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第91話 自由の矛編4-14 「内助の功」

こんにちは mrtkです。


 第91話を公開します。

 


20150902公開

   挿絵(By みてみん)



あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって25日目。

 取り残された現代人は、異世界での生き残りの為にラミス王国への外交団を派遣する。

 王族との交渉で満足すべき成果を得た外交団だったが、最後に守春香が全てを掻っ攫って行った。



11-14 『内助の功』 西暦2005年11月20日(日)朝


 佐藤静子三等陸佐の目覚めはスズメの鳴き声と共に訪れた。

 窓から差し込む光の具合と、なんとなく感じる空気というか雰囲気から、早朝と言っても良さそうな時間に起きた様だった。

 異世界の、更には異人類種の街でスズメの鳴き声で起きる朝・・・

 日常なのか、非日常なのか、なんとも不思議な気がする。


 そう言えば、こちらの世界に来てからカラスの姿をあまり見ていない。偶に遠くを飛んでいる姿を見掛ける程度だった。幕末の江戸には結構居たという話を聞いた覚えが有るので、砦が発達して残飯が増えると頻繁に姿を見る事になるのだろうか?

 残飯を漁るカラスに悩むほど発展出来る可能性が出て来た事に考えが及ぶと、思わず私は今更ながらホッとした。

 

 私たち外交団に宛がわれた部屋は王城の離れに在った。

 部屋の大きさはさほどではないが、何と言ってもベッドが素晴らしい。

 本当に久し振りにフカフカの寝具で寝たせいか、身体の疲れがかなり取れた感じがした。

 まあ、これで枕までフカフカだったら良かったのだが、ラミス王国では枕は堅めが主流の様で、少しだけ物足りない気もした。


「さあて、今日は盛り沢山の予定が入っているから、気合を入れて起きますか」


 朝食の直後から予定が詰まっていた。

 まずは、午前中一杯を使って王都の見学だった。案内役は王都行政長のキラフィス・ラキビィス・ラミシィス第2王子がしてくれるそうだ。

 昼食は王族の屋敷でプライベートなものが予定されている。この時に噂の王の3女を紹介されるらしい。

 昼食後にはルクフィス・ラキビィス・ラミシィス第1王子が司令を務めているラミス王国最大の兵力を持つ第一方面軍の閲兵式に参加する予定だった。

 夕食は明日には王都を発つ私たちの為のパーティが予定されていた。

 うん、まるで国賓扱いだわ、これ・・・・


 

 王都見学は、かなりの収穫を私たちにもたらしてくれた。

 戦時下とは言え、王都内は荒んだ印象は受けなかった。むしろ、明るい雰囲気が漂っていた。

 園田副団長がその事をキラフィス第2王子に質問したが、答えは意外なものだった。

 私たちが原因だった。

 ここ十数年は、前線で一進一退の攻防が繰り返されていたが、どちらも決め手を欠いて、砦を落とす様な戦果を上げる事が無かったらしい。

 それが、新たに現れた新興部族(私たちの事だ)が、グザリガ(私たちで言う“巨人”)が知らぬ間に造っていた砦をあっという間に落としたという話と、その新興部族と良好な交流を持つ事に成功したという話がセットで広まったそうだ。

 うん、まあ、その通りなんだけど、軍医でしかない私には、なんだかスケールが大き過ぎて実感が湧かない。

 そして、私自身の最大の収穫は、「女性にとっての必需品」をかなりの量を確保出来た事だった。

 いや、まあ、私自身の力では無く、ハルちゃんのおかげだけど・・・

 彼女は見学中に見付けた、とある店に立ち寄る事をキラフィス第2王子に頼んだのだけど、理由は店内に入って分かった。その店は、女性用のあらゆる日用品が揃っていたのだ。

 彼女は店内に在る化粧品を除く在庫を根こそぎ買い占めてしまった。もちろん、代金は王家の負担にしてだ。ハルちゃんの図太さには呆れを通り越して尊敬の念さえ抱いてしまった。

 化粧品は彼女の能力で分析の結果、4分の3が現代人の肌に合わないか、有害な重金属が混じっているかで撥ねられた。残った4分の1は乳液などの基礎化粧品だったが、砦の女性陣の現状を考えると喜ばれる事は確実だった。

 今後も定期的に仕入れる事を条件にして、値引き交渉までこなしたのは、さすがに女子高生らしからぬやり手ぶりだったが、あの貴志君の妹だから仕方ない・・・

 ちなみに何故、王家のお金で購入したのか? は、砦に戻ってから判明した。

 持ち帰ったそれらを、ラミス王国から購入したのではなく、王家が女性陣にプレゼントしたのだという体裁にする為に敢えて王家に支払わせたのだ。

 その本当の狙いに気付いた時、思わず浮かんだ言葉が『内助の功』だった。

 やがて婿入りして来るアラフィス第5王子の為に、女性陣に王家に対する好印象を抱かせる下地を作ったのだ。

 バクハツシロ・・・・・

 冗談はさておき、これで砦の女性陣が蒙っていた不自由さは軽くなる筈だ。

 勿論、現代科学を駆使したものでは無いが(土壌改善にも使える程の吸水性を持つ高吸水性ポリマーなんてこの世界では驚異の物質だろう)、砦の現状よりは遥かに文明的な女性用品が供給されるのだ。

 その恩恵は『文明の恩寵』と言い換えても良い位だ(蛇足だが、ラミス王国人が使う「主神の恩寵」の言い換えだ)。

 その他、奴隷制度の実態、各分野における文明の進み具合、ふとした時に現れる階級制度など、ラミス王国に関する知識は一気に膨らんだ。


 王都見学は、本当に多大な成果をもたらしてくれた。


如何でしたでしょうか?


 第66話 自由の矛編2-07「必要なもの」で張った伏線の『学校設立の必要性』と『歪な男女比率』、『女性用品の確保』の回収がほぼ終わりました。

 あと数話で『自由の矛編』が終わる予定ですが、我ながらどこが「自由の矛」なのか? が分かりません(^^;)

 うーん、章の題名を変えるべきなのかなあ(^^?)


現時点累計アクセス 46,676PV  累計ユニーク訪問数 11,5727人

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