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第111話 新狭山市編2-04 「ラミス教」

20151210公開



◆うっかりと根本的な間違いをしていたので修正しています。

13-4 『ラミス教』 新星暦元年4月9日(日)夜



「プリちゃん、そろそろ行くけど準備は出来たかな?」


 守春香は同居人のプリ・ラキビィスに声を掛けた。


「はい、ハルカ様」


 プリはやや緊張した顔をしていた。


「大丈夫、そんなに緊張しなくてもいいわよ。ただ夕食を食べて、お風呂に入って、お菓子を食べながら喋るだけの集まりだから」


 プリにとって今夜は春香のクラスメート達との初めての会食だった。

 彼女は春香の部屋に同居していた。

 それは『新現部族ユニヴァル』の土地に来るまでに春香にお願いして決まっていた事だったが、そのせいで春香の交友関係に僅かながらも影響を与えている事に最近気付いたのだ。彼女にしては気付くのが有り得ない程に遅いのだが、春香が巧妙に隠していた事も一因だった。


「じゃあ、行きますか」


 待ち合わせをしている食堂の前では相手が全員揃っていた。

 春香と同じ年頃の男女6人と母娘らしい2人、更には意外な事にムビラ“教伝師”も居た。

 『教伝師』という役職はラミス教会内には無かったが、ラミシィナの教義を現在まで守って来た使徒の子孫に敬意を表す意味を含めて新設されていた。

 ちなみに本人とラミス王国王族、並びにラミス教会内の一部の者しか知らない事だったが、春香には「神使」という位が贈られていた。これは名目上はラミス教会トップの教王よりも上に置かれると言う破格の待遇だった。


「あ、言い忘れていたけど、ムビラ君はプリちゃんの通訳で呼んだの」


 そう言って、春香がみんなに向かって手を振った。

 その春香を見た時の9人の反応は見物だった。

 王家の娘で無ければ分からないだろうが、凄い程の“赤い糸”が春香に絡まった。

 常人であればこれだけの思いを向けられれば精神的な負担を感じる筈だ。

 でも、春香は気にする事無く挨拶を交わしていた。


「改めて紹介するね。プリちゃんことプリ・ラキビィスちゃん。まあ、どんな立場かはみんなも知ってるよね?」

「ラミスおうこくのおひめさまでしょ、はるかねえさま?」

「そう、よく知っていたわね、偉い! じゃあ、美羽ちゃん、挨拶してみようか?」

「はじめまして、おひめさま。わたしはすずきみうです」


 そう言って幼女がラミス王国式の拝礼をした。ムビラがすかさず翻訳した。


「初めまして、みう様。これからよろしくお願い致します」


 プリはまだ日本語が不自由な為にラミスの言葉で返した。

 ムビラが彼女の言葉を美羽に伝えると幼女の顔がパアっと輝いた。

 

『え?』


 その瞬間、予想していなかった事が起こった。

 幼女からプリも含めて周囲に向かって大量の“赤い糸”が放射されたのだ。すぐにその“赤い糸”は消えたが、この幼女がいつかプリにも関わる様な大きな存在になる事の予兆と思われた。

 その後、全員と挨拶を交わしたが、幼女程の現象は現れなかった。



「そういえば、ラミス教ってどんな宗教なの? 市役所に教会みたいな施設の建造申請が来てるんだけど?」


 夕食を済ませた後、春香のクラスメートの女性陣が使っている部屋に移ってしばらくすると、吉井真里菜がムビラに訊いていた。

 真里菜は市役所でのお手伝いを割り当てられていたので、その話を知っているのだろう。

 ムビラが春香の顔を見た。役職は別としてラミス教会の位で言えば、最上位に居る春香に発言を譲ったのだろう。


「そうだねえ、簡単に言うと星を神様に見立てた宗教っていう感じかな? 地動説を宗教化した感じ?」


 現代人の反応は『?』だった。


「例えば、私たちの太陽系を例にとれば、太陽が全ての始まりで、一番重要な神様になるの。これを《主神》、呼び方はラミと言って、偶に母神とも言うわ。水星とかの惑星も神様で、地球に当たるこの惑星を《地神》、リンと呼ぶの。月が《妹神》で、呼び名はルミ。あ、今気付いたけど、留美って妹神ルミと一緒の名ね」

「うーん、微妙にプレッシャーを感じるのは何故?」


 宮野留美が複雑な顔をした。


「で、私たちが居る第4惑星《地神リン》より内側に在る惑星を兄神と言って、レヴァ、ロカ、タリという名で呼ばれているわ。第5惑星以降は弟神と呼ばれているの。まあ地球にも太陽を神様と考えたり崇めたりする信仰は有るけど、ラミス教の凄い所は科学としての地動説を基にした宗教になったところ。科学の発展と知識の探求こそが教義の根っこにあるの」


 春香の説明に対する反応は留美からだった。


「今一凄さが分からないんだけど?」


 春香は特に気分を害した様には見えなかった。

 

「地球で地動説が確立したのはニュートンが西暦1665年に唱えた万有引力が切っ掛けよ。ラミシィナ、ラミス王国以前に在ったラミス神国の根本とも言えるラミス教の原典、『再誕期の書』が書かれたのは少なくとも弥生時代後期以前、西暦の4世紀よりもかなり前の事。多分キリスト教よりも古いの。地球が中心の宗教と近代と同じ科学レベルで成り立つ宗教。少なくとも太陽系のスケール観で紡がれる宗教は年代も考えれば凄いとしか言えないわ。ましてや教義が科学の振興なんて有り得ないと言える」

「守さんはどうしてそんなに詳しいの?」


 質問したのは高木良雄だった。


「だって、私の先祖って、ラミス神国の人間だから。元を糺せば私はこの惑星で生まれた異星人の子孫だからね」


 春香の告白に対する言葉は無かった。


お読み頂き誠に有難う御座います。


修正点

誤:天動説

正:地動説


64,129 15,241

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