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第96話 新狭山市編1-02 「第一次移民団到着」

第96話を公開します。



20150924公開

       挿絵(By みてみん)



あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって5ヶ月が経とうとしていた。

 取り残された現代人は、異世界での生き残りの為の足場作りを進めていた。

 そして遂に、その中の最大のピース、移民団が到着する。



12-02 『第一次移民団到着』 西暦2006年3月15日(水)昼


 宮野留美は新たにやって来るラミス王国の移民団が姿を現すのを今か今かと待っていた。

 広場に陣取る彼女の周囲にはクラスメートや鈴木母娘が居た。

 美羽ちゃんは高木良雄が肩車している。彼女は近い年頃の子供が使徒の子供たちしか居ないという事も有り一緒に遊ぶことが多く、結構こちらの言葉を覚えているそうだ。

 今回の移民団は通常では有り得なかった。

 何故ならば、やっと生活基盤が出来上がりつつある砦にとって、120名もの子供を受け入れる余裕は無いからだ。

 それに、最初にこの話を聞いた時に、男女比が歪過ぎて、「無いわー」というセリフが漏れてしまったほどだった。

 だが、そんな留美の思いなど、彼女の親友にして砦の最重要人物の1人である守春香があっさり吹き飛ばした。

 彼女は外交団の成果が市民に公開された夜に、ラミス王国の話を聞きたがったクラスメートたちに拉致監禁されていた。

 とは言っても、本人自らお土産のラミス王国製のお菓子を持って彼女らの営舎に出頭したという方が正しいが・・・


『あれ、留美にも前に言ったと思うけど? 『フランクリンとスーレの50/500の経験則』の事?』

『うん、聞いた覚えは有るけど、いきなり100人もの女の子を来させるなんて、なんか人身売買みたいで違和感が有るのよ』

『甘い! レトルトカレーの甘口並みに甘い!』

『例えが分からないよ、ハル・・・』

『いい? 彼女たちはこの砦を乗っ取る位の意気込みで来るのよ? なんせ、王様は自分の息子と娘まで使うし、「お主たちの国を乗っ取る気概の有る女子おなごを送り込んでやるとするか」って言い切ったのよ? 自分達が売られたなんて誰も思っていないし、むしろ自分を売り込みに来ていると思った方がいいよ』

『なにそれ・・・ ラミス王国の女の子って、もしかして逞しいの?』

『感覚的に一番近いのは、江戸時代の武家の娘って感じかな? 自分自身で「家」を作るチャンスだもんね。しかも相手は自分で選べるんだもん。そりゃ張り切るよ。だから、留美、ボヤボヤしてたら良い男なんて回って来ないかも知んないよ』

『いやいや、ハルもヤバいよね? だって、あなた、私以上に浮いた話が無いし』

『私、婚約したよ』


 その一言が巻き起こしたのは、全員による


『ナンダッテエエエエエエエエェェェェェ!?!?!?』


 という驚愕だった。


『だ、誰よ? いつの間にそんな話が進んだのよ?』

『アラフィス第5王子よ。知っているでしょ?』


『ナンダッテエエエエエエエエェェェェェ!?!?!?』


 もう一度、叫び声が巻き起こった。


『もう、大袈裟だなあ。そんなに変?』

『いや、変とか変じゃないとか以前に、突然過ぎて理解が追い付かないというか・・・』

『そう? 私、ラミス王国に行く前から想定してたよ? 最悪、嫁に来いとか有り得ると考えていたけど、アルが婿入りして来るって条件で落ち着いたからホッとしてるけど?』


(ナンテコッタ・・・・ 王様もそうだが、このハル(娘)も何かがおかしい・・・)


 女性陣は心の中で、首を振り振り溜息を吐いた。


『あ、今、かなり失礼な事を思われた気がする』

『はるかおねえさま、けっこんするの?』

『うん、そうだよ、美羽ちゃん』

『いいなあぁ』

『あれ、美羽ちゃん、好きな子が居るの?』

『ないしょ』


 幼稚園児の美羽と結婚から一番縁遠いと目されていた春香のほのぼのとした会話を、もし佐藤静子医官が見たら、「バクハツシロ」と突っ込んでいたかも知れなかった。

 だが、この場に居る美羽以外の女性陣はそこまでは自棄にならなかった。

 『ハゼロ!』と思っただけだった。



 機動隊に先導されて、遂にラミス王国からの移民団が門から姿を現した。

 先頭は相変わらず装飾が凝っている鎧を着たアラフィス王子だった。

 その隣に当然の様に守春香が居た。彼女はアラフィス王子とは逆の側に居る人物と話していた。

 笑顔で春香と話しているその人物は、まさしく『お人形の様な』という形容がふさわしい女の子だった。

 その女の子を見た市民から『ほおおおぉぉぉ』という溜息の様な声が上がった。


「なに、あれ? 可愛過ぎて嫉妬も出来ないわね・・・」


 吉井真里菜が思わず呟いていた。


「あの子が春香が言っていた王女ね。本気でこの砦を乗っ取られるかも・・・」


 その真里菜の言葉を聞きながら、宮野留美は自分自身では気が付かないほどの深い領域で密やかに決心していた。

 ハルに負けない様に頑張るぞ、と・・・・・・・


 

 もっとも、その〝頑張る”対象は、幼稚園児を肩車したまま王女に目が釘付けになっていた・・・・・

 

 

 


如何でしたでしょうか?


 さまざまな桃色幻想が交錯した回でした(^^;)

 

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