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第114話 新狭山市編3-02 「中バリスタ大隊」

2015125公開

14-02 『中バリスタ大隊』 新星暦元年10月8日(火)午後



「第2と第3ショウタイ、第1剣兵ハンは1グマ(約50㍍)前進用意! 第1と第4ショウタイは援護射撃! 第2剣兵ハンは周辺警戒! よし、援護射撃開始! 行け!」


 中バリスタ中隊隊長の命令によって、4基の中バリスタが前進して行く。その前方を、大盾を6グマ(約300㍍)先の敵陣地に見立てた旗の方向にかざした剣兵10名が先導している。

 残った6基の中バリスタが一斉に矢を放ち始めた。

 そして、1小時刻時(約1分)後に命令された位置に辿り着いてすぐに射撃を開始した4基の中バリスタの援護の下、6基の中バリスタが前進を開始した。

 その中バリスタ中隊の左右でも同じ様に前進を始める中バリスタ中隊が居た。


 その様子を木で組まれた櫓の上で見ていた少年が、傍らに居る自衛官に話し掛けた。

 アラフィス・ラキビィス・ラミシィス第5王子だった。


『如何ですか? 自衛隊から見た感想は?』

「かなり練度が上がった様です。連携も取れていますし、動きも格段に良くなっています。あと半年も訓練したら十分に実戦をこなせるでしょう」


 会話をしている間にも、5個の中バリスタ中隊は旗に近付いていた。

 ほぼ150㍍まで近付いた合計52基の中バリスタは本格的な制圧射撃に切り替えた。

 中バリスタの全力時の発射間隔は5秒くらいの為に1分間に12発の矢を放てる。1個大隊52基の中バリスタならば624発にもなる。

 その火力を実現可能にしたのは銃器メーカーからやって来ていた2人の技術者だった。

 彼らは現代の小銃を知り尽くしていた為に複雑な機構を鉄の部品で構成して、ローマ時代から存在していたバリスタをかなりの威力を保ったままで連射可能な様に改良していた。


 訓練が終了した時には、旗の周りには無数の矢が突き刺さっていた。


「殿下、本日はお招き有難うございました。これで肩の荷が下りた気分です」


 櫓から降りながら自衛官が表情を緩めながら発言した。


『と言うと?』

「我々の武装は確かに強力ですが、完全ではありません。補充が有りませんので。ですが、バリスタという兵器はこちらの地で生産可能です。矢も量産可能なので、時間と資材さえ掛ければどんどんと備蓄が増えます。現在試作段階のバリスタが完成すれば、更に機動力が上がる筈です。残りの弾薬を気にせずに使える火力が有るというだけで、我々には心強いのですよ」

『なるほど』


 事実、自衛隊が装備している89式小銃の弾薬は日々減りつつあった。

 イノシシやシカなどの動物が新狭山市の畑を荒らす為に駆除をしなければならないのだ。

 もちろん、動物除けの柵を設置する計画は存在していたが、限られたリソースを考えた時に広大な面積を囲む柵が完成するまでには時間が掛かる。このラミス王国の砦と同時進行で建設が進められている新小倉製鉄所の要塞化が済むまでは現状のままだろう。


『兄もその新型バリスタには興味を示していました。多分、王国も採用する筈です』

「自分もその話は聞いています。生産が始まればそちらにも渡す筈ですが、数は少ないでしょうね」

『やはり、製鉄所に優先配備するのですか?』

「いえ、単純に技術的な問題で生産数自体が少なくなる様です」


 使われた矢を回収する作業を始めた中バリスタ大隊に労いの言葉を掛けた後、自衛隊の視察団一行は自分達の砦に帰って行った。



『さあて、私はこの後、何か予定が有るの、アル君?』

 

 1人だけ残った守春香がアラフィスに話し掛けた。


『ハルカ様、もう分かっているでしょう? この列を見れば』


 そう言ってアラフィスが視線を送った先には、砦に居た兵士全てとも思える集団が期待に満ちた目で春香を見ていた。

 全員が剣と盾を装備している。


『うーん、さすがに1人ずつ相手をしていると、時間が掛かり過ぎるわね。3人ずつでいいかな?』


 親友の宮野留美や友人の佐藤静子三佐から『リア充バクハツシロ』とよく言われる彼女であったが、実際の所は碌にアラフィス王子とデートをした事が無かった。

 なにせ2人とも忙しかったのだ。

 アラフィスは増強された部隊の把握と訓練と更には砦の建設を同時進行でこなさねばならなかったし、春香は春香で、通訳と調味料の開発生産、更にはお酒の開発に取り掛かっていたからだ。

 なんとかソースの方は先月に行われた駐屯地祭に間に合わす事ができたが、お酒の方が難航していた。

 自分自身で味見が出来ない為に、開発を手伝ってくれている鈴木珠子さんや、静子さんと部下の皆さんに試飲をして貰っているが、まだ合格点を出して貰えていなかった。

 もちろんラミス王国製のお酒も輸入されていたが、こちらはホップを使わない日持ちのしないエールの一種で、ラミス王国内でホップを探して貰って、やっと手に入れたのが先月の事だった。

 ホップと大麦の配合や製法の試行錯誤も大詰めを迎えつつあるので、多分、27日の『始まりの日』には限定的な量ながら披露出来るだろう。



 アラフィスの18歳の誕生日まで結婚が待たされた春香よりも先に、留美と佐藤静子三佐が先に結婚した事は皮肉以外でも無かった。

 もっとも、2人から結婚する事を聞かされた春香の反応は、悩んだ末に告白した2人の予想を超えていた。

 心からの笑顔で『リア充バクハツシロ』と言われたのだ。

 2人はしばらく『リア充』とは何なのだろうと悩む事になる・・・

如何でしたでしょうか?



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