第95話 新狭山市編1-01 「プリ・ラキビィス」
第95話を公開します。
20150921公開
あらすじ
巨人から奪った砦での生活が始まって5ヶ月が経とうとしていた。
取り残された現代人は、異世界での生き残りの為の足場作りを進めていた。
そして遂に、その中の最大のピースが嵌まろうとしていた。
12-01 『プリ・ラキビィス』 西暦2006年3月15日(水)昼
『主神に導かれて認められし一族による信徒たち』を纏めるデュラフィス・ラキビィス・ラミシィス王の三女プリ・ラキビィスは、10巡日ぶりに会ったハルカ・モリの姿が目に入ると、目の前がパアっと明るくなった様に感じた。
彼女に出会う前は、世の中に彼女の様な人間が存在する事を想像も出来なかった。
ラミシィスの部族長である父親も大きな責任を背負っているが、ハルカ・モリは次元が違っていた。父が背負っているのは所詮は人の世の責任だ。それに対し、ハルカ・モリが背負っているのは運命と言っていい。
彼女を見る度に、『主神の加護を強く受けし一族』と呼ばれる人々の凄さを思い知る気分だった。
もしも、『主神の加護を強く受けし一族』が『遅れてきた者たち』に滅ぼされなければ、この地はもっと素晴らしい世界になっていただろう・・・
自然とそう思えるのは、プリ・ラキビィスが持つ能力ゆえなのだろうが・・・
「プリ-チャン、大丈夫? 疲れていない?」
「はい、大丈夫です。お心遣い、有り難う御座います、ハルカ様」
私はハルカ様に「プリ-チャン」と呼ばれている。チャンというのは、目下の子や親しい人に対して用いる敬称らしい。
最初は戸惑ったが、慣れると意外と嬉しく思えて来るから不思議だ。
1回だけ家族の昼食会で会った女性のシズコ・サトウ治士のことをハルカ様はサン付けで呼んでいたが、そちらは目上や距離を置いている人に使う敬称だそうだ。その割には年齢を超えて親しそうだったが、まだまだ『新現部族』の慣習に詳しくないので、更なる勉強をしないといけない・・・
ハルカ様ともう一人だけ居る通訳のムビラ-サン(これで合っているわよね?)が挨拶回りで離れた時に視線を感じたので目をやると、『新現部族』の兵士の1人と目が合った。
何気なく目礼したけど、顔を赤らめられてしまった。
何故?
むしろ、こっちが顔を赤くしたいくらいなんですけど・・・
『新現部族』の殿方は、『主神に導かれて認められし一族による信徒たち』の殿方と違って、全員が赤い。
お姉さまたちも、こんな事は初めてだと言っていた。
考えられる事は一つしか無かった。
『主神の恩寵』を持っていないにも係わらず、『新現部族』の殿方の誰と結ばれても、生まれて来る子は『主神に導かれて認められし一族による信徒たち』と結ばれるよりも『主神の恩寵』が濃く生まれて来るという結論だった。
この事は誰にも言えない秘密だった。
ハルカ様ならその内に気付くだろう秘密ではあるが、絶対に他人に漏らしてはいけない。
王族に生まれた女性のみに伝わる能力に関わるからだ。
辿り着いた『新現部族』の砦は、『遅れてきた者たち』が建てたという話通りに、外見は無骨な造りだった。
でも、中に入った瞬間に印象が一変した。
緊張感も感じるが、なんというか、温かい感情を感じる・・・
歓迎されている事が素直に伝わって来る・・・
やはり、この砦に来て正解だった・・・・・・
当時のラミス王国の王の三女プリ・ラキビィスは、新狭山市創設当時の歴史を語る上で、欠かせない人物となる・・・
如何でしたでしょうか?
ちょっと短めですが、次話より通常通りの長さとなる予定です。
累計PV51,673アクセス 累計ユニークユーザー数12,542人
P.S. 以前には有ったツイッターの確認機能が無くなった様な気がするのですが・・・
間違って呟いちゃった・・・