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第103話 新狭山市編1-09 「新たな影」

第103話を公開します。



20151017公開

201510181部修正

       挿絵(By みてみん)



あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって5ヶ月が過ぎた。

 取り残された現代人は、異世界での生き残りの為に自らの意志で変革しようとしていた。

 そして、新狭山市発足の日に、新たな事態が起こる。

 



12-09 『新たな影』 新星暦元年4月1日(土)朝



「真里菜、どうやら『お楽しみ会』はここまでの様みたい」

「え、なに?」

「まあ、大丈夫だと思うけど、身の回りの荷物だけはまとめておいて。みんなを頼むね」


 守春香はルクフィス・ラキビィス・ラミシィス第1王子達にも2言3言ほど何かを言い、吉井真里菜を残して市役所棟の方に向かった。

 呆然と見送った真里菜の目に、佐々優梨子を連れた守貴志の姿が入った。

 いつもと変わらない貴志と違って、優梨子の姿からは緊張がうかがえた。


「まさか・・・・・」


 真里菜はその次に来る言葉を飲み込んだ。

 口にすれば、それが現実になるとばかりに・・・・・



 市役所の半分を占める自衛隊司令部は慌ただしい雰囲気に包まれていた。

 

「偵察した班によると500は下らんそうです。身に着けていた荷物が少ない事から前衛部隊だろうという推測も送って来たので、まず間違いはないでしょう」


 そう切り出したのは、陸自特殊作戦群の第2科長だった。

 

「それで、こちら側の戦力は? 現地の部隊だけで足りるのかな?」


 説明を受けて、発言したのは今日から正式に市長となった金澤達也だった。

 元々はそれほど目立つような経歴を持たない、地元の名士の親の地盤を引き継いだだけの2世議員だったが、この地に来てからの過酷な経験をしたせいで政治家としては一皮むけていた。

 勿論、守貴志の影響下には有る事は否定出来ないが、「アレはちょっと異常なので仕方ない」と本人も自分の役割を自覚している辺りは大物だった。

 現に、今した質問も平和ボケした地方の政治家の発言では無かった。


「無理ですね。現地の部隊は1個小隊26人ですが、撤退の準備に入らせています」


 答えたのは特戦群群長兼派遣部隊司令の清水孝義だった。


「仕方ないか。で、この後はどうしますか?」


「特戦群1個小隊とアメリカの海兵隊にこの地点まで進出させ、待ち伏せの命令を出します。その地点まで現地の部隊を下げて、計3個小隊で敵の進行を遅らせます」


 第2科長はそう言って、テーブルの上の地図の1点を指差した。

 そこは砦から4㎞ほど先の地点だった。


「近いな・・・」


 4㎞先まで巨人の侵攻を許せば、地球と違って人工的な音が無いこちらでは、下手をすれば市民の耳にも銃声が聞こえるかもしれない。


「3個小隊で時間を稼いでいる間に、各監視トーチカの部隊を引き抜いて、状況次第ですが横撃か側背からの攻撃を仕掛けます」


 ちょうどその時、守貴志と春香、それに佐々優梨子の3人が到着した。

 日本では考えられないが、民間人にしか過ぎない彼らはこの地では大きな自由度を得ていた。

 蛇足だが、この地の自衛隊内には『アテナ派』と呼ばれる守春香を支持する一派と、『ニケ派』と呼ばれる佐々優梨子を支持する一派が存在する。


「状況はどうですか?」


 守貴志がごく自然に言葉を発した。


「巨人の数は確認されただけで500以上。多分、1500くらいは来ている筈だ。現地の部隊と砦から秋山君の部隊と海兵隊を出して、ここで待ち伏せて時間を稼ぐ。もうトーチカからは戦力の引き抜きを始めているから、5時間後には7個小隊をまとめて投入出来る」


 地図を見ていた貴志が妹の方を向いた。


「1人で5時間稼げるか?」


 春香の答えは即答だった。


「出来るよ。要は足止めすればいいんでしょ?」

「清水司令、春香が時間を稼ぎますので、計画の練り直しは可能でしょうか?」

「いや、さすがに無理が有るだろう、守君」


 本来は素人が軍事行動に口を挟む事は許されないし、許すべきでは無い。

 だが、この3人は砦の奪取を図った『始まりの日』と、巨人の増援部隊殲滅を目的とした『終わりの日』両作戦の立役者だった。無視するには実績が有り過ぎた。


「最悪、春香には例の攻撃を許可します」


 その言葉は、魔法の言葉だった。

 現在、この地で最大の火力を誇るのは海兵隊が持ち込んでいたSMAW ロケットランチャー(Shoulder-launched Multipurpose Assault Weapon)だったが、弾数はそれほどでは無い。

 だが、兵器ではないにも拘らず、それに次ぐ威力を持つ攻撃方法が有った。

 春香と優梨子だけが行使可能な、パチンコ玉を超音速で打ち出す攻撃だった。

 その威力はJAXAに在る同様の施設の10倍以上を超える。実戦でも『始まりの日』作戦の時に使用され、現在は修復されたこの建物の中に居た巨人司令部の殲滅に使われた程だった。

 更に言うならば、その攻撃の凶悪さは弾体の威力だけでは無かった。

 最大で秒速10㎞まで加速可能な性能は、射出した瞬間に衝撃波を発生させる。

 その衝撃波に見舞われた敵兵が無事に済む筈が無かった。

 

「分かった。敵の足止めは春香君に頼もう」


 清水司令が決断を下した。


「我儘を言ってすみません。でも1つ気になる点が有ります」

「気になる点?」

「ええ。この巨人がグザリガでは無い可能性の方が高いって点です」

「どういう事だね?」

「少なくとも昨日までの段階ではグザリガに動きは有りませんでした。部隊の移動も察知していません。となると、この部隊は何処から来たのか? という点が残ります」


 新狭山市だけが持っている能力に、春香と優梨子だけが可能な高空からの偵察と言うものが有った。

 この能力のおかげで、この地の情報の量と質は他の勢力に比べて圧倒的に新狭山市が優越している。

 主にグザリガの情報を収集しているが、そのグザリガの動向には今回の侵攻を示唆するものは無かった。


「もしかすると、ダグリガの侵攻かも知れません」


 その言葉は、新たな局面を迎えているという事実を示唆していた。

如何でしたでしょうか?


 半分勢いで書いたプロローグと第101話との整合に苦戦した事は内緒です。

 いかにmrtkがプロットをしっかりと考えずに書いているか? が分かってしまいます(^^;)

 おかげで後からあちこちに修正する羽目になっています(^^;)


 次回は春香さん無双回です(^^)

 まあ、「予定は未定」なんですが(^^;)


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