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第108話 新狭山市編2-01 「試射」

20151202公開

13-1 『試射』 新星暦元年4月7日(金)昼


 巨人の砦を奪った現代人は1.5㌧もの鉄の原料を得ていた。

 意外かも知れないが、その大部分を占めたのが巨人の剣だった。

 戦死した巨人が実際に使っていた剣が239本。砦内の武器庫に残されていた剣が56本。折れた為に廃棄されていた剣が41本で合計336本もの巨人の剣が手に入った。その他には加工前の銑鉄も100㌔ほど残されていた。

 それらの一部を溶かして最初に試作されたのがシャベルとくわかまであった。

 勿論、陸上自衛隊もエンピ(シャベルの事。国産ならではの性能の良さで普通科隊員の信頼も篤い)を持っているが、個人装備品の必需品だった為に手放せなかったのだ。

 元々、グザリガにはこの様な鉄製の農具が無かった為に、地球では当然の様に使われていたシャベルと鍬と鎌の製造は初めてであり、何度か試作しては失敗した(耐久性以前の問題で、曲がりと刃こぼれが主な原因だった)。

 実用上問題が無いレベルの製品を作れるようになった後は、可能な限りのペースで製造に入っていた。

 急いだ理由は畑の収穫量の増加を考えていたからだった。

 大麦(突然変異の春蒔種)の収穫後の畑はラミス王国から購入した作物を数種類植えていたが、最終的には二毛作から三毛作を目指していた。

 その際の作業の軽減と収穫量の増加を考えれば、シャベルと鍬と鎌は必須と言えた。


 

 その日、砦から少し離れた場所に、自衛隊の司令部と金澤達也市長及び市役所の園田剛士係長の姿が在った。

 今日は前から試作していたある兵器の試射が行われる予定だった。


「大変お待たせしました。準備も整いましたので、早速試射に移りたいと思います」

「よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げたのは、89式小銃を製造しているメーカーの技術者2名だった。

 本来はこの惑星に来る必要のない人材だったが、橋頭堡戦の初期に複数の89式小銃がジャミングを起こした為に、自らの意志で危険を承知で無理を通して(社内にも防衛省にも)やって来ていた。

 彼らが弄っていた機械は大部分が木製で、ところどころに鉄製の部品が使われていた。

 外観は、長さ1㍍くらいの木製の角材が台座に載せられており、その角材の真ん中より少し先寄りに箱の様な木枠が取り付けられている。そしてその木枠の横からは腕の様な角材が左右に出ていた。

 知っている人間には馴染の有るフォルムだった。


「はい、こちらこそよろしくお願い致します。でも、意外とシンプルで小さいですね。攻城戦にも使われていたと聞いていたので、もっと大きいものかと思っていましたが」


 そう言ったのは金澤市長だった。


「まあ、一番最初に造ったのは50㌢くらいのオモチャみたいな物でしたから、これでも大きくなった方ですよ。実際に量産に移る際にはもう少し無駄を無くして分解して持ち運びが楽になるようにしたいですね。組立後も車輪を組み合わせて人力で多少の距離なら移動出来る様にしたいと思っています。あと、もう一回り大きなタイプも作っておいた方が良いかも知れません。盾も装備した拠点防衛用に使えるタイプも必要と思いますので」


 市長に答えたのは技術者の上司の方だった。

 彼は職業柄、古今東西の兵器に関する知識が豊富で、今回試作した『バリスタ』も地球に居た頃に構造を知る為に造った模型が原型となっていた。


「なるほど。いっその事リアカーに積んで移動するタイプも有った方が良いかも知れませんね」

「一応は考えたのですが、リアカーの数が少ないので諦めました」

「やはり素人考えではダメですね」

「いえ、すぐにそのアイデアが出ると言うのは凄い事ですよ。機動力の有用性を理解しているのですから。今回の試作モデルには盛り込みませんでしたが連射機能もある程度の目途が付いています。最終的にはさらに小型で機動力重視のタイプも揃えれば、拠点防御、野戦の攻守で使えるシリーズになると思います。では、そろそろ試射に移ります」


 鉄製のやじりを用いた矢は、100㍍先に設置した巨人たちの木製の鎧は勿論、鉄製の鎧も貫いた。

 結局、150㍍まで標的を遠ざけて試射している途中で縄が切れたので試射は終了したが、大きな成果だった。例え17発目で縄が切れたとしても、純粋にこの地の材料だけで作れる兵器を製造出来ると言う利点は大きかった。

 そして、このバリスタは完成後はラミス王国に輸出される予定だった。

 外貨を稼ぐ為には、なりふり構っている余裕は新狭山市には無かった。

 最終的にバリスタシリーズは、連射機能を組み込んだ上で制式採用名「0式重バ型弓砲」「0式中バ型弓砲」「1式軽バ型弓砲」として採用になる。

 特に「1式軽バ型弓砲(兵たちは軽バリスタと呼ぶことになる)」はラミス王国が1000挺を超える注文出すヒット作になった。

 「3式迫撃砲」や「4式小銃」が開発された後も(輸出自体は新星暦6年以降になる)、ラミス王国では現役で使われる程だった。 



 

お読み頂き誠に有難う御座います。


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