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第121話 第一次新世界大戦編1-04 「03式60㎜迫撃砲」

20160129公開

15-04 「03式60㎜迫撃砲」 新星暦4年11月5日 朝


 課業時間開始に合わせて、第40普通科連隊第3中隊第3小銃小隊は駐屯地のグランドで整列していた。

 その前には、新たに第3小隊に配属された15名の部隊が整列をしていた。

 足元には鉄製の筒や板、銃座に使う様な脚、更には高さ40㌢程の木箱がが置かれていた。

 モジス・ガウ三曹は、昨日の夕方前に到着して、そのまま一泊した増強部隊とは夕食と朝食で顔を合わせていたが、正式には今日から部隊に配属される事になっていた。

 その時の印象で言えば、隊員たちはまだ完全に自衛隊に馴染み切っていない雰囲気を感じていた。


「今日から我々の部隊に配属された迫撃砲班だ。耳慣れないと思うが、その威力と便利さは地球で実証済みだ。この後、射撃訓練場に移動後、その威力を実感してもらう。橋本一士、挨拶を」


 富澤秋定三尉の紹介で、橋本翼一士が列から抜け出た。


「今日からお世話になる迫撃砲班班長、橋本翼です。我が班は見ての通り、自分以外は皆さんと同じラミス王国出身者で占められています。入隊して1年と半年ほどですから不慣れな点も多々有るかと思いますが、ご指導を宜しくお願い致します」

「よし、まあ、時間はそれほどないが、早急に戦力として組み入れる訓練を重点的に行う。では、移動するぞ。各班、移動開始」


 密林の中の整備された道を行進して着いた場所は、ざっと300×700㍍ほどの四角く切り開かれた平地だった。平地と言っても結構高低差は有るし、高さ20㌢ほどの切り株も自然の時のまま残されていた。

 

 橋本一士の指示で1人の隊員が、足元を気にしながら駆けて行き、300㍍程離れた場所に白い布を上部に巻き付けた長さ2㍍程の旗にも見える棒を突き刺した。


「さて、諸君は迫撃砲というものを知らないだろうから、一度、その威力を見て貰う。ただ、この兵器は小銃と違って、発射までに必要な時間が長い。その辺りも実感してもらう為に迫撃砲班の展開から発射、移動までの流れを実際にやって貰う。質問はその後だ。では、橋本一士、状況を開始してくれ」

「はい。1班、2班、3班、展開開始!」


 橋本一士は班名を上げる度に場所を指差して行った。展開の命令と共に、1組4人の計12名がそれぞれに資材を持って指定された位置に散った。

 それを監督している橋本一士の横で、2人のラミス王国出身の隊員が目標の旗の方を見て、何やら打ち合わせをしていた。結論が出たのか、持っていた板に何かを書き込んだ後で橋本一士に声を掛けて、何かを報告する。

 報告を聞いた橋本一士がじっと旗を見てから何かを2人に伝えると、板に書き込みを加えた。

 その間に3つに分かれた迫撃砲班の準備が進んでいた。3人が筒とそれを斜めに支える脚部を組み合わせて、今は照準器らしい器材を取り付けている最中だった。その間、残る1人が持って来ていた木箱から長さ40㌢程の鉄製の筒を引き出しては中から細長いが丸みを帯びた鉄製の部材を引き出していた。引き出した後で固定の為に使われていた木枠を外して、何かを抜いてから再度筒に詰め直していた。木箱の中に6個の筒が再び戻された。

 やっと準備が出来たのは5分ほど経った頃だった。

 5分も準備に掛かるとすれば、戦場では、あっという間に蹂躙されるとしかガウ三曹には思えなかった。


「1班、試射、用意」


 橋本一士が短く命令を下すと、1人が脚部を抑えるに様にかぶさり、1人が手にした丸みを帯びた部材を確認した。


「1班、撃て」


 部材を手していた隊員が筒の中に落とした。ポンッという間の抜けた音と微かな金属音がして、筒から煙と共に何かが飛び出て行くのが微かに見えた。

 全員の視線が旗の方を向く。

 結構な時間が過ぎた様に感じた途端、旗から十数㍍離れた場所で爆発が起こった。

 その影響で、旗が倒れたが、先程橋本一士と話しをしていた2人の隊員が何かを板に書きとめながら数字を報告した。

 橋本一士は頷くと発射し終った班に数字を告げた後、2つ目の班に命令を下した。


「2班、試射、用意・・・ 撃て」


 淡々と橋本一士が命令を下し、同じ様なやり取りが続いて、3つ目の班が発射し終った時にチラッと小隊長の方を見た。小隊長は視線に気付くと、頷いた。


「全班、効力射、5発、用意・・・ 撃て」


 ガウ三曹は、その威力の凄まじさに先ほど抱いた感想を撤回した。

 旗が立っていた辺りは荒れ果てていた。

 あの中に居たいとはとても思えない。


「よし、移動する。各自準備掛かれ」


 あくまでも冷静な声の橋本一士が命令を下すと、全員が片付けに入った。

 準備が終わるまでに掛かった時間は1分ほどだった。


「よし、ご苦労、状況終了」


 そう命令してから、満足そうな表情を浮かべた富澤三尉がガウに視線を送りながら訊いて来た。


「どうだ、ガウ三曹? 頼もしいだろう?」

「はい、予想もしていなかった火力です。正直、塹壕に篭っていても狙われたくないですね」

「まあ、今回は準備に念を入れたが、いざとなれば適当に撃った後で修正する事も出来る。しかも台座無しで手で持って撃つ事も出来るから、状況に合わせた支援が得られる事になる。橋本一士、スモークも持って来ているか?」

「6箱持って来ています」

「よし。俺が思っていたよりも部隊の完成度は高いと思うぞ、橋本一士。頼りにさせて貰う」

「はい、有り難う御座います。ご期待に沿える様に努力します」


 富澤三尉は若干ショックを受けている気配がする部下の方に向くと声を張り上げた。


「いいか、迫撃砲班は強力な火力を持つが、敵の接近を許せば、戦力として成り立たん。お前達が自分達の役割を果たせば、この上も無い味方となる。お互いに助け合ってこその戦力強化だ。分かったな?」


 返事は若干の興奮を滲ませていた。


 第40普通科連隊第3中隊第3小銃小隊の参戦準備は佳境を迎える事になる。

 

お読み頂き誠に有難う御座います。



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