第115話 新狭山市編3-03 「祝日『慰霊の日』」
あけましておめでとうございます m(_ _)m
20160101公開
20160104一部修正済み
20160106サブタイトル修正
14-03 『慰霊の日』 新星暦元年10月23日(水)午前
砦の広場は厳粛な雰囲気に包まれていた。
1年前の惨劇で亡くなった全ての者の慰霊の式典が行われる為だった。
「全ての犠牲者の冥福を祈り・・・ 黙祷」
最終的に日本で亡くなった犠牲者の正確な数は分からない。
だが、この惑星に来てから亡くなった犠牲者の数は分かっている。
自衛官・・・ 45名
米海兵隊・・・ 3名
市民・・・ 224名
『始まりの日』によって救助されながらも、この1年間で急病により死亡した市民が4名。自殺した市民は2名だった。
「黙祷を終わります。楽にして頂いて結構です」
新狭山市の人口は現在1140名になっていた。
移民して来たラミス王国の少女100名に加え、新狭山市移行後に新たに受け入れた奴隷階級出身者の67名が加わった為だ。
彼らは最初から労働者としてやって来ていた。平均年齢は18歳と全員が若い。
「それでは引き続きまして、金澤市長より挨拶を賜ります」
67名全員が以前は小倉キャンプと呼ばれていた、新狭山池北方に在る鉄鉱石の採掘&製鉄施設と第40普通科連隊2個小隊が常駐する自衛隊の駐屯地が一つになった新小倉製鉄所に送られた。
彼らに与えられた仕事は日本語の勉強の傍らで周囲の森を伐採する仕事だった。
「只今ご紹介に与りました金澤です。あの惨劇から1年。犠牲を強いられましたが、我々はこの星で着実に足場を固めて来ました。そしてラミス王国との同盟成立と交流により、物資も揃って来ました」
新小倉製鉄所周辺の伐採に参加するのは、男性32名だった。
残りの35名は女性で、新小倉製鉄所内の軽作業を一手に担っている。
「今日は亡くなられた皆様の慰霊と共に、生き残った我々の慰労の日としてゆっくりと過ごしましょう」
式典会場では賞味期限を迎える戦闘糧食Ⅱ型が振る舞われていた。
「ガウ、そろそろ休憩にしよう」
「ハイ、ワカリマシタ」
モジス・ガウは土中二曹から声を掛けられて、腰を伸ばした。
昼から始めた伐採作業だが、これまでの作業でそれなりの面積の木を斬り倒していた。
それにしても、『新現部族』の移民募集に応募して良かったと思う。
彼は代々の奴隷階級だったが、こちらでは衣食住全ての面倒を見て貰っていた。
しかも午前中は勉強もさせてくれる。
こんな扱いはラミシィスでは有り得なかった。
「思ったよりも伐採出来たな」
「ハイ」
斬ったばかりの切株に腰掛けながら、土中二曹は自分が飲んだばかりの水筒を渡してくれた。
遠慮せずに口を付けて、ゴクゴクと喉を鳴らしながら水を飲む。
『新現部族』は『エイセイ』にことのほか気を使うので、この水筒の水もそのまま飲んでも病気にならない。濁った井戸水を飲めるようにする手間が掛かっていたラミシィスとは雲泥の差だった。
それに、何と言ってもラミシィスと違って『新現部族』はガウ達を奴隷として扱わない。
「そういえば、ガウと仲がいい娘の名前は何だっけ?」
「チャク、デス」
「働き者のガウの為に、これをやる。プレゼントしろよ」
そう言って土中二曹が足元に置いた『ハイノウ』から紙で出来た包みを出した。
「昔の知り合いに頼んで、手に入れたお菓子だ。俺もちょっと食べたけど、結構いけるぞ」
「イイノデスカ?」
「良いって。これもガウが頑張っているご褒美ってやつさ」
そう・・・
『新現部族』の人達はガウ達を奴隷として見ずに、『ナカマ』として見てくれる。
「アリガトウゴザイマス、ツチナカニソウ」
「上手くいけばいいな」
そう言って、土中二曹は笑顔を見せた。
モジス・ガウは幸せという言葉を実感した・・・・・
如何でしたでしょうか?
68,078 16,033