主婦    44歳 遺伝未発現者 春香の叔母


秋山   昭二  自衛官   28歳 陸上自衛隊第37普通科連隊第一中隊第一小銃小隊小隊長

関根   昌幸  自衛官   28歳 陸上自衛隊特殊作戦群第一中隊第三小隊小隊長

三井   一郎  自衛官   29歳 37普連1-1 二曹

巽    了一  自衛官   24歳 37普連1-1 士長

河野   聡史  自衛官   28歳 37普連1-1 一士

田中   良三  自衛官   21歳 37普連1-1 一士

西田   裕士  自衛官   22歳 37普連1-1 二士

若松   唯夫  自衛官   19歳 37普連1-1 二士

北谷   一也  自衛官   22歳 37普連1-1 士長

加藤   徹   自衛官   21歳 37普連1-1 一士

小林   明   自衛官   22歳 37普連1-1 小隊本部付 一士

川口   信夫  自衛官   34歳 37普連1-1 小隊本部付 一曹

坂口   文也  自衛官   26歳 37普連1-1 小隊本部付 三曹

山口   和男  自衛官   26歳 37普連1-3 小隊長   二尉

川田   明彦  自衛官   30歳 37普連1-3 二曹


岸部   健   警察官   28歳 大阪府警第三機動隊第二中隊第一小隊小隊長

日下部  淳   警察官   24歳 大阪府警第三機動隊第二中隊第一小隊

兵頭   春雄  警察官   25歳 大阪府警第三機動隊第二中隊第一小隊



1.『新世界へ』 西暦2005年10月25日(火) 午前11時30分


「くれぐれもよろしくお願い致します。 と言っても、どちらかと言えば、春香を守ってもらうと言うよりも、暴走を停めて欲しいと言う方が正解の様な気がしますが・・・」


 そう言って若干の苦笑を浮かべた守徹郎の顔を見詰めた岸部警部補は、職務以上の感情を交えて答えた。


「勿論、自分で出来る最大限の努力を約束します」


 そう答えた後で、思わず言葉がこぼれた。

 その表情には警官と言う立場よりも、「父親」としての成分が多分に含まれていた。


「我が子を心配するのは当然ですから」

「警部補もお子さんが?」

「ええ。息子と娘が居ます。間が悪いことに、実家に遊びに来ていて、今回の騒動に巻き込まれています」

「それは心配でしょう。でも、その言葉の通りなら?」

「幸いなことに無事という報告を受けています」

「早く再会出来るといいですね」

「ええ・・・ 話しは変わりますが、庭の墓標は全てあの頃の動物たちのですか?」


 彼らがある意味、無駄話をする時間はあと数分あった。

 守姉妹は応接室で岸部の部下が手伝って防護服を着込んでいる最中だった。

 もっとも、それは只のアリバイ工作の様なモノだ。

 第一、防護服を着ている岸部たちが、生身で事件の初日を大阪狭山市で活動したのだ。

 もし、何らかの病原菌やウィルスに冒されているなら手遅れ以外の何物では無かったのだから。


「そうですよ。結局、あの子が拾って来た動物は47匹になりましたが、全て天寿を全うしました」

「そうですか・・・ あッ・・・」

「どうしました?」

「あ、いえ、ちょっと引っ掛かっていた事の答えに気付いたので・・・」


 徹郎は無言で続きを促した。


「我々救出部隊が危機に陥っていた時に、彼女が門を開けてくれたでしょう? その時に浮かべていた笑顔をどこかで見た記憶が有ったのですが、いつ、どこで見たのかを思い出せなかったのです。 でも、やっと、思い出せました。 あの笑顔は、拾って来た動物に向けていた笑顔だった・・・ 『もう心配ないよ、大丈夫だよ』と言いながら向けていた笑顔そのものでした・・・」


 岸部は思わず首を数回横に振った。

 そして、小声で囁いた。


「自分に向けられた事の無い笑顔だったんだ・・・ そりゃあ、思い出すのに時間が掛かる訳だ・・・」

「お待たせしました。 さあ、出発しましょう」


 守春香の声が岸部の囁きを遮った。

 防護服を着込んだ姉と手伝った岸部の部下、さらには家族を引き連れるかの様に先頭に立った春香が手を挙げていた。

 足元には大きな赤色と黒色のナイロン製のボストンバッグとゴルフバッグが置かれていた。


「春香さん、その足元に置かれているゴルフバッグの中には何が入っているのかを訊いても良いですか?」


 岸部の表情は酷い頭痛をこらえているかの様だった。

 対する春香は上機嫌な様子で答えた。

 もっとも、視線は姉の守真理に向けられていたが・・・


「日本古来の製法で作られた鉄の棒?」


 思わず噴き出したのは真理だった。


「春香、どう答えたって、銃刀法違反よ。素直に答えて、機動隊の管理物として運んで貰いなさい。それにしても何故疑問形なのよ?」

「だって、この子を一緒に持って行かないと、この子が寂しがるんだもん。置いて行けないわ。使う予定も無いから日本刀じゃ無くて、只の鉄の棒でいいかなって思って・・・」

「なんだか訊くのも馬鹿らしい気もしますが、そこの長い物体はなんでしょうか?」

「異国古来の製法で作られた鉄の棒!」


 最終的に2本の原産国が違う刀剣は、岸部たち機動隊が預かって行く事にした。

 いよいよ機動隊のバスに乗り込む時間が迫って来た。


「春香、絶対に無茶しては駄目よ」

「うん、分かってる。帰って来たら、また車海老の天ぷらを作ろうね」 

「真理、春香を止めてね・・・」

「大丈夫。伊達に17年間も春香の姉をやっている訳じゃないから。それよりもお母さんこそ、心配し過ぎない様にね」

「春香なら大丈夫だと思うけど、やり過ぎない様にね」

「いや、おばあちゃん、私、こう見えても常識人だから」

「真理、頼んだよ」

「うん、分かってる」


 家族の分かれの時間が迫っていた。


「じゃ、行って来るね」


 最後に交わした言葉は、守家次女、守春香の一言だった。

 まるで、近所のコンビニに買い物に行って来るかの様な気軽な一言だった。

 定員11名の機動隊の小型輸送車は守邸を出発すると、狭山池のほとりに建つマンションに向かった。

 そこでもう一人の同行者を拾う事になっていた。


「優梨子ネェとこ大丈夫かな?」

「ん? どうしたの、珍しく心配して?」

「だって、瑠衣叔母さん、心配性だから・・・」

「まあねえ、旦那さんだけでなく、娘まで行かされるのはさすがにきついかもしれないけど、大丈夫でしょ」

「どうして?」

「守の血を引いているから」

「ならいいんだけど・・・」


 彼女たちの叔母、佐々瑠衣は父親の徹郎の妹だった。

 嫁いだ先は大学の教授をしている佐々俊彦だった。

 その縁も有り、守グループは俊彦が計画する発掘調査にかなりの額の援助をしていた。

 特に守貴志は本人の趣味も有り、発掘調査にスポンサー側の一員として同行を何度かしていた。

 その事も有り、政府から“穴”の向こう側の調査を依頼された佐々俊彦は、貴志が同じ大学の学生という事もあり、調査団の一員に彼を紛れ込ませていた。

 後日、彼はその理由を妻に説明していた。

『援助してくれて来た事も有るけど、いざという時にはゼミの学生よりも彼が近くに居てくれた方が安心だと思ったんだ』

 俊彦の判断は正しかった・・・


 

 佐々優梨子は守春香とは対極に居る少女だった。

 大人しくて、控えめで、とことん真面目としか言い様が無い性格の高校3年生だった。

 ただ、彼女が守家の血筋だったという事実が彼女の人生を普通では無くしていた。

 だからこそ、今回の増員に選ばれていた。

 マンションのエントランス前に停車した輸送車に優梨子が乗りこんで来たのは停まってから20分後だった・・・・・

 

お読み頂き、誠に有難う御座います m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ